スマホで同時に使えるのはいくつ? ワイヤレスイヤホンなど繋ぐ機器が増えたBluetoothの基礎知識

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スマートフォンの普及にともない、周辺機器の市場規模も成長してきた。
特にここ数年では、
・ワイヤレスイヤホンやワイヤレススピーカーなどの音響製品
・スマートウォッチやスマートバンドなどのウェアラブルデバイス
・体組成計や電動歯ブラシなどのヘルスケア製品
・ゲーム機
・そのほかの様々な家電製品
これらにおいて、スマートフォンとBluetooth(ブルートゥース)で無線接続して利用する製品が急増している。

Bluetoothという無線通信規格は、Wi-Fi(ワイファイ)同様、この数年で利用する機器が急増した反面、詳しいことは知らないという人が多い。

Bluetooth機器を日常生活で使ってはいるが、
・接続できる条件/環境
・接続できる台数
・利用できる機能
これらの特徴や制限について問われても、正確に回答できる人は少ないだろう。

そこで今回は、
・スマートフォンと各種周辺機器は同時に何台まで接続できるのか?
・接続できない場合はどのような場合か?
など、Bluetoothに関する基本的な機能について解説する。


■Bluetoothの接続方法
初歩的ではあるが、まずはBluetoothの一般的な接続方法を説明しよう。
ほかの無線接続ともっとも異なるのは「ペアリング(ペア設定)」という手順が必須な点だ。

ここでは、スマートフォンやパソコンを親機、ワイヤレスイヤホンやスマートウォッチなど周辺機器としてスマートフォンやパソコンと接続する機器のことを子機と呼ぶ。


様々な周辺機器・IoT機器をパソコンやスマートとBluetoothで接続する


親機と子機をBluetoothで接続するには、
・子機の電源をオンにする
・子機のペアリングモードを起動する
・親機のBluetoothをオンにする
・親機のBluetooth設定画面で子機の名前を選択する
・ペアリング完了
これがペアリングの基本操作で、ペアリングが完了すると親機と子機が無線で接続される。
一部製品では、アプリ経由でペアリングするものもあるが、基本的には上記のような手順で接続する。

現在の最新Bluetoothバージョンでは、子機側の機器は電源をオンにするだけで自動的にペアリングモードを起動するものが主流となっている。

Bluetoothを理解する上で、必要なのが以下の2つだ。
・バージョン
・プロファイル


■Bluetoothのバージョン
まずはバージョンについて説明しよう。
Bluetoothの規格は、これまでの機能強化にともない、いくつかのバージョンがある。
当然、最新のバージョンのほうが使い勝手や機能が改善されており、便利になっている。


Bluetoothのバージョンが記載されている製品もある


Bluetoothのバージョンは、
1999年に一般公開されたバージョン1.0から、
2022年1月現在の最新バージョン5.2まである。

基本的には、5.xなど新しいメジャーバージョンに統一されているが、
用途や子機によっては古いバージョンが採用されているケースもある。

例えば、現在の使われている最新のスマートフォンやパソコン、ワイヤレスイヤホン、スマートウォッチ、スマートバンドなどでは、バージョン5番台(5.0、5.1、5.2)が主流となっている。

Bluetoothのバージョンでの主な機能強化と変更点は以下のようになっている。
・バージョン4.0
省電力機能「LE(Low Energy)」を追加
・バージョン4.2
LEにおける通信速度が約2.5倍高速化
・バージョン5.0
LEにおける通信速度が最大2Mbpsに高速化、通信到達距離が最大400mまで可能に
・バージョン5.1
方向探知機能を追加
・バージョン5.2
LE Audio規格を追加

Bluetoothは、これらのバージョンアップでの機能の追加、改良により利便性の向上が図られてきた。

ちなみに、iPhoneに搭載されているBluetoothのバージョンは、
2008年に発売されたiPhone 3Gでは、Bluetooth 2.0 + EDR
2021年9月発売のiPhone 13シリーズではBluetooth 5.0
このように対応している。

Bluetoothでは、バージョンも重要なのだが、それ以上に大切なのが、
実は「プロファイル」なのだ。


■Bluetoothのプロファイル
Bluetoothは単に親機と子機を無線接続するだけでない。
・ワイヤレスイヤホンでは、ワイヤレスイヤホンの操作や機能
・スマートウォッチでは、スマートウォッチでの操作や機能
・マウスなどでは、マウスの操作や機能
このようにBluetoothは、接続する機器によって、種類ごとに異なる操作や機能を利用することができる。

プロファイルとは、
接続する機器によって異なる操作や機能を使えるようにする仕様なのだ。

例えばマウス、イヤホンなど、接続する機器ごとに、主な機能に対応したプロファイルが用意されている。
したがって、機器独自の機能があっても、プロファイルが対応していなければ、スマートフォンなどの親機で使えない、あるいは接続できないということもある。


音響製品も複数のプロファイルに対応している


プロファイルでは数が多く、よく目にするのが音声に関するものだ。
その一部を紹介しよう。
・HSP(えいちえすぴー:Headset Profileの略)
ヘッドセット製品と通信するためのプロファイル。モノラル音声の受信とマイクで双方向通信をする。

・HFP(えいちえふぴー:Hands-Free Profileの略)
ハンズフリー通話をするためのプロファイル。前述のHSPの機能に加え、発着信機能がある。
・A2DP(えーつーでぃぴー:Advanced Audio Distribution Profileの略)
音声を伝送するためのプロファイル。ステレオ音声で高音質な点がHSPやHFPとは異なる。
・AVRCP(えーぶいあーるしーぴー:Audio/Video Remote Control Profileの略)
AV機器のリモコン機能を動作するためのプロファイル。

これらのプロファイルは、音声や通話を利用する製品であれば必要不可欠となる。
逆に音声や通話を使用しない製品であれば対応していない。


スマートウォッチやスマートバンドも複数のプロファイルに対応している


音声関連のほかにも通信、データの転送や交換、機器の操作に関連するプロファイルも存在する。

・DUN(でぃゆーえぬ:Dial-up Networking Profile)
Bluetooth経由でインターネットやダイアルアップ接続をするためのプロファイル。
・HID(えいちあいでぃ:Human Interface Device Profileの略)
キーボードやマウスなどを動作するためのプロファイル。
・GNSS(じーえぬえすえす:Global Navigation Satellite System Profileの略)
GPSなどの測位情報を伝送するためのプロファイル
・HDP(えいちでぃぴー:Health Device Profileの略)
健康管理機器どうしを接続するためのプロファイル。
これらはほんの一部で、Bluetoothには用途別に、様々なプロファイルが存在している。


■Bluetooth機器は何台まで接続できる?
スマートフォンやパソコンを親機として、Bluetoothで接続する製品は増えている。
接続する機器が増えてくると不安になるのが、

「何台まで同時に接続できるのか?」ということ。


すべて同時に接続可能?


これには明確な答えがある。
同時接続して、同時に利用が可能な台数は、プロファイルに依存する。

Bluetooth接続においては、
1プロファイルは1接続(1台)という原則がある。

例えば、
・HIDで接続したキーボードとA2DPで接続したイヤホンは同時に接続できる
しかし、
・A2DPで接続するイヤホンとA2DPで接続するスピーカーを同時に接続できない

同じプロファイルを使用する製品は、プロファイル利用でバッティングしてしまうため同時には接続(利用)はできない。
逆に、利用するプロファイルが異なる製品は、使うプロファイルのバッティングが起きないため同時に接続(利用)ができる。

具体的な例では、
Bluetooth接続のキーボードで文字入力しながら、Bluetooth接続のワイヤレスイヤホンで音楽を聴いたり、通話をしたりすることは、利用するプロファイルが異なるため、できるというわけだ。

ただ、音声プロファイルの場合は、
接続のタイミングや機器によっては、
・A2DPのみで接続されたワイヤレスイヤホン
・HFPのみで接続されたワイヤレスイヤホン
これらが同時接続できることもある。
接続するプロファイルは、手動で設定できないので、たまたまバッティングせずに2台同時に繋がってしまう場合もあるのだ。

また、前述で「1プロファイルは1接続(1台)が原則」と説明したが、
一部の機器では同じプロファイルでも複数台の機器を接続できる仕様の製品も存在する。あくまでもBluetoothの仕様としての原則ということで認識してもらいたい。

筆者は、普段スマートフォンを親機として、
・ワイヤレスイヤホン
・ワイヤレスヘッドホン
・スマートバンド
・スマートウォッチ
これらを接続して利用することが多いが、
ワイヤレスイヤホンとワイヤレスヘッドホンは、プロファイルがバッティングするため、同時利用せず、どちらか1台を利用している。またスマートバンドとスマートウォッチは同時接続している。

つまり1台のスマートフォン(親機)に、合計3台の周辺機器(子機)を接続できている。とはいえ、スマートウォッチは、使う機能によりスマートバンドとバッティングするプロファイルがあるようで、接続が切れることも多い。

最新のBluetooth機器は、このように便利になったとはいえ、利用する機器(プロファイル)によって接続できる場合と、接続できない場合がまだあることは覚えておくといいだろう。

こうした問題も新しいバージョンで改善されていくのかもしれない。
Bluetoothは、現在も進化し続けているからだ。

Bluetooth(R)テクノロジーウェブサイト


執筆:S-MAX編集部 2106bpm