これまでの人生で印象に残っているお弁当ってありますよね。今回は料理研究家の小林まさみさんに、思い出の「カジキの照り焼き弁当」のレシピと当時のエピソードを教えてもらいました!

小林まさみさんの思い出カジキの照り焼き弁当

私の実家は鮮魚店。1階が店、2階が自宅だったので、家の冷蔵庫にはいつも魚が入っていました。もちろん、お店で残ったものなのですが、わりと自由に食べてよしとされていたので、アワビのスライス(高級!)からお総菜のピーナツみそまで、よく食べていたことを思い出します。

●家の事情と、母の愛がたっぷりの魚が主役のお弁当

幼い頃から好き嫌いはほとんどなく、兄妹のなかではいちばん魚が好きでした。それでも、友達のお誕生日会に呼ばれたときにフランスパンをくり抜いたところにシチューが入っているおしゃれな料理が出てきたときはとてもうらやましく、「私のお誕生日会は手巻きずし。どうして、うちはああいうのをつくってくれないんだろう?」と、当時は思っていましたね(笑)。

そんなわけで、お弁当のメインもだいたいが魚のおかず。焼き魚だったり、かば焼きだったり。ほかにはインゲンやホウレンソウのゴマあえ、箸休めのカボチャや豆などを使った甘い煮物、そして厚焼き卵が多く、大人が好むおかずばかりが入ったアルマイトのお弁当は、今でいう“地味弁”でした。

ミートボールやから揚げが入っているような同級生とは、ちょっと違うお弁当。ものすごくイヤだったわけではないけれど、なんだか特殊な感じはして、隠して食べていたこともありました。自分の親が見られるのも恥ずかしいお年頃、家の食卓をのぞかれてしまうようなお弁当の時間はなおのこと。その反動もあってか、中学に上がってからは自分でお弁当をつくることも増えました。

数か月に一度、部活動のときだけですが、「これでもか!」というほどに自分の好物ばかりをつめていましたね。トウモロコシの缶づめをバターで炒めて塩コショウしたもの、冷凍食品のコーンコロッケ、ウインナソーセージ、白いご飯が大定番。部活の日はデザートもOKだったので、ゼリーとフルーツを固めて持っていくのも楽しみのひとつでした。

このエッセイを書くに当たって聞いたのですが、母はブリやカジキなど、骨のない魚を選んでくれていたそう。イワシだったら、食べやすくひらいてから蒲焼きに。思えば、魚のおかずだけでなく、好物のウインナもつめてくれていました。

両親ともに働いていたので、忙しいなかつくってくれることに感謝していましたが、細やかな気づかいにはまったく気がついていませんでした。魚が中心で肉、野菜、卵と栄養バランスのとれた健康的なお弁当。それは本当にぜいたくで、母の愛までつまっていたんだなと思います。

●カジキの照り焼き

ふっくらやわらかく、骨なしで食べやすい。

材料(1人分)

カジキ(切り身) 1切れ(約100g)
小麦粉 適量
サラダ油 大さじ1/2
A[みりん大さじ1 しょうゆ小さじ1]

【つくり方】

(1) カジキは水気をペーパータオルでふいて2等分に切り、小麦粉を薄くまぶす。

 

(2) フライパンにサラダ油を中火で熱し、(1)を並べて、両面を5分ほどこんがり焼く。ペーパータオルで油をふき取り、Aを加えて照りがでるまでからめる。

[1人分275kcal]