きゃりーぱみゅぱみゅの 「大人なLADYになるわよコラム」第30回〜『レビューを見る女になってしまったわよ』〜
きゃりーぱみゅぱみゅが「大人なLADY」を目指す日々を綴る連載。おかげさまで、話題沸騰です。第30回は「レビュー」のお話。
『レビューを見る女になってしまったわよ』
皆さま、ごきげんよう。何するにしてもレビューを見る女になってしまった、きゃりーぱみゅぱみゅです。嫌だよ〜。昔に戻りたいよ〜。
ごはん屋さんに行く前はもちろん、着いてからもお店のレビューを見たりしますし、家電を買う前もレビュー、映画を観る前もレビュー(たまにネタバレ見て自爆)、それに「新色のリップ全部使ってみた」とか「日焼け止め全メーカー塗ってみた」みたいなレビュー動画もいろいろ見るという毎日です。
今はあらゆる情報がケータイで簡単に手に入ってしまうので、もっとおいしいものが食べたい! もっと面白い映画を観たい! もっと楽しい観光スポットに行きたい!という欲求が湧いてきて、“より完璧な選択”を目指すようになったのかもしれません。でも、それって裏を返すと“絶対にミスりたくない”という思いが、どんどん強くなっているということでもあるんだと思います。
だからミスったときの怒りがでかい。昔は観た映画がつまらなくても「私はあんまりだったな〜」で済んでいたはずだったのが、いつしか「つまんねーなら、つまんねーとちゃんとレビューに書いとけー!」とか、「ふっっざけんなよ、時間返せ! 私の2時間返せ〜!!」とか、全身から怒りの炎がボーッと噴き上がるようになってしまいました
このミスりたくないという感情は、前回のコラムで触れた「恋愛における3つの選択肢」にもつながっている気がします。ミスりたくないからこそ、「おもろ女として仲良くしたい」「お付き合いしたい」「身体目的」、この3つの選択肢のうちどれが目的で距離を詰めてきているのかを、先に相手から教えてもらいたい。そう私は思ってしまうのかもしれません。そして結婚もミスりたくないので、まるでレビューを見るかのように慎重に慎重を重ねているうちに婚期を逃す…ということなんでしょうね。怖いよ〜。
レビューを見まくって、とにかくミスらないようにする女。気がつけば私はそれになってしまいました。
世の中がどんどん進化して、これだけ選択肢が増えたのに、一日の時間はずーっと24時間のまま。だから時間はそれだけ貴重になるし、より完璧な時間の過ごし方を目指して、ミスりたくない気持ちもどんどん強くなっていきます。最近の若者はドラマや動画を1.5〜2倍速で観ているそうですが、これもその時間の価値が上がったということの表れなんだと思います。
さすがに私は早送りで観ることまではしていないんですけど、ただ、どうも私はADHDみたいでして、映画館ではずっと姿勢を変え続けてるし、家で映画を観るときはちょこちょこ一旦停止しては洗濯物を畳んだり、掃除を始めちゃったりしてしまいます。とにかく落ち着きがないんです。
しかもどういうわけか、毎回『耳をすませば』で雫が夢を持って前向きになるシーンになるたびに、一旦それを止めて、何か大きなことを始めてしまうんですよね。衣替えに着手して夏服から冬服に総入れ替えしたり、重たいソファをうんしょうんしょ持ち上げて、部屋の模様替えを始めてしまったり。雫の前向きさに影響を受けてしまうせいなんですかね?
© 1995 柊あおい/集英社・Studio Ghibli・NH
そして、その大仕事をやっている途中で「あ、そうだ。前から変えようと思っていた新しいシーツを注文しよう」と思いついてケータイを開いたら、LINEの返信を忘れてることを思い出して、それでLINEを開いたら、今度は途中で止めてたYouTube動画とか、見ようとしてたレビューがあることに気づいたりして、あれもしなきゃこれもしなきゃしていると、ある瞬間にふとこうなるんです。
「……あれ、私、何しようとしてたんだっけ???」
これ、現代病らしいですよ。いろいろ手を広げすぎてしまった結果、大量のアプリや開きっぱなしのウェブサイトに囲まれて、もともと何がしたかったのかを思い出せなくなってしまうんです。そんな自分に気づいた途端、フワッと浮いてしまう感覚とともに、自分自身がもうどこにもいなくなってしまったかのような気持ちになります。
もうね、人類は情報に振り回されすぎてるんですよ。貴重な時間を最大限ミスらないようにするために、その貴重な時間の大半がレビューを見ることで消えてしまっているなんてなんとも皮肉です。しかも、いくらレビューを見たとしても、「じゃあ、本当のところはどうなのか?」については結局、自分が経験してみないことにはわからないままなんですよね。
実際に、私がプロデュースしたヘアケアブランド「curuput」のレビューに、「髪の毛がガッシガシになって手ぐしも通りません」と書かれたことがありました。でも、これは中の人である私としては、正直なかなか信じがたいです。
というのも私は究極のきゅるん髪を実現するために、毎晩お風呂で泡立ちや香り、そして仕上がりに全神経を集中して作りました。本来リラックスするお風呂が、まったくリラックスできない緊張の場になるという状況が1年半も続いたんですよ だから本当にガッシガシになった人がいたとしても、それは髪の毛が本当にたまたま合わなかったとか、何か特別なケースがあったとしか思えません。それか、ただのアンチコメントか。
ごはん屋さんのレビューに「おいしくない」とあっても、これと同じように味覚がたまたま合わなかったのかもしれないし、味とは関係なく、その時の店員さんの接客態度にイラついた勢いでそう書いたのかもしれません。レビューがすべてとは本当に限らないんですよね。それを「curuput」をやってみて痛感しました。知り合いでもない誰かのレビューに惑わされてる場合じゃありません(自分に言い聞かせ)。
やっぱり何も調べないで適当に入った町中華がめっちゃうまいとかが、ダントツでうれしいです。きっと皆さんもそうですよね? 光と影みたいな関係で、ハズレがあるからアタリも際立つという…
そんなわけでジャケ買いしたマンガ『けだものたちの時間 〜狂依存症候群〜』(著・big brother)をこれから読んでみようと思います。今度こそアタリであってくれ〜
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