ホームシアターを手軽に実現できるプロジェクターをご紹介します(画像提供:XGIMI)

コロナ禍で普及に拍車がかかった、Netflixなどのオンライン映像配信。それと同時に注目度がアップしたものに、ホームプロジェクターがある。

一部地域をのぞき無観客となった東京オリンピックで、選手を映像で応援しているときに、どうせならもっと大きな画面で……と考えた人もいるだろう。あなたの周囲でも、この夏の東京オリンピックをきっかけに、プロジェクターを入手したという声を聞くことが多いのではないだろうか? 

それもそのはずで、以前は投影に広いスペースが必要、コストが高い、接続が面倒といった印象だったプロジェクターが、近年そのマイナス点が改善され、ぐっと身近になった。

特にインターネットでアプリをダウンロードできるAndroidTVなどを搭載したタイプが人気だ。手のひらサイズのコンパクトな大きさやデザインされたフォルムが部屋に馴染み、今やスマートスピーカーのように一般的な家電として普及している。

しかし一般化し始めたばかりの家電だけに、何を買えばいいのか迷ってしまうのも事実。特にプロジェクターはテレビとは違って、投影する場所と置き場所の両方が必要。環境に左右されるものなので、我が家に置いた時にどうなるのか、想像しづらい。

そこでこの夏人気のホームプロジェクターと、その失敗しない選び方を二子玉川 蔦屋家電のコンシェルジュ、平野 稔(ひらの みのる)さんに聞いた。

安くて、置き場に困らず、すぐに使える商品が人気

平野さんによれば、二子玉川 蔦屋家電でホームプロジェクターがよく売れるようになったのは、2年前にアンカー・ジャパンの「Nebula」ブランドの『Nebula Capsule II』が出始めたのがきっかけだという。


二子玉川 蔦屋家電では、そこかしこにプロジェクターを使用したディスプレイが展開され、使用シーンをイメージしやすい(筆者撮影)

「過去にはプロジェクターといえば、企業でのプレゼンテーションの際に使うものという感覚でした。

それがAndroid TV が搭載された『Nebula Capsule II』が発売されてからはスマート家電感覚で使えるようになり、広く普及したのです。価格も数万円程度からと、こなれてきました。

当店にいらっしゃる若いお客さんは、テレビよりもプロジェクターを所望される方が断然多いです。若者はNetflixやTVerなどのオンライン配信をよく見るので、手軽に見たいときはスマートフォンのアプリで 、大きな画面で見たいときはプロジェクターに搭載されたAndroid OSアプリから投影して……というのが、スタンダードなスタイルになりつつあります。

最新モデルにインストールされているAndroid TV 9.0であれば、一般的な配信アプリがほとんど網羅されていますね」(平野さん)


キッチンやベッドサイドなどの、生活の隙間遣いにも適したコンパクトなAnkerの『Nebula Capsule II』。二子玉川 蔦屋家電にて(筆者撮影)

Android TVが搭載されていればスマートテレビと同じように見たい番組にアクセスできる。配線をつないだりペアリングしたりといった手間がないことが、プロジェクターが一般化した一番大きな理由だ。


500mlのアルミ缶よりも小さいサイズの「Nebula Capsule ll」は5万9800円(税込・通常価格)と手頃。約2.5時間の充電で最大3時間の動画再生が可能で、キャンプなど電源のない場所にも持ち出せる。Android TV 9.0搭載(画像提供:Anker)

また最近のプロジェクターは映像を映すための距離が短くても、くっきりとした大画面が楽しめる。

例えばAnkerの『Nebula Capsule II』なら最大サイズの100インチ(約2.1m×約1.3m)の大きさの画面を見るのに、3m程度離せば問題なく映る。小さな部屋でも快適に視聴でき、テレビを置くよりも空間を効率良く使えるというわけだ。

スマート家電感覚で若者を中心に浸透したのがここ2年ぐらいのトレンド。平野さんによればすでに新しい動きが出ているという。

高機能プロジェクターが次の流行に

「ポータブルなスマート家電としてプロジェクターが浸透したのが、ここ2年間ぐらいの出来事です。さらに今年以降は高画質を求める映像マニアに照準を合わせたプロジェクターが多く出てくるでしょう。


高画質プロジェクターの走りジーミー(XGIMI)の『Horizon Pro』は17万6880円(税込・通常価格)。最大300インチ投影の大画面と、2200ANSIルーメンの明るさが実現する臨場感のある映像に加え、Harman Kardon製のスピーカーを8Wx2基搭載しており、音にも迫力がある(画像提供:XGIMI)

その走りといえるのがジーミー(XGIMI)の『Horizon Pro』です。4K画質で2200ANSIルーメンの明るさがあり、電気をつけた部屋でもくっきりとした映像を映し出せるので、リビングをホームシアターにすることができますよ」(平野さん)

『Horizon Pro』は2021年7月15日より販売する新モデル。

価格は17万6880円(税込)と、数万円から購入できるポータブルタイプ・プロジェクターの価格帯よりも高価だが、最大300インチ(約6.5m×約4m)の大きさでの投影が可能なので、スクリーンさえあれば映画館並の大きさの画面で4K画質の映像を見ることができる。


2000ルーメン以上あれば、照明の元でも大画面での投影に耐える明るさ。リビングでもホームシアター感覚で映像を視聴することができる。二子玉川 蔦屋家電にて(筆者撮影)

ちなみにルーメンというのはLEDの明るさの単位のこと。ルーメン(lm)の数値が大きいほど明るくなる。

さらにANSIルーメンとはアメリカ国家規格協会による単位で、投影される光量の平均値を算出した、より厳密な数値となる。日本で記載されている数値は基本的にANSIルーメンなので、ANSIを省略して表記するメーカーも多い。

「今までホームシアター環境を熱望してきた層にとっては、20万円以下でこれだけの大きさで映像を楽しめるのなら、手頃でしょう。私も自宅でいち早く試してみたのですが、映像マニアでも十分にホームシアターが楽しめるクオリティーだと感じました」(平野さん)

一般的に購入できるテレビで最大のものは85インチ(約1.7m×約1m)ほどだが、有名メーカーのものになれば50万円以上はするうえに、場所をとる。一方でプロジェクターなら見るときだけスクリーンを使えばテレビよりも大きな画面で視聴でき、置き場所も取らない。ホームシアター用の部屋を確保できない人にも、手が出せるというわけだ。

失敗しない選び方3カ条

新しい映像体験ができる家庭用プロジェクター。ただし家の間取りと合わず、結局あまり使用しないという話も聞く。そうならないためには、どんなポイントをチェックすれば良いのだろうか。3つの点に絞って紹介する。

1、画面補正の機能を確認する

広いシアタールームがあるような家庭ならばよいが、一般的なリビングではどんなに小型なものでも案外プロジェクターを置ける場所は限られている。スクリーンに対して平行に置けない場合は、画面補正機能が必須だ。使い勝手に直結する画面補正機能は、最新のハイエンド商品が競って進化させてきている機能なので、ぜひ比較のうえ購入したい。

「プロジェクターの画面補正機能で大切なのは台形補正です。今年までは有名メーカーの家庭用プロジェクターでも『タテ方向の補正』だけで『ヨコ方向の補正』については対応してなかったり、手動だったりしました。

最新機種は、各メーカー補正機能をアップしてきており、例えばXGIMIなら7万1800 円(税込・通常価格)のお手頃価格帯の『MoGo Pro+』でも縦横ともに自動で補正を行う機能がついています。スイッチをつけて映したい場所の近くにポンと置けば瞬時に画角を補正してくれるので手軽ですよ」(平野さん)

台形補正がないと、プロジェクター用の三脚を使うなどしてスクリーンに対して並行に設置しないと、画面が台形に歪んでしまう。テーブルやシェルフにプロジェクターを置いて気軽に使いたいのならば、補正機能があるかどうかは重要だ。

2、投写距離と画面サイズをイメージする

投写距離は「何インチの画面が、何メートルの距離で投写可能か」を表すもの。懐中電灯の光をイメージすればわかるように、光源を離せば離す程広い範囲に光が届く。プロジェクターの場合、画面が大きくても投射距離が短い場合は、近距離にプロジェクターを置いても大画面が楽しめるということだ。

「近年のプロジェクターは投射距離が近くても大画面が映せます。例えば100インチの大画面を2メートルほどの距離から映すことが可能な商品もありますよ」(平野さん)

短い距離で大きな画面を投写できる製品は、「短焦点モデル」ともよばれ最近の主流だ。ただしあまりにも画面が大きいと、今度は投影するスクリーンも大きなサイズを用意する必要がある。投影スペースが小さい場合は、画面サイズを任意の大きさに縮小することが可能かどうかも、併せて調べておくといいだろう。

「近年のプロジェクターは画面縮小機能もあります。ただしその場合は大きい画像をプロジェクター側でカットしていることになるので、理屈上は画質が落ちるのです。適正な投射距離と映像のサイズから、あまり縮小しないようにすると、より画質がアップします」(平野さん)

投写距離と映像サイズを完璧にフィットさせることは難しくても、事前に投射距離を調べて投影スペースをイメージしておくことが必要だろう。

どのくらいのルーメンが必要?

3、暗所なら200ANSIルーメン以上、明所なら1000ANSIルーメン以上を選ぶ

ルーメン(lm)とはLEDの明るさの単位で、厳密には光源がすべての方向に放射する光の量の値を示している。画像に投写された部分の明るさは特にANSIルーメンという。ANSIルーメンの数値が大きいほど。画面が明るくなるというわけだ。画面が明るくなれば、部屋が明るくてもプロジェクターの映像がくっきりと見える。

昨今の家庭用プロジェクターとしては200ANSIルーメンから2000ANSIルーメン程。200ANSIルーメン以上あれば、照明を消した暗所であれば問題が無い程度。1000ANSIルーメン以上あれば照明をつけていても鮮明な画像を見ることができる。

「暗所とは言っても、プロジェクターを置いてあるゾーンが暗ければ問題ありません。例えばLDKで、キッチンに電気がついていてもリビングを消灯すれば、200ANSIルーメンでも十分プロジェクターの映像を楽しむことができます」(平野さん)

実際に間接照明が明るい二子玉川 蔦屋家電の店内でも、200ルーメン程度のプロジェクターの映像が鮮明に見えていた。2000ANSIルーメン以上ともなると、大型液晶TVと間違えるくらいにくっきりと映る。購入の際には画像の明るさと使用環境も考慮に入れて商品を選ぼう。

プロジェクターが注目されているのは、コロナ禍で家ナカ需要が増えたことが背景にある。引きこもり生活の閉塞感によって、開放的な大画面が求められていることに加えて、在宅ワークで液晶モニター疲れをしていることも、原因のひとつかもしれない。実際にプロジェクターの映像は光源を見つめない分、液晶モニターよりも目に優しいそうだ。

未だ新型コロナウィルスへの警戒が必要なこの夏、自宅でできる新たな映像体験で心労や眼精疲労を癒し、気分転換を図ってみてはどうだろうか。