掲載:THE FIRST TIMES

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■“目利き力”を感じる『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!-』

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音楽シーンにおいて、時折、センス良く、シーン全体の未来を考えながら明確なビジョンのもと、ブッキングやコンセプトメイクが完璧なイベントに出くわすことがある。

それが本イベント『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!-』だ。とても参考になるリアルな現場だと言える。

本イベントは昨年10月18日から始まり、Vol.1にはFIVE NEW OLD、chilldspot、Doulが登場。毎回“目利き力”を感じるブッキングが素晴らしい。

キーワードである“CLAPPERBOARD”とは、映画の撮影に使う音の鳴る拍子木部分とショット情報を記載するボード部分からなるカチンコを意味するもので、“カチっと”鳴った瞬間をイメージし、演奏がスタートする。

個人的に注目していたのは、オープニングアクトを飾ったティーンエイジャー・Hana Hope。元々、Hana名義で活動していた彼女は、ROTH BART BARONにフィーチャリングされたことでも知られた存在。そんなHanaがHana Hopeへ改名後、初の有観客ライブとなったのがこのイベントである。目撃せずにはいられない。

“歌姫”という言葉は、この時代死語になりつつあるのかもしれないが、2022年デビュー組において最も次世代のディーヴァ誕生を予感させるアーティストなのだ。

透明感ある白いファッションでHana Hope はステージに登場。ちょっと人間離れした神々しさすらうかがえる。ギターは會田茂一、キーボーディストを従えた3ピース&マニピュレーターという編成。

イントロから驚かされた。なんと、イエロー・マジック・オーケストラ「CUE」のカバーだ。一気に心を鷲掴みにされたオーディエンスたち。ノードリードの美しい響きに絡むノイジーに耳心地の良いギター。華やぐふんわりしたボイスと安定した歌のうまさ。

フロアに低音が鳴り渡り。ファンタジーな雰囲気からデビュー曲である「Your Song」、そして没入感高い深遠なる「Sentiment」へ。「またいつか会いましょう!」という言葉を残し、颯爽とステージから去っていった。

■知名度を上げた、あらたな才能・マハラージャン

ライブは楽しい。転換時の20分間、久しぶりに出会えた知り合いと近況報告や何気ない会話を楽しむ。好きな音楽やアーティスト、ライブ、ライブハウスとは“コミュニティー”となる。学生時代、ライブ空間でしか会わない友人がいたなということを思い出した。そういえば、みんなどこで何をしているんだろう?

…などと、勝手にセンチメンタルに浸っているうちにマハラージャンが登場。スーツ姿にターバンを巻いた独特なビジュアルのシンガーソングライターだ。

オープニングは、ギターのカッティングが気持ち良い疾走感に溢れたビートチューン「僕のスピな人」。漫画めいたストーリーテーリングがポップな魅力を解き放つ。「マハラージャンです。今日はありがとうございます!」とMC。なんとメジャーデビュー1周年を迎えたそうだ。このコロナ禍、ユニークなMV、ストリーミングサービス、『THE FIRST TAKE』といった三本柱によって知名度を上げた新しい才能。

切なさが染み渡るポップチューン「比べてもしょうがない」など、キャッチーで耳に残るフレーズがクセになるナンバーが続き、最新曲は“心の傷”シリーズとして「持たざる者」をハイエナジーなファンクチューンで決めてくれた。誰も傷つけないような素振りで、強烈に音楽の毒を打ち刺すマハラージャン。「本当に今日はありがとうございました!」とニヤッと挨拶しながら人気曲「セーラ☆ムン太郎」を披露。

キラキラ輝くフレーズの応酬に揺れるフロア。ストラトのカッティングが気持ち良い。生演奏でのバンドアンサンブルの素晴らしさ…ライブは楽しいものだと、心底思わせてくれるポップネス。今年も、さらに伸びていくこと間違いない表現者としてのポテンシャルの高さを見せつけてくれたステージだった。

■演奏力の高さがズバ抜けた、BREIMEN

続いては、演奏力の高さがズバ抜けた5人組ミクスチャーファンクバンドのBREIMEN。「やりま~す!」のひと言から童謡めいたトライバルな「あんたがたどこさ」をプレイ。テクニカルな演奏によって解き放たれる強靱なる濃厚なポップフィーリング。遊びのような自由さと、決めどころを刺しまくる力強さの両立に衝撃を受ける。

「IWBYL」での感情をアップリフトするリフ、高まるグルーヴ。「棒人間」では一変して、行間の心地良い緩さが絶妙な横揺れナンバー。さらに「ねこふんじゃった」フレーズが耳を惹く「CATWALK」では、緩急つけた気持ちの良い演奏での高揚感が絶妙だ。

オーディエンスに自分たちのライブに来たことあるかと手を挙げさせ、「新規顧客案件ですね。あと10分です」といった軽快なMCを挟み、エフェクティブな歌声、ドラマティックな音像がアッパーな「Play time isn't over」で会場のテンションを上げる。赤い照明、かき鳴らされるギター、アップビートなロックナンバーによってフロアを扇情しまくるBREIMEN…カッコ良すぎでしょ。

■人柄が滲み出るTHE CHARM PARK

そして、本日のトリはTHE CHARM PARK。マルチプレイヤーなシンガーソングライターだ。サウンドチェックから本人登場、ステージを右往左往、フロアにも降りながらバンドとプチセッションを繰り広げる姿に期待大。

「ふたり」からのオープニング、やわらかなサウンド、たゆたうメロディに落ち着ける演奏が心地良い。「渋谷、よろしくお願いします!」と勢いづけてからの「A New Wind」では、優しく紡がれる歌声がミストのように繊細に広がっていく。奏でる物語がじわりと伝わってくるメロディも美しい。

「手を挙げてくれませんか? 普段、自分のライブでも言わないんですが」と、イベントならではのサービス精神を発揮しながら人気チューン「Ordinary」へ。疾走感ある、きらびやかなギターポップを披露。フロアに広がる優しさでいっぱいの一体感。七色に輝くイメージが目の前に浮かび上がるかのような至福のひと時を味わった。

「マジック」では、甘いキーボードフレーズが奏でられ柔らかな空気感へ。華やぐサックス、ギターソロの気持ち良さにノックアウト。

MCで印象的だったのが、「このご時世、様々なことが起きています。渋谷クラブクアトロに来るという選択をした皆さん。来るという選択ができることは自由を感じられます」といったひと言が印象的だった。いや、本当そうなんだよな。

「そんな想いを込めて一曲送ります」と演奏された「Sunflower」は、すべてを包み込む包容力を持ったバラード。ライブハウスのフロアは音楽を好きなエネルギーが溢れ、しかも肌でそれを感じられる…有観客ライブ、生ライブならではの高揚感とともに「Sunflower」は心にぐっとくるものがあった。

人柄が滲み出るTHE CHARM PARK、オーラスは温かく寄り添ってくれる「Still in Love」をプレゼント。途中、ギターをフロアのオーディエンスに弾かせようとするお茶目な一面も。結局、みんな遠慮して弾かなかったが(笑)、まるでストリートライブのような自由さ、穏やかな雰囲気のまま『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!- Vol.5』は幕を閉じた。

三者三様ならぬ、“四者四様”の音世界が展開された今回。誰とも違う、彼らそれぞれの“個”の強さを感じることができた。それは自身の世界観を深めていくワンマンライブとは異なる、こういったイベントならではの醍醐味だと言えるだろう。早くも発表された、次回の『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!-』では歌心を持った女性アーティストがラインナップされており、こちらもどんなステージとなるのかとても楽しみである。

TEXT BY ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
PHOTO BY 新保勇樹

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2022.03.24@東京・渋谷クラブクアトロ
『CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!- Vol.5』SET LIST

■Hana Hope
01.CUE
02.Your Song
03.Sentiment

■マハラージャン
01.僕のスピな人
02.示談
03.比べてもしょうがない
04.eden
05.持たざる者
06.セーラ☆ムン太郎

■BREIMEN
01.あんたがたどこさ
02.IWBYL
03.棒人間
04.CATWALK
05.noise
06.Play time isn't over

■THE CHARM PARK
01.ふたり
02.A New Wind
03.Ordinary
04.マジック
05.Sunflower
06.Still in Love

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【イベント情報】
CLAPPERBOARD -Enjoy the weekend!- Vol.6
04/21(木)東京・渋谷クラブクアトロ
出演:竹内アンナ / 遥海 / 安田レイ
※4/9(土)10:00~一般発売。