前妻との離婚の原因は「アスペルガー症候群」だったからとカミングアウトする彼氏

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アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)と診断されたご主人とのちょっとユニークな日常生活をInstagramで発信している、ちくわさん(@chikuwa_bloger)。彼女のコミックエッセイ「好きになった人はアスペルガーでした」は、ちくわさんとご主人の出会いから、沸きあがる違和感、まさかのカミングアウトを経て、それを受け入れ結婚するまでを描く。今回のテーマは「発達障がいのカミングアウト」。

【漫画】アスペルガー彼氏の言動が、前妻をどのように追い詰めたのかを振り返る

子供のような無邪気さや裏表のない言動に好感を抱き、テニススクールの担当コーチ(のちのご主人)と交際を始めたちくわさん。彼はアスペルガー症候群のため、場の空気を読んだり人の気持ちを想像したりすることが大の苦手だった。そのことを知らないちくわさんは、非常識に思える言動に対してストレスが積み重なり、ついに怒りが爆発してしまう。

■「発達障がいのカミングアウト」

ブチ切れたちくわさんの前で力なく崩れ落ちた彼。何事かと思うと、突然ちくわさんに向かって「自分は人を幸せにできない呪いにかかっている」と言い出した。

アスペルガー?カサンドラ?聞きなれない言葉に戸惑うちくわさんに対して、彼は神妙な態度で前妻との離婚のきっかけを告白する。

ある日、彼は前妻から発達障がいの可能性を指摘される。彼女は彼に対し、ずっとコミュニケーション上の違和感を感じていたようだ。だが状況を軽く見ていた彼は、その忠告を放置してしまう。

そして3年後、前妻から離婚届を突きつけられた。もう彼の前では笑うこともできないほど、精神的に追い詰められていたのだ。離婚したくない彼は3年前の忠告を思い出し、アスペルガー症候群に向き合うために検査を受けることを決意する。

■アスペルガーの人と関係を築けず、精神や体調がおかしくなってしまう

前妻が呈した状態は「カサンドラ症候群」と呼ばれるものだ。アスペルガー症候群の夫(妻)と情緒的な関係が築けないために、アスペルガーの本人ではなくパートナー側に身体的・精神的な不安や不調が生じてしまうケースを指している。

ちくわさんは自らの体験も踏まえてこう説明する。「カサンドラになってしまう大きな理由は2つあります。1つは、アスペルガーのパートナーとのコミュニケーションや心のやり取りができず、寂しさや虚しさを感じ続けてしまうこと。2つ目は、その事実をパートナーはもちろん周囲にも理解してもらえず、当事者だけが苦しみを抱えたまま孤立した状態になってしまうことです」

アスペルガーの特性のために、会話が噛み合わないなどコミュニケーション上のストレスがかかるのは漫画で描かれている通り。追い打ちをかけるのは2つ目の方だとちくわさんは語る。「周りに相談しても『旦那なんてみんなそんなもんだよ』『気にし過ぎじゃない?』と真の苦しみをわかってもらえないことが多いのです。そのため、本人は逆に『わがままなのは私の方かも』と自分を責め続け、ますますカサンドラの沼から抜け出せなくなる方も少なくありません」。ちくわさんのInstagramのフォロワーの中には、自分自身がカサンドラ状態だと気づかなかったばかりに、長年不調に悩まされ続けていた方もたくさんいるという。

離婚の原因がアスぺルガーだと語る彼氏に対し、ちくわさんはこれからどのような態度で接していくのだろうか。

なお、ちくわさんのご主人の場合は、人の気持ちを想像できない特性に加え、多動性や衝動性に代表されるADHD(注意欠如・多動症)の特徴もあるタイプ。漫画内や記事に出てくる特徴の描写はあくまでちくわさんとご主人のケースに対する説明で、すべてのアスペルガー症候群の方に当てはまるわけではないことを念のため補足しておく。

取材・文=折笠隆