【漫画】「俺の発達障がいのために前妻は心を病んだ」不安しかない彼氏の告白！彼女は交際を続けるのか
アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)と診断されたご主人とのちょっとユニークな日常生活をInstagramで発信している、ちくわさん(@chikuwa_bloger)。彼女のコミックエッセイ「好きになった人はアスペルガーでした」は、ちくわさんとご主人の出会いから、沸きあがる違和感、まさかのカミングアウトを経て、それを受け入れ結婚するまでを描く。今回のテーマは「ちくわの決断」。
【漫画】彼女は別れるのか？交際継続するのか？決め手となった理由は
子供のような無邪気さや裏表のない言動に好感を抱き、テニススクールの担当コーチ(のちのご主人)と交際を始めたちくわさん。彼はアスペルガー症候群のため、場の空気を読んだり人の気持ちを想像したりすることが大の苦手。そのことを知らないちくわさんは、非常識に思える言動に対してストレスが積み重なり、ついに怒りが爆発した。すると彼は、自分がアスペルガー症候群であること、その特性のために当時の妻が精神的に病んでしまい、離婚した話を語り始めた。
■「ちくわの決断」
アスぺルガー症候群の特性のために、パートナーが心を病んだ…。彼氏の衝撃的なカミングアウトに対し、ちくわさんは交際を続けるのか、別れたほうがいいのか、決断を迫られる。その時…。
自分が彼に魅かれたのは、ユニークで奇想天外なところ。結果的にそれはアスペルガー特性がもたらしたものだった。つまり、彼がアスペルガーでなかったら、そもそも好きになっていなかったかもしれない…。ちくわさんは交際継続を選び、同時に発達障がいに向き合うことを決心する。
ネットには不安な言葉があふれる。だが、発達障がいを勉強したちくわさんには、それを克服する自信が芽生えていた。間もなく同棲を開始、2人は新しいスタートを切った。
■交際を続けることは、即決だった
漫画ではすぐ決断したように描かれているが、実際は悩んだのではないだろうか？ちくわさんに聞くと、「彼(夫)と付き合い続けることは即決しました。不安は確かにありましたが、彼のことが好きだったので『アスペルガーだから別れる』という選択肢はありませんでした」。同棲を決めたのにも時間はかからなかった。「アスペルガー特性の『イメージ力の欠如』もあって、 彼は未来に過度な不安を抱かず行動することができるタイプ。そのフットワークの軽さは相性がよかったと感じます」
発達障がいの本を読みあさった描写がある。「元々学ぶことは好きなのですが、彼のカミングアウト後は『早く勉強したいな』と感じました。勉強して彼の不可解な言動の意味が分かるようになるということは、『好きな人の気持ちが理解できるようになる』わけですから。これほどうれしいことはありません。また恋愛中という、一番熱があるタイミングでのカミングアウトというのも、追い風だったかもしれませんね」
勉強の前と後では、まず「漠然とした不安が減った」こと、さらに「自信がついた」という変化があったそう。特に、彼を客観的に見ることができるようになったとちくわさんは語る。「今までのようにすぐ感情的になってしまうことがなくなり、『これならうまくやっていけるかも』と自信がつきました。また、彼女として『彼の力になれている』と自己肯定感が高まったことも、ポジティブに考えられた理由の1つかもしれません」
■ネットにはネガティブな言葉ばかり。どうやって前を向いたのか
しかし、ネットで発達障がいの関連記事を見るたびに不安に襲われた。仕事の休憩中などにふと「アスペルガー」で検索してみると、次に続く単語は「離婚」「遺伝」「別れる」…。「いろんなブログを見てみても、その内容のほとんどは恨みつらみや後悔の数々でした」
ちくわさんは、できるだけポジティブな記事はないだろうかと探したが、当時はほとんど見当たらなかった。「ネガティブな記事を見て、ネガティブな気持ちの沼にハマっての繰り返し。でも彼のことは好きだし、『勉強したから大丈夫』ともう一人の私が励ますようなイメージで…。もう悩んでも、答えは出ない！と同棲生活に入りました」
そんな中で、彼のアスペルガー特性をポジティブに言い表す「オリジナル」という言葉が生まれた。「彼と一緒に発達障がいの勉強をしている時に、『障がいってなんかネガティブだよね』という話題が出て。その時、彼が『じゃあオリジナルってどう？』と言ったことがきっかけです」
同棲中はずっと、発達障がいのことを意図して「オリジナル」と言い続けていたちくわさん。だが、今は言うことはなくなったという。「最初はきっと、私のなかでも『発達障がい＝個性』だと完全には落とし込めてはいなくて、とにかく悪いニュアンスを払拭したかったんだと思います。今あえて言うことがなくなったのは、いい意味で夫の発達障がいに気を遣わず、フラットに捉えられているからでしょう」
彼がアスペルガー症候群であることを承知のうえで、ついに同棲生活に入ったちくわさん。そこにはさらなる難題が待ち受けていた。
なお、ちくわさんのご主人の場合は、人の気持ちを想像できない特性に加え、多動性や衝動性に代表されるADHD(注意欠如・多動症)の特徴もあるタイプ。漫画内や記事に出てくる特徴の描写はあくまでちくわさんとご主人のケースに対する説明で、すべてのアスペルガー症候群の方に当てはまるわけではないことを念のため補足しておく。
取材・文＝折笠隆
