「マトリ」が本当に狙っていたのは…? ピエール瀧400万円で保釈 - 渡邉裕二
※この記事は2019年04月05日にBLOGOSで公開されたものです
麻薬取締法違反の罪で起訴された俳優でテクノグループ「電気グルーヴ」メンバーのピエール瀧被告(51)が4日、保釈された。その保釈金は400万円だった。ピエール瀧こと瀧正則被告がコカイン使用で関東信越厚生局麻薬取締部――通称〝マトリ〟に逮捕されたのは先月12日のこと。任意で行った尿検査からはコカインの陽性反応が検出された。
「瀧被告は、捜査関係者に対して『間違いありません』と素直に容疑を認め、警視庁の東京湾岸署で勾留が続いていましたが、取り調べでは20代の頃から大麻やコカインに手を出していたことを認め、さらには東京・世田谷に仕事用で借りていたマンションで(コカインを)使用したことなど供述してきました」(芸能関係者)。
瀧被告は「使ってない時期もあった」と言うものの、約30年にもわたる薬物の常習者だったことを吐露した。薬物に手を出したことについては「ストレス解消」だったそうで、逮捕時も「その日の朝に使った」と供述している。
だが、その日は「いだてん」(NHK)の収録日だったことを考えると「収録の合間にも使った」とも考えられるわけで、マトリは「そういった状況を見極めた上で任意での尿検査に踏み切ったのではないか」(芸能関係者)と言われる。
麻薬取締官の狙いは「入手ルート」
もっとも、マトリの本当の狙いは瀧被告の「入手ルート」である。ある情報筋は、「マトリは瀧被告にコカインを譲り渡したことで、その後に逮捕した通訳業の田坂真樹容疑者(48)に、実は捜査の重点を置いていたとも言われています。田坂容疑者は電気グルーヴが結成された当時からの親友だったのです。しかも、彼女の夫というのは石野卓球からその才能を見出されたテクノDJのDJ TASAKAだった。
田坂容疑者の逮捕は、世間的には芋ずる式だったように思われがちですが、マトリの本当の狙いは瀧被告より田坂容疑者だったのかもしれません。ただ、逮捕するための決定的なものがなかったので、まず瀧被告をパクってから、メールや、その他から入手ルートとしての証拠を掴んだとも。もっとも、瀧被告は〝買った〟と言っているんですが、田崎容疑者は中身がコカインだとは知らなかったなんて供述している。いずれにしてもその部分は、これから解明されていくんじゃないでしょうか」。
今回の事件は「情報提供」から内偵が始まったが、それは田坂容疑者に関する情報だったのかもしれない。改めて言うが、マトリの目的は決して「逮捕」して「送検」することではない。薬物の「入手ルート」を探り、解明することにある。そういった意味から今回は、実は瀧被告より田坂容疑者の方が「ルート解明」という部分で大きなカギとなっていたという〝裏情報〟もあるのだ。
「覚醒剤もコカインも、脳の中枢神経を興奮させる薬物という点では類似しています。しかし、覚醒剤に比べてコカインというのは摘発されることが少ない。この差は何かというと価格なのです。覚醒剤に比べコカインは3~4倍の値段がしますので、コカインは〝セレブの薬物〟なんて言われているのです。
ところがここ数年、日本国内でのコカインの押収量が増え続けている。そのほとんどは南米や中南米からの密輸です。しかも昨年は横浜港に入港したコンテナ船から大量のコカインが発見されたのですが、その量は日本で押収された中でも過去最大の115キロにも及ぶものでした。来日する海外観光客も増えており、来年は東京五輪があります。このままでは日本は薬物天国になりかねませんからね。そういったこともあってマトリも警視庁も入手ルートを徹底的に探っているのです。もちろん、その要因には暴力団の撲滅もありますが…」(事情通)。
保釈金400万円は妥当な金額
これまで瀧被告が所属してきたソニー・ミュージックアーティスツは、起訴された2日にマネジメント契約を解除した。もっとも今回の事件で被った損害については、これまで通り所属していたソニー・ミュージックアーティスツが窓口になって対処していくとのこと。事務所の被った損害については、事件が一段落したところで事務所と瀧被告が話し合っていくことになるのだろう。その瀧容疑者は4日夜には、保釈金400万円を納付して保釈された。
保釈金は基本的に年収によって決まる。ここ数年の薬物による逮捕者の保釈金額を見ると押尾学が事件の際に「保護責任者遺棄致死」も加わったこともあって1000万円と最も高かったが、ASKAは700万円。酒井法子と清原和博、高知東生は500万円、そして槇原敬之は300万円、小向美奈子が200万だったことを考えると、瀧被告は順当な金額だったのかもしれない。
出演しているテレビドラマや映画は続々と撮り直しに追い込まれ、電気グルーヴについては、デジタル配信が中止されCDも回収された。唯一、東映の出演作「麻雀放浪記2020」は再撮影されることなくノーカットで予定通り5日から公開となった。
「公開については業界的にも大きな話題になりました。東映の株価も上昇したようです。だからと言って観客の動員が伸びるような作品でもないでしょう。公開館も50館程度です。興行収入だって2億、あるいは3億円もあげたら大成功というレベルだと思います。同じ東映系で現在公開している『翔んで埼玉』の30億円と比べたら大差です」(プロダクション関係者)。
もっとも、公開のタイミングに合わせたかのような保釈は東映にとっては大宣伝になったことは確かだろう。だが、それ以上に逮捕によって出演作品の公開の取りやめや撮り直しなどが相次いだことに対して一石を投じることにもなった。「出演者個人の犯罪で作品全体が被害を被るのは問題」というわけだ。同じテクノ出身のミュージシャン、坂本龍一まで〝自粛〟疑問の声を上げていた。 しかし、その一方で「作品には責任はないが、事件によって作品の観られ方が変わってしまうし、結果的に作品の意図することも伝わらなくなる。公開さえしたらいいということではないのではないか」との意見もある。
私は、薬物使用や性犯罪、あるいはそれらに準ずる事件で出演者が逮捕された場合、従来通り、出演作品の撮り直しや自粛することもやむを得ないと思っている。一方で、DVDなどの映像作品やCDなどについては既発売のものを、わざわざ回収までする必要はないだろう。それは余りにも過剰反応過ぎる。
薬物からの復帰を認める芸能界は甘いのか
よく芸能界で、こういった事件が起こると「(犯罪者に)甘い」と批判されたりすることがある。もちろん、これは〝復帰〟のタイミングや反省の度合いなどもあるが、現実的には「甘い」どころか、一般社会より「厳し過ぎる」はずである。確かに、一般人だったら会社をクビになったとか、社会復帰するのは難しいと言うかもしれないが、芸能人の場合は経済的にも社会的にも計り知れないほどの制裁を受けることになる。もっとも、それも「芸能人だから」ということで済ませてしまっている部分があるのだが…。
しかし、今回の瀧被告に対して「個人の問題で、被害者がいない」なんて、意味のわからない〝擁護発言〟をする人も中にはいた。果たしてそうなのだろうか? そういったことも含め、このような事件については論議すべきことが多い。
5月のゴールデンウィーク明けにも初公判が行われ、3年か5年の執行猶予付き有罪判決が下るだろう。瀧被告が才能や実力の伴わないミュージシャン、役者だったら黙っていても潰れていくに違いないが、瀧被告というのは才能も実力もある。
それに、今回の事件で与えた損害の返済なども考えると、現実的には一刻も早く芸能界に復帰するしかない。当然、30年間も依存し続けてきた薬物だけに、体質改善のために医療施設に入ることも必要だろう。それが2年後か、3年後か…、あるいは執行猶予が終わるのを待つのかは分からないが、芸能界に復帰してくることには何ら問題はないだろう。もちろん復帰を望む声も多いはずである。
それにしても、これだけの事件を目の当たりにしながらも、2時間ドラマの常連俳優やNHK大河ドラマなどにも出演実績のある大物俳優、「紅白」出場したことのある女性歌手…次々に〝薬物疑惑者〟の名前が上がっている。一部には「すでに内偵中」とも言われ「Xデー近し」の噂もある。芸能界には懲りない連中が余りにも多い。自覚、学習能力の欠如?やっぱり自ら制止できないのかもしれないが、一方では「自分だけは大丈夫」だと思っているのだろう。