調達購買部門の地位向上と見せる化ーその2−/野町 直弘
だいぶ時間が空いてしまいましたが、今回は、調達購買部門の地位向上のための方策と、そのポイントについて、前回(https://www.insightnow.jp/article/11508)に引き続き、理解を深めていきます。
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前回は、KGI、KPIの設定と「見せる化」を進めることがマネジメントからの注目を集め、ひいては調達購買部門の社内での地位向上につながる、ということを述べてきました。
今回も、調達購買部門の地位向上に、効果的な方法を紹介していきましょう。それは社内の従業員満足度調査です。従業員満足度調査はEmployee Satisfactionを省略し、ESと呼ばれることが多いですが、調達購買部門にとって従業員はユーザーであり、顧客そのものです。ので、私はこれをESではなく、Customer Satisfation(CS調査)と呼んでいます。
私が知っている限り、調達部門でCS調査を実施している企業はそれほど多くないでしょう。感覚的には3割程度ではないでしょうか。
何を調査するかというと、調達購買部門の業務(サービス)に満足しているか、が主たるテーマとなります。また、重要なのは、今後どのような業務(サービス)を期待しているか、という設問です。とある企業で、この設問に対するユーザーの声を聞いたときに、現状の業務(サービス)で満足されている点や不足している点、今後の期待などで、多くのユーザーが「多様な情報提供」を求めていることが、わかりました。
これは、バイヤー担当にとって、日頃、あまり感じていなかったようで、新たな気づきを与えてくれた、という声が多く聞かれました。このような指摘から、多くのバイヤー担当がユーザー部門とのコミュニケーションを密にし、様々な情報提供として、サプライヤやサプライヤが持つユニークな技術や、サービスの提案をするようになったのです。
結果的に、翌年のCS調査結果で、社員の満足度は一層高くなり、その理由として、多様な情報提供が行われている、という評価になりました。
私はこのような実績を踏まえて、CS調査が企業の調達購買業務(サービス)の充実につながり、社内ユーザーの購買業務のQCD最適化や、社内での調達購買部門の地位向上にもつながることを経験した次第です。
CS調査は、調達購買業務の満足度を見える化するものです。また、重要なのは、調査結果を社内ユーザーに公開することです。これによって、調達購買部門の社内での評価を「見せる化」することにつながります。
これは副次的な効果ですが、ある企業では、「見せる化」の活動を続けるなかで、調達購買部門への異動希望者が、以前よりも増えた、ということです。従来、調達購買部門は会社の中で、それほど人気がある部署ではなかった、というのが一般的な状況でしょう。この企業では「見せる化」をうまく活用し、機能させた良い事例と言えます。
「自分の会社では、調達部門ポジションが高くない。どうしたら、良いか」と悩むだけでなく、積極的にKPIやKGIを設定し、業務やサービス、評価の「見せる化」を進めることが、肝要ではないでしょうか。