【会見全文】新元号は「令和」 万葉集に由来し、初めて日本の古典から引用 - BLOGOS編集部

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※この記事は2019年04月01日にBLOGOSで公開されたものです

政府は4月1日、「平成」に代わる新たな元号「令和(れいわ)」を発表した。

菅義偉官房長官は午前11時半頃から会見を実施。墨書された新元号を掲げ、出典を日本最古の歌集「万葉集」と説明した。これまでの元号のほとんどが中国の古典から選ばれてきたが、今回、初めて日本の古典から選ばれた。

この日、政府は9時半頃から有識者による「元号に関する懇談会」を開き、新元号についての意見を集め、10時20分頃に衆参正副議長から意見を聴取した。その後、全閣僚会議で新元号の原案について協議し、臨時閣議で新元号を記した政令を決定した。

安倍晋三首相は正午頃に記者会見を行い談話を発表。新元号に込めた意味を説明した。菅官房長官および安倍首相の記者会見の詳報をお届けする。

菅官房長官「万葉集の梅の花の歌32首から引用」

先ほど閣議で元号を改める政令、及び、元号の呼び方に関する内閣告示が閣議決定されました。

新しい元号は「令和(れいわ)」であります。

この新元号については、元号に関する懇談会と、衆議院及び参議院の議長および、副議長のご意見を伺い、全閣僚において協議の上、閣議において決定したものであります。

新元号の典拠について申し上げます。「令和」は、万葉集の梅の花の歌32首の序文にある「初春の令月にして、気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫(かお)らす」から引用したものであります。

この新元号に込められた意味や国民の皆さんへのメッセージについては、こののち、安倍総理の会見があります。

ーー選定にあたってはどういった部分を最も重視したのでしょうか。また、考案者はどなたでしょうか。出典は万葉集とのことですが、これまで、国文学や東洋史学などの専門家に選定を委嘱してきた中で、どういった理由で選ばれたのでしょうか。具体的に説明ください。

新元号が制定された理由については、こののち、総理ご自身から新元号に込められた意味や、国民へのメッセージについて直接お伝えすることになっており、また、新元号の考案者については考案者ご自身が氏名の秘匿を希望されていることに加え、考案者を明らかにすれば新元号と特定の個人との結びつきが強調されることになりかねないため、お応えは差し控えたいと思います。

いずれにしても、今回決定された新元号が国民に広く受け入れられ、日本人の生活の中に深く根差していくよう努めてまいりたいと思います。

ーー長官は有識者懇談会と正副議長からの意見聴取、全閣僚会議に出席されました。一連の過程の中で意見を聞かれたわけですが、元号の原案はいくつ示されたのでしょうか。元号の候補名と合わせて教えてください。また、それぞれの場で有識者や正副議長、各大臣からはどのような意見が出て「令和」との決定に至ったのでしょうか。

本日、元号に関する懇談会を開催し、衆参両院の正副議長の意見を伺ったうえで、内閣の責任において新元号を決定したところであります。新元号が選定された理由については、後程、総理から直接お話があります。意見聴取の場でどんなご意見があったかについてお伝えすることは差し控えたい。新元号が日本人の生活の中に深く根差していくためには、他の案と比較して議論されることは適当ではないと考えており、新元号として決定されたもの以外の案については、その数を含めてお答えを差し控えたいと思います。

安倍首相「希望に満ち溢れた新しい時代を築く」

正午頃に行われた安倍首相の談話は以下の通り。

本日元号を改める政令を閣議決定いたしました。新しい元号は令和であります。これは、万葉集にある「初春の令月にして、気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫(かお)らす」との文言から引用したものであります。

そして、この令和には人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという意味が込められております。万葉集は1200年あまり前に編纂された日本最古の歌集であるとともに、天皇や皇族、貴族だけなく防人や農民まで幅広い階層の人々が詠んだ歌が収められ、我が国の豊かな国民文化と、長い伝統を象徴する国書であります。

悠久の歴史と薫り高き文化、四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄をしっかりと次の時代へと引き継いでいく。厳しい寒さのあとに春の訪れを告げ、見事に咲き誇る梅の花のよう一人一人の日本人が明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたいという思いを込め、令和に決定しました。

文化を育み、自然の美しさを愛でることのできる平和な日々に、心からの感謝の念を抱きながら、希望に満ち溢れた新しい時代を国民の皆様とともに切り開いていく。新元号の決定にあたり、その決意を新たにしております。

5月1日に皇太子殿下がご即位され、その日以降、この新しい元号が用いられることとなりますが、国民各位のご理解とご協力をたまわれますようお願いいたします。

政府としてもほぼ200年ぶりとなる歴史的な皇位の継承がつつがなく行われ、国民こぞってことほぐことができるよう準備に万全を期してまいります。

元号は、皇室の長い伝統と、国家の安泰と、国民の幸福への深い願いとともに、1400年近くにわたる我が国の歴史を紡いできました。

日本人の心情に溶け込み、日本国民の精神的な一体感を支えるものとなっています。この新しい元号も広く国民に受け入れられ、日本人の生活の中に深く根ざしていくことを心から願っています。

歴史上はじめて国書を由来とする元号を決定

ーー日本古典を由来とする万葉集からとった令和としたことについて。これまで元号はすべて中国の古典を由来としてきたとされています。あらためて、日本の古典を由来として令和に決めた総理の思いをお聞かせください。また、今月末で幕を閉じる平成の30年間は国内では人口減少が進み、自然災害が相次ぎました。また、目まぐるしく変化する国際情勢やデジタル化など、日本は今大きな転換期を迎えています、5月1日の改元まで残り1か月となったことを踏まえて、平成の次の時代をどのような思いで迎え、また、どのような国づくりをしていきたいか、お考えをお聞かせください。

我が国は歴史の大きな転換点を迎えていますが、いかに時代が移ろうとも日本には決して色褪せることがない価値があると、思います。今回はそうした思いの中で、歴史上はじめて国書を典拠とする元号を決定しました。特に、万葉集は1200年余り前の歌集ですが、一般庶民を含め、地位や身分に関係なく幅広い人々の歌が納められ、その内容も当時の人々の暮らしや息遣いが感じられ、まさに我が国の豊かな国民文化を象徴する国書です。これは世界に誇るべきものであり、我が国の悠久の歴史、香り高き文化、そして四季折々の美しい自然、こうした日本の国柄はしっかりと次の時代にも引き継いでいくべきであると考えております。

同時に急速な少子高齢化が進み、世界がすさまじいスピードで変化していく中で、変わるべきは変わって行かなくてはなりません。平成の30年間ほど改革が叫ばれた時代は無かったと思います。政治改革、行政改革、規制改革、抵抗勢力と言う言葉もありましたが、平成の時代、様々な改革はしばしば大きな議論を沸き起こしました。他方、現在の若い世代、そうした平成の時代を経て、変わること、改革することをもっと柔軟に、前向きにとらえていると思います。

ちょうど本日から、働き方改革が本格的にスタートします。70年ぶりの労働基準法の大改革です。かつては何年もかけてやっと実現するレベルの改革が近年は国民の理解のもと、着実に行われるようになってきたとの印象をもっています。次の世代、次代を担う若者たちが、それぞれの夢や希望に向かって頑張っていける社会、1億総活躍社会を作り上げることができれば、日本の未来は明るいと、そう確信しております。新しい元号のもと、一人一人の日本人が、明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そういう時代を国民のみなさまとともに築き上げていきたいと思います。

「平成」改元時と異なり首相が談話を発表

ーー平成の改元時とは異なり、今回、自ら総理が談話を読み上げる判断をされた理由を教えてください。また、新たな元号を選定するにあたり、複数の元号を検討してきたと思うが、令和に決定した最大の決め手は何だったのでしょうか。

今回元号を発表するにあたり、誰が発表するかという点で議論があったと思いますが、通常、閣議の内容は官房長官が公表しております。そのため、今回も新元号については、平成時と同じように官房長官が発表することといたしました。その上で、平成の改元時には当時の竹下総理の談話が発表されています。当時は、総理大臣が会見を行うというのは極めてまれでございましたが、平成の30年を経て、総理大臣が直接発信する機会も増大いたしました。

私自身、何かなんらかの出来事があると、官邸に入る際、記者の方々から声がかかり、マイクを向けられることもあります。そうした時代にあって、平成の時と同様に総理大臣談話を発表するのであれば、私自ら会見を開いて、国民の皆様に直接申し上げるべきだと考えた次第であります。

また、元号の選定につきましては、他の案が何かということも含みまして、検討過程について申し上げることは差し控えますが、我が国が誇る悠久の歴史、文化、伝統の上に次の世代、次代を担う世代のために、未来に向かってどういう日本を築き上げていくのか。そして、その新しい時代への願いを示すうえで、最もふさわしい元号は何かという点が一番の決め手でありました。

ーー若い世代やこれから生まれる令和の時代の中心を担っていく世代のことをどのように考えたのでしょうか。

本日の会見は、インスタライブやツイッターで生中継されていますが、いまの若い世代のみなさんは、SNSの新しいツールを見事に使いこなし、どんどん新しい文化を作っています。ニコニコ動画も既存メディアの発想にとらわれることなく、若者たちならではの柔軟さで多様な番組を生み出し、リアルタイムで個人がコメントを発信できる、新しいメディア姿を形作られたと思っています。

こうした若い世代のムーブメントはこれまでの政治や社会のありように変化をもたらしつつあります。頼もしいかぎりであると思っていますが、日本の未来は明るいと感じています。新しい時代には、このような若い世代のみなさんがそれぞれの夢や希望にむかって、それぞれ活躍できる時代であってほしいと思っています。

この点が今回の元号を決める大きなポイントでもありました。今回の元号は、万葉集にある梅の花の歌32首序文からの引用です。この中では厳しい寒さの後、春の訪れをつげるように見事に咲き誇る梅の花の情景が美しく描かれております。

平成時代のヒット曲に『世界に一つだけの花』という歌がありましたが、次への時代を担う若者たちが、明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる、そのような若者たちにとって希望に満ち溢れた日本を国民のみなさまとともに作り上げていきたいと思っています。

ーー2月下旬と3月下旬以降の皇太子さまと面会されました。そうした際に印象を受けた皇太子さまの人柄ですとか、即位あたっての思いなど、選定にあたって考慮されたことがあれば教えてください。また即位に関し、国民の代表としてどのような関係を築きたいか。新元号について、天皇陛下と皇太子に直接伝えたことはあるのでしょうか。

2月22日と3月29日に皇太子殿下にお会いしましたが、詳細については差し控えたい。皇太子殿下におかれては、2月のお誕生日に際して今上陛下のこれまでのお姿をこころにとどめ、国民に寄り添い、あるいはともに悲しみながら象徴としての務めを果たしていきたい。とのお気持ちを明らかになさったと承知しており、大変ありがたいことだと考えています。私としてはご即位を心から喜び申し上げますとともに、殿下のお気持ちをしっかりと受け止め、新しい令和の時代を国および国民の象徴となられる殿下とともに歩みを進めてまいりたいと思っております。

平成最後の月となります。このひと月、平成の時代に、そして天皇皇后両陛下のご足跡に思いをはせつつ、新しい時代むけてご退位とご即位がつつがなく行われように万全を期していきたいと、そして新しい時代にふさわしい令和の時代を切り開いていくために準備万端、万全を期していきたいと考えております。

また、新元号につきましては、宮内庁を通じて今上陛下、および皇太子殿下にお伝えいたしました。