7年ぶり開催! 海上自衛隊「観艦式」出席のカナダ艦2隻とそれだけじゃない来日目的
海上自衛隊の創設70周年にあわせ開催される国際観艦式に、カナダ海軍から「バンクーバー」「ウィニペグ」の2隻が出席します。もちろんこれら2隻は、観艦式出席以外にも多くの目的や任務を担ったうえでの来日です。
7年ぶりの観艦式! これを盛り上げる「フリートウィーク」も充実!
海上自衛隊が創設70周年を迎えることにあわせて、2022年11月6日(日)に「令和4年度国際観艦式」が開催されます。
前回(2019年)の観艦式は台風19号接近にともなう影響で中止となったため、今回が無事開催されれば2015(平成27)年以来、実に7年ぶりの観艦式となります。ただし、例年よりも参加艦艇の規模が縮小しており、かつ新型コロナウイルスの感染拡大防止などを考慮して無観客での開催となり、その模様はネット中継を通じて映像配信されます。
またこの観艦式にあわせて、10月29日(土)から11月13日(日)にかけ「フリートウィーク」と題し、海上自衛隊の広報イベントや護衛艦および外国艦艇の一般公開などが各地で催されます。
国際観艦式を前に、呉へ寄港したカナダ海軍フリゲート「バンクーバー」(稲葉義泰撮影)。
観艦式に参加するカナダ海軍艦艇が来日
海上幕僚監部の発表によると、今回の観艦式には12か国から18隻の艦艇が参加予定で、その参加国のひとつであるカナダからは、ハリファックス級フリゲートの「バンクーバー」と「ウィニペグ」が参加します。去る10月21日(金)には、これら2隻が広島県にある海上自衛隊呉基地に寄港し、第4護衛隊群司令の平田利幸海将補が参加する歓迎式典が開かれました。
呉で開かれた歓迎式典。奥に見えるのが「ウィニペグ」(稲葉義泰撮影)。
カナダ海軍の艦艇が海上自衛隊の基地に寄港するのは、2019年に同じくハリファックス級の「オタワ」が寄港して以来3年ぶりで、新型コロナウイルスの感染拡大以降は初めてのことです。また、2020年以降、日本(在日米軍施設)に寄港するカナダ海軍艦艇には、乗員の感染防止対策として寄港地での乗員の下船が認められない、いわゆる「バブル方式」がとられてきましたが、今回はこれが解除されたため、乗員が日本の文化などに親しむ機会を得ることができました。
カナダ海軍艦艇がインド太平洋地域で行う活動とは
2隻のカナダ海軍艦艇の呉基地訪問は親善目的ですが、もちろん、国際観艦式に参加するためだけにはるばる日本へと派遣されたわけではありません。
カナダ海軍フリゲート「バンクーバー」(稲葉義泰撮影)。
両艦は8月から12月にかけて、約4か月間にわたる長期のインド太平洋地域における作戦活動である「オペレーション・プロジェクション」に参加しており、その一環として日本にやってきたのです。「オペレーション・プロジェクション」は、カナダのプレゼンス(存在感)を示すために行われるグローバルな活動で、各地での共同演習や寄港を通じて、各国との連携を強めることを目的としています。
今回は、まず両艦が共にハワイ近海で実施される多国間共同演習「環太平洋合同軍事演習(RIMPAC)」に参加、そののち「バンクーバー」は北東アジアへ展開し、北朝鮮船舶の「瀬取り」(洋上での違法な物資のやり取り)監視を目的とする「オペレーションNEON」に参加しました。こちらでは黄海や日本海、東シナ海で活動したほか、アメリカ海軍のイージス艦と共に現在、緊張が高まりつつある台湾海峡も通過しています。
カナダ海軍フリゲート「バンクーバー」のブリッジと57mm単装速射砲(稲葉義泰撮影)。
一方、「ウィニペグ」は東南アジアへ展開し、各国との共同演習や寄港などを行いました。特に日本との間では9月21日から23日にかけて、「インド太平洋方面派遣(IPD)」に参加中の護衛艦「いずも」「たかなみ」と、日加共同演習「KAEDEX22」を実施しています。
なぜカナダ海軍はインド太平洋地域で活動する?
ところで、なぜカナダ海軍はインド太平洋地域でこのような活動を実施しているのでしょうか。
まず、カナダは日本と同じく「太平洋国家」です。つまり、自国の領土が太平洋に面しており、さらに太平洋を利用した海上輸送による輸出入が自国の経済を下支えしています。従って、カナダにとって太平洋を含む地域の安全は自国の利益に直結するわけです。
実際に、今回のカナダ海軍艦艇派遣にあわせて、カナダのアニータ・アナンド国防大臣は「カナダは太平洋国家であり、世界の安定と繁栄にとってインド太平洋地域が重要であることを強く信じています」と述べています。
カナダ海軍フリゲート「バンクーバー」のボフォース Mk3 57mm単装速射砲(稲葉義泰撮影)。
さらに、カナダは国防に関する基本方針として、自国を防衛する「Strong」、アメリカと共に北米地域を防衛する「Secure」、そして世界の安全に貢献する「Engaged」を掲げており、今回のインド太平洋地域派遣を含め、カナダ軍のグローバルな展開はこれに沿ったものです。2023年にも、新たな艦艇を再びインド太平洋地域に展開させることがすでに予定されています。
両艦は呉寄港ののち横須賀へ寄港し、国際観艦式や日米共同演習「キーンソード」に参加する予定で、こうした機会を通じてさらに日本との連携が強化されることになるでしょう。
2022年9月21日から23日にかけ、カナダ海軍艦「ウィニペグ」(右下)は日加共同訓練「KAEDEX22」に参加した。左は「たかなみ」、その後ろに「いずも」(画像:海上自衛隊)。
こうした日加関係の深化について、イアン・G・マッケイ駐日カナダ大使は、「カナダは、強固で拡大を続ける日本との防衛関係を非常に重視しています。日本はインド太平洋地域の重要なパートナーであり、私たちは日本がこの地域全体の平和、安定、繁栄に重要な役割を果たしていることを十分理解しています」と述べており、今後の日加間の防衛協力の行方が注目されます。