―― どんなお店を出すにせよ、特徴がないものは駄目だということですね。

 金澤 ええ。例えば、ホームセンターといっても、何屋さんか分からないような万屋さんのような店ってありますよね。中にはスーパーマーケットやGMS(総合スーパー)のように、DIY(日曜大工)の商品群も置かなくてはならない店もあるのですが、われわれはDIYとしてどのような特色を出していけばいいのか。

 専門的に仕事をしている人向けに材料の供給会社的な意味合いと、一般向けの意味合いと、ホームセンターにそういう2つの意味合いがあるのだとしたら、それらを両方合わせて一つのホームセンターの規模を大きくするのではなく、品数や売り場を絞り込んで専門店として生き残る方法を考えなければならないと思うんですね。

 ―― 基本的に専門店化を進めていくという考えはずっと生きているわけですね。

 金澤 これも難しい面があって、どんなに特徴を持ったお店であっても、10店舗くらいならいいかもしれませんが、100店舗という規模になると、もう専門店と呼べないような商品群が沢山出てきます。次から次へとお店を出すということは結局、何屋さんか分からなくなるということですから、出店を重ねるとコントロールがつかなくなってしまうわけです。

だから、そうなってはいけないと思い、世代を超えて次の人たちが受け継いでいけるような会社の形にするにはどうしたらいいかということを日々考えています。

 ―― 試行錯誤はこれからも続きますね。

 金澤 ええ。当社には自転車事業を行っている『サイクルオリンピック』、ペット事業を行う『ユアペティア』、DIY・ガーデニング用品の『おうち DEPO』などの専門店があるんですが、結局は自分たちの仕事って何なのか? 自分たちは何屋さんなのかということを忘れてはならないということですね。

ライフコーポレーション・岩崎高治の食品スーパー論「危機を生き抜くライフラインとして」



価格と質の関係は?

 ―― それとオリンピックグループはEDLP(エブリデー・ロープライス=毎日安売り)政策をずっと続けているんですが、今後もEDLPは基本的に継続していくのですか。

 金澤 われわれが考えるEDLPというのは、チラシ広告に頼らずに平常から同一の低価格で販売を続けることで集客力アップを図るという意味なんですね。ですから、米ウォルマートのEDLPとは考え方が少し違うんです。

 ウォルマートの考え方というのは、1カ月間ウォルマートで買い物をして生活をしてください。次の1カ月間はウォルマート以外のところで買い物をして生活してください。すると2カ月後、あなた方にはいくら残りますか。だから、われわれのところに来た方がお得ですよというのが基本的な考えです。

 ご承知の通り、かつて仏カルフールや英テスコが日本から撤退していったように、食品から何から何まで売っていこうというゼネラル・マーチャンダイジング、あるいはウォルマート的な安さを前面に押し出したやり方は日本には合いません。

 ―― これは国民性の違いですか。

 金澤 そうでしょうね。だからといって、消費が停滞していいということでもないので、安さは提供していく必要はあると思いますが、われわれがおこなう食品ビジネスの考え方は、質が良く、グレードが少し高いけど、そのグレードにしては価格は高くない。すなわち、グレードがあるとか、特徴のある商品を投入していくということです。

 ―― 価格と質の関係というのは難しい問題ですね。

 金澤 やはり安さだけを追求するだけでは長続きしない。安くする商品と価値観をきちんと訴える商品の両方を提案していかないといけないと思います。

 これは従業員の働き方にもつながってくる話でして、わたしは商品を安く仕入れて、モノを束ねてドーンと店に陳列するだけのような、従業員はそれだけやっていれば良いというような、ワーカー的な発想で会社をつくりたくないんです。

 せっかくオリンピックグループで働くのであれば、従業員それぞれがお客様の納得する質や価格を考えて、自分たちの責任のもとで売上を上げる努力をするとか、利益を上げる努力をするような会社にしたいと考えているんです。

 本部機能や物流コストの管理については、AI(人工知能)などのシステムを駆使して無駄なコストは徹底的に削減する。その上で、お店にはできるだけ人がいるようにしてあげて、お客様とのふれあいを大事にしたいのです。今はコロナであまり密になってはいけないのですが、やはり、お客様とのふれあいが当社の原点ですから。

 ―― そう考えると、小売りは面白い仕事ですか。

 金澤 面白いというと表現が少し違うかも知れませんが、難しいビジネスであることは間違いありません。難しいからこそ工夫のし甲斐はあるのですが、楽にはなりませんね。でも、こういう仕事についてしまったんだから仕方ないです(笑)。

 ただ一つ言えるのは、本当に当社が「地域にあってよかった」と言われる企業になるために、これからも頑張っていくだけだと思います。

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