男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。

出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで…この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。

-果たして、あの時どうすればよかったのだろうか?

できなかった答えあわせを、今ここで。

今週のテーマは「家に絶対に上げてくれない男。その理由は?」という質問。さて、その答えとは?

▶【Q】はこちら:絶対に、家に上げてくれない男。LINEの返信スピードが遅くなっていった理由が…




目の前でシクシクと泣く夏帆を見て、ため息が出てきた。

ここは家の近所のカフェで、しかも今日は日曜。隣に座る幸せそうなカップルからの突き刺さるような視線が、辛い。

「夏帆ちゃんはすごくいい子だし、優しいけど…。僕よりいい人がいると思うんだ」

いい子だとは思う。けれども夏帆とは付き合ってはダメだと僕は思っている。

「そんな…私は、翔太くんじゃないと嫌だよ」

― だから、そういうところだよ。

何度もそう言いかけたが、これ以上何を言っても火に油を注ぐだけになりそうで、言葉を飲み込んだ。

そもそも、彼女には手すら出していない。なぜなら手を出すと“厄介なこと”になりそうだったから…。


A1:オドオドしているのは、人見知りだからだと思っていた。


夏帆と出会ったのは、食事会だった。僕が店に着いた時から何となく視線を感じていたけれど、目が合うとパッとそらされてしまう。

その行動が気になって、僕は夏帆に話しかけてみた。

「夏帆ちゃんは、お仕事は何をしているの?」
「私は受付です。翔太さんは?」
「僕は商社だよ」

けれども、会話があまり続かない。嫌われているのかな、と思ったけれども、どちらかというと静かな子なのかもしれない。

外見も小柄で華奢。ふわっとしたワンピースを着ており、主張が強そうな感じはしなかった。

「夏帆ちゃんって、おとなしい人?」
「違うんです、人見知りで…うまく話せなくて。つまらなかったらすみません」
「全然いいよ。人見知りかぁ、可愛いね」

甲高い声でギャアギャアと話す人よりも、静かな女性のほうが僕にとっては好感度が高い。だから“可愛いね”と言ったのは本心だった。

けれども帰り際に夏帆からこう言われた時、正直驚いてしまった。

「あの…また今後、会えませんか?」
「え?僕?もちろん!」

しかも帰宅するとすぐに、夏帆からLINEまで入っている。

― 夏帆:今日はありがとうございました!次はいつ会えますか?
― 翔太:こちらこそ、ありがとう!来週金曜とかどうだろう^^好きな和食のお店が恵比寿にあるんだけど、そこでどうかな?


この時、僕は“おとなしいけれど積極的な子”と思っていた。このギャップは最高だ。でもここから既に、“厄介”フラグは立っていたのかもしれない…。




出会った翌週の金曜。約束通り、僕はお気に入りの店へ夏帆を連れて行った。

「そっか、じゃあ夏帆ちゃんは定時に上がれるんだね」
「そうなんです。翔太さんは?」
「僕はかなり不規則かな…。最近は残業が少なくなったけど、それこそコロナ前は頻繁に海外出張もあったし」

すると、急に夏帆が目を輝かせた。

「かっこいいですね…♡」

久しぶりにこんな反応を見て、僕はついニヤけてしまった。“カッコいい”という褒め言葉は、どんな時も嬉しいもの。

「いや、全然だよ(笑)。夏帆ちゃんは、仕事後とかは何をしているの?」
「お家帰ってご飯作って食べたり、友達と遊びに行ったり…。でも友達もあまり多くないから、すごく地味ですよ」
「まぁ派手に遊ぶよりいいよね。それに夏帆ちゃんが作るご飯って、美味しそうだよね。家事力も高そうだし」

これも本心だった。でももしかしたら、“友達がいない”という言葉がすべてを表していた可能性もある。

「家事力は高いほうだと思います!誰かに尽くしたりするのが好きなんです」

そしてこの“尽くすのが好き”という言葉も、僕はちゃんと拾っておくべきだった。

なぜならこのデートが終わった後から夏帆は、僕にLINEを積極的に送ってくるようになった。

ただその頻度が問題で、夏帆からの連絡はほぼ毎日来るようになった…。


A2:行動すべてが、ちょっと怖い。


その後は、事前に約束していたデートには出向いた。けれどもデート中の会話で、僕はいろいろなことを悟ってしまったのだ。

「夏帆ちゃんって、すごいマメだよね。返信遅くてごめんね」

悪い子ではないのはわかっている。でも交際する前から、“今日は何してた?”など毎日来るLINE…。段々と鬱陶しくもなっていた。

「ううん、いいの。私が勝手に送りつけてるだけだから気にしないで。でも翔太くん、最近忙しいの?」
「そうだねー。会食も増えてきたからな」
「そっか。会社の人たちと?」

― …もしかして、探られてる?

「うん、あとはクライアントさんとか」

毎日来る連絡は、僕の行動を把握したいからなのかもしれない。ちょっと怖くなって適当に流してみるものの、夏帆の追及は止まらない。

「翔太くんって…。今好きな人とか、彼女とか本当にいないの?」
「いないよ〜!もし誰かいたら、女性と2人でご飯には行かないしね」

僕は今誰とも付き合っていないし、デートもしていない。それなのに夏帆はひたすら疑ってきて、引き下がらない。

「そうなのかな…。何か誰かいそうな気がするんだよねぇ…」

まだ僕たちは付き合ってさえいない。それなのに、既に彼女の束縛心が強く表れていた。

夏帆みたいな子は、付き合ったら一番厄介なタイプだと思う。一見おとなしいけれど、実際は束縛心が強くて相手の行動をすべて把握し、監視したがる。

仮に仕事関係の人でも、女性と連絡を取っていたのがバレたら、何をしでかすか分からない。そんな恐怖心が芽生えてきたのだ。




だから僕はなるべく穏便に、感情を逆撫でしないようにそっとフェードアウトをする予定だった。

でも夏帆はグイグイと来る。

「翔太くんは、浮気とかは絶対にしないタイプ?」
「浮気はしないかな。2人同時とかも無理だけど、そもそもそんなに器用じゃないし」
「翔太くんモテるだろうし、不安だなぁ。ねぇ。今度お家に行きたい!ダメかな…?」

― 家…!?臆病なのかと思ったら、急に大胆だな…

心の中で、思わずそう突っ込む。自信がなさそうなのに、グイっと距離を近づけてくるのが不思議だった。

「いいけど…今日は部屋が汚いから、また今度ね」
「絶対?絶対に約束だよ?」
「うん、わかった」

― これ以上関わると危険だ。

そう判断した僕は、LINEの返信回数を極力減らしてみた。それでも夏帆は、相変わらず連絡をしてくる。

― 夏帆:翔太くん、お疲れさま!今週末も、忙しいかな?暑い日が続くから、体調に気をつけてね。
― 夏帆:翔太くん、今日は何してた?


「いやいや、だから怖いんだよ…」

このまま既読スルーを続けていたら、何をしてくるか分からない。だからちゃんと会って、ハッキリと断ることにした。

▶【Q】はこちら:絶対に、家に上げてくれない男。LINEの返信スピードが遅くなっていった理由が…

▶1話目はこちら:「この男、セコすぎ…!」デートの最後に男が破ってしまった、禁断の掟

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