伝統企業の挑戦〈前編〉 同族からチーム経営へ 2トップ体制で老舗に新風 マルカン酢
創業370周年を迎えた2019年に経営体制を一新したマルカン酢。会長には三友小網(現・三井食品)元社長で飲食店経営に豊富なノウハウを持つ笹田隆氏が就任した。三井物産で食品流通に携わった勝木慶二郎氏を、初の同族外社長に迎えた。二人の代表による「チーム経営」を始めて1年6か月。経験を生かし、老舗企業に新たな風を吹き込んでいる。
食酢は伝統的な基礎調味料でありながら、発酵食品のもつ健康感や美容効果が注目され、市場が広がってきた。業界にはリーディングカンパニーから中小零細まで歴史のある同族経営企業が多く、それを強みに各社が商品にオリジナリティを反映させている。
近年は韓国の美酢(ミチョ)など異業種の参入が増え、市場は清涼飲料分野へも拡大する。これらが業界活性化をもたらす一方、新たな競争力が必要とされ、転換期を迎えている。「伝統を大切にしつつ、果敢に革新しなければ生き残れない環境」(笹田会長)だという。
笹田会長は先代の兄から経営を引き継ぐにあたり、会長と社長の2代表による「チーム経営」を取り入れ、パートナーには小網と三井物産子会社が対等合併する際に、三井物産側の交渉人だった勝木社長を迎えた。
勝木社長は三井物産退職後、ゼンショーホールディングスの米国食肉加工子会社CEOに着任し、三井物産時代と合わせて15年間の駐在経験がある。売上げの約半分を米国市場が占める同社社長には適材だった。
勝木社長にとっては畑違いの業界だが「笹田会長ともう一度仕事をしたかったことと、米国の流通や会社経営の経験が役に立つ」。さらに「祖父の代から佐賀で醸造用品卸を営み、兄も日本酒製造と一族が発酵食品に携わってきた。私も遠回りながら仕事にかかわりたいと思った」ことも背中を後押しした。
19年12月、笹田会長が理念やポリシーを戦略化、勝木社長が実務を担当する経営チームが発足した。会長、社長を含む経営陣5人全員が異なるキャリアを歩んできた、言わば異質の経営陣。1年半の間に話し合いに費やした時間は延べ600時間。迎合することなく、自社の成長の足元固めという一つの目的に向かって意見を交換してきた。「昔なら素人集団に何ができるのかと言われそうだが、経営陣はお酢屋出身ではないのに経験で分かる。これが実に面白い。話が進むうちに挑戦すべきことが次々と湧いてくる」(笹田会長)。
経営陣、社員が一人ひとり個性を生かしながら、ワクワク活躍できるベンチャー精神を持ち続ける企業を目指す「W2V3」(ワクワク・ヴィネガー・ベンチャー・ビクトリー)を掲げた。
この経営体質は米国マルカン酢へも良い影響をもたらした。「本社の顔色をうかがうかつての依存体質から脱却して、現地人社長を中心にしたチーム経営に変わり、モチベーション向上につながっている」(勝木社長)という。「W2V3」は組織風土の活性化のために、良い化学変化を巻き起こしている。
伝統企業の挑戦〈前編〉 同族からチーム経営へ 2トップ体制で老舗に新風 マルカン酢 は食品新聞 WEB版(食品新聞社)で公開された投稿です。
