日本政府の原発政策は「無責任な計画」だ~田原総一朗インタビュー - 田原総一朗
※この記事は2019年03月30日にBLOGOSで公開されたものです
2011年3月の東日本大震災から8年。甚大な事故を引き起こした福島第一原発では廃炉に向けた作業が進んでいるが、日本の原発政策は課題も多い。昨年、政府は新たなエネルギー基本計画を発表したが、田原総一朗さんは「無責任な計画だ」と批判する。なぜか。その理由について聞いた。【田野幸伸・亀松太郎】元首相が「原発ゼロ」に転じた理由
この3月で東日本大震災から8年目を迎えた。未曽有の大災害で、いまもその傷痕に苦しんでいる人がいる。なかでも、福島第一原発の事故は「第二の敗戦」という声もあり、いまも問題が解決していない。その一方で、原発を建設してきた東芝・三菱重工・日立といった原発メーカーは、国内での新設は見込みがないと考えて、海外での建設を模索してきた。東芝はアメリカ、三菱重工はトルコ、日立はイギリスでの原発新設に取り組もうとした。ところが、いずれの事業も暗礁に乗り上げていて、見通しは厳しい。
日本国内では、福島第一原発の事故以降、「原発ゼロ」を主張する声が高まった。特に、小泉純一郎元首相はさまざまな媒体に出て、原発ゼロの必要性をアピールしている。首相在任時代は原発推進派だったが、2013年にフィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」を訪問して、原発反対に転じたのだ。
オンカロとは、強靭な地盤を約500メートル掘って、地下深い場所で使用済み核燃料を保管しようという施設だ。小泉元首相は、運び込まれた使用済み核燃料が「無害化」するのにどれくらいかかるか、オンカロの関係者にたずねた。答えは「10万年」だった。それを聞いて、小泉元首相は「日本は原発ゼロに舵を切るべきだ」と考えを改めた。
いまの日本には、オンカロのような施設はなく、今後そのような施設を作れる展望もない。実は10年以上前、政府が放射性廃棄物の最終処分場の建設を計画して全国各地に打診したが、承認する地域は全くなかった。それ以降、政府は最終処分場の建設をあきらめている。その一方で、使用済み核燃料の貯蔵量は1万5000トンに達している。
「デブリ」を受け入れる地域はない
昨年7月、政府はエネルギー基本計画を発表した。それによれば、2030年に30基の原発が稼働している計算になる。今後廃炉になる原発のことを考えると、現在停止している原発の再稼働だけでは30基に満たないとみられ、新たに原発を建設する必要が出てくる。ところが、自民党の幹部数人にそのことを問うと、だれもが「新設は無理だ」と答える。自民党の中で、原発の新設ができると思っている政治家はほとんどいない。つまり、政府が発表したエネルギー基本計画は、無責任な計画というしかない。
現在、福島第一原発では、溶け落ちた核燃料「デブリ」の処理が大問題となっている。デブリを取り出しても、どこに移すのか。東京電力は、取り出したデブリは福島には置かず、他の地域に運び出すのだと説明しているが、デブリを受け入れる地域などあるのだろうか。
日本版オンカロの建設さえ、どの地域も否定した。日本国内にデブリを引き受ける地域があるとは考えにくい。
そのことをだれよりも承知しているのは、東京電力だ。東電は、福島に対して都合のいい約束をしたといわざるをえない。福島第一原発の廃炉まで20年以上かかる計画だ。そのとき、いまの東電幹部は誰もいない。将来のことについて、東電は無責任な約束をしている。
東電の姿勢の背景には、政府の「無責任な原発政策」がある。このままでいいのだろうか。