※この記事は2019年04月09日にBLOGOSで公開されたものです

日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン容疑者(65)が会社法違反(特別背任)の容疑で逮捕された事件をめぐり、弁護団が9日、東京都の日本外国特派員協会で会見を開き、ゴーン氏の見解や主張を収録した映像を公開した。肉声は以下の通り。

全ての嫌疑について、私は無実

もし、皆さんがこの動画を通じて私の話をお聞きいただいているとすれば、それは、私が4月11日に予定していた記者会見を開くことができなかったということになります。

この場で、4月11日にお伝えしたかった私のメッセージのエッセンスを皆さんにお伝えするとともに、皆さんが抱えている多くの質問にお答えしたいと思います。

最初のメッセージは、私は無実だということです。これは何も新しいことではありません。1月に法廷で述べたことを再びお伝えしています。私にかけられている全ての嫌疑について、私は無実です。

そして、それらの嫌疑に基づいて私に対してなされている非難についてもまた事実無根です。それらの非難は全て、私を強欲な人物、あるいは独裁的な人物として塗り固めるためになされたものです。それらは、文脈から切り離されたり、偏見に基づいて歪められたものです。

日本を愛し、日産を愛している

私にかけられている嫌疑についてもお話します。

金融商品取引法、新生銀行との契約、ジュファリ氏に支払った報酬について、私の立場は変わっていません。108日間もの期間を拘置所で過ごしたにも関わらず、私は常に無実であるという一貫した立場です。

私が皆さんにお伝えしたい2つ目のメッセージは、私は日本を愛し、日産を愛しているということです。

もし愛情や愛着、心からの繋がりがなければ、20年間をその国で過ごしたり、20年間をその会社のリーダーとして務めることなど誰もしないでしょう。

そして、この20年という年月に、非常に多くを成し遂げ、非常に多くの結果を残してきました。私が1999年に日本に来たのは、打算によるものではありません。

私が1999年に日本に来たのは、この国に魅了され、日産を再生させるという挑戦に心を躍らせたからです。そして、私が初めて日本にきたときから、全てのキャリアを日産のリバイバルプランに捧げてきたことを皆さんよくご存知だと思います。

日産で働く数十万人の勤勉な方々、とりわけ日本の方々のおかげで、私たちは大変な成功を収めることができました。日本に対する私の愛情、日産に対する私の愛情というものは、私がいま経験している厳しい試練を経た後であっても、少しも変わることはありません。

このことは皆さんに是非知っていただきたいし、信じていただきたい。

日産の仲間たちとともに、日産のために多くのことを行ってきました。それは私の誇りです。

日産の仲間たちとともに、日本経済、そして日本企業の経営のあり方にも貢献してきました。これら全てのことは、この数ヶ月を経験した後であっても依然として、私にとって何ものにも代えがたい記憶であり、大切な財産です。

先々、皆さんにもきっとお分かりいただけるときが来ると思います。

今起きていることは「陰謀」だ

私がお伝えしたい3点目は、いま起きていることが「陰謀」だということです。

これは単に事件ということではありません。言われているような「強欲」「独裁」などという話でもありません。これは、「陰謀」「謀略」「中傷」ということです。

なぜか。なぜ、このようなことが起きたのか。

それは、何よりもまず、「恐れ」があったということです。アライアンスの次のステップ、統合、すなわち合併に向けて進むということが、ある人たちには確かな脅威を与え、それがゆくゆくは日産の独立性を脅かすかもしれないと恐れたのです。

ところが、日産の独立性は、このアライアンスが誕生してから19年間、一度たりとて脅かされたことなどありません。

私はこれまで日産の独立性を最も強力に守ってきました。将来「次のステップ」がどのような形に展開しても、日産の独立性は保ち続けるということを明確にしてきました。

当然、こうした独立性というものは、業績に支えられたものでなければなりません。独立性を得ること自体が目的となることはありえません。それが目的化してしまったために生じた恐れです。

汚い企みを実現すべく仕掛けた多くの名前を挙げることができる

日産の業績が振るわず、大きく低下しています。この2年間で3回の業績の修正があり、何度も不祥事(検査問題)がありました。会社が多くの難題に直面しているからということで問題なのではありません。起きた問題への対処の仕方が、会社の信頼を損なっているのです。

問題が解消されていないにも関わらず、会社として解決したと発言することは信頼を失うのです。これは会社(日産)の現経営陣に問題があったということです。これらの人物のことはご存知だと思います。私が尊敬している日産の従業員の方々について言っているのではありません。

数名の幹部、つまり、明らかに自分たちの利益のため、そして自分勝手な恐れを抱いたために、会社の価値を毀損している人たちのことを指しています。それらの名前は皆さんご存知です。

今回の汚い企みを実現すべく仕掛けた多くの名前を挙げることができます。真相や事実が明らかになることを願っています。

しかし、結局のところ、この間、私は自分の事件にだけ苦しめられてきたわけではありません。一体誰が、日産の舵取りをしてくれるのか、ブランドを守っているのか、企業価値を守っているのか、株主の利益を守っているのか。

株価の下落と業績の低下を目にしながらも、幹部たちはあれはしない、これはしないと言って、それと同時に、今後何をするのかも言わず、未来のビジョンもなく、日産の業績を向上させるためのビジョンもなく、アライアンスの将来をより強化するためのビジョンもなく、自らを誇っている現経営幹部たち。

それを見ることは非常に悲しいことです。私にとっては本当にうんざりさせられることです。19年から20年もの年月をかけて、これらとは真逆のこと、つまり、企業価値を創造し、ブランドを強化してきた人間にとって、今のように頽廃して、無頓着になっているのを目にすることは本当に辛いものです。

「独裁」ではなく「リーダーシップ」

私は心配です。

明らかに日産の業績が低下していることを心配しています。さらには、アライアンスを構築するためのビジョンがあるとは思えないので心配しています。

率直に言って、テーブルを囲んでコンセンサスで意思決定をしていくということは、自動車業界ほど競争の激しい産業においては何らのビジョンも生み出しません。将来像を見せなければなりません。

これから未来に向けて私たち(日産やアライアンス)の役割は何なのかについて明確にする必要があります。必要な時にはリーダーシップを発揮しなければいけないものです。

そして、リーダーシップというものは、会社にとって良いことのために発揮されるものであって、(コンセンサスによる)妥協の産物を目指すものではありません。

これは「独裁」などではなく、「リーダーシップ」なのです。いかなる会社でも行われていることです。

コンセンサスか独裁か、この2つの選択肢しかないと考えている人は、「リーダーシップ」の本質を理解していません。アライアンスや日産ほどに複雑かつ巨大な組織のトップだった者として、これはとても悲しいことです。

私が最も強く望むことは、公正な裁判を受けること

最後に私がお伝えしたいのは、私の切実な希望です。私が最も強く望むことは、公正な裁判を受けることです。

私は幸いにして、この訴訟で3人の有能な弁護士に弁護してもらうことができますが、彼らからは裁判の公正性についての安心材料は提供してもらえていません。

私は弁護士ではありません。

私はこの点について詳しくありませんが、今回の裁判において公正性を保証するために、必要とされる具体的な条件について3人の弁護士に説明してもらいます。この裁判で私の無実を証明したいと切に願っています。

ご静聴ありがとうございました。より多くのことを皆さんにお伝えしたり、皆さんの心にある多くの質問にお答えすることができなかったことを申し訳なく思います。しかし、将来、それが叶うことを願っています。