沖縄のダンプカー重大事故、あのオービスはダミーだった

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2021年2月11日、沖縄テレビが「男児と女性死亡 ダンプカー猛スピードで反対車線へ 6人死傷」と報じた。以下はそのニュースの一部だ。

 11日午後1時過ぎ、浦添市の国道330号線で伊祖トンネルから走ってきたダンプカーが中央分離帯を乗り越えて反対車線に進入。ダンプカーは国道をまたぐ支柱をなぎ倒しながら車4台と次々と衝突した。
 この事故で白い乗用車に乗っていた3人のうち30代女性と2歳から3歳とみられる男の子が死亡。また3人がけがをしたほかダンプカーを運転していた50代の男性が意識不明の重体となっている。
 目撃者によるとダンプカーは尋常ではないスピードを出していたという。
※2021年2月11日付け沖縄テレビのニュース。https://www.otv.co.jp/newstxt/index.cgi?code=00001920


ニュース映像を見て「あっ!」となった方がおいでだろう。そう、なぎ倒され崩落した頑丈そうな構造物、そこに取りつけられているのは、いわゆるオービスなのだ!

【画像】事故が起きる以前の浦添市、国道330号線のオービス設置状況

あれは三菱電機の高速走行抑止システム(略して高抑)、RS-2000だ。四角いレーダーアンテナと撮影部(カメラ)、発光部(ストロボ)が、無残に崩落している。ふだん運転席から前方上方に見るのとは違い、崩落してクルマを押しつぶしたRS-2000の重量感、巨大さに私は震撼した。 ※正確にはRS-2000のB型なのだが、そこは捨象する。

RS-2000は遅くとも2018年3月末には部品供給、工場修理、裁判対応等を終えた。ただし、点検業者に保守点検をさせつつ稼働しているものもあると、2019年に東京地裁で傍聴した裁判でわかった。だからつまり、2018年3月末以降のRS-2000は以下のいずれかになったわけだ。

1、撤去された。
2、撤去されず稼働している。
3、撤去されずいわゆるダミーとして残されている。

今回崩落した浦添市のあのRS-2000は、稼働していたのか、ダミーだったのか。稼働しているなら、かならず保守点検(特に定期点検)をしているはず。違反者が測定値を否認したとき、有罪にするためには定期点検の成績書が最低限必要だからだ。そこで私は、沖縄県のRS-2000の、過去5年間の保守点検の契約書等を、情報公開条例にもとづき開示請求してみた。

最新の契約は2017年3月末で終了している。定期点検をせずに取り締まりを行うとは考えにくい。あのRS-2000はいわゆるダミーだったようだ。ダミーのせいで尊い命が奪われた! そう考えるとやりきれない気持ちになる。

だがしかし、「オービスがあれば減速する。なければかっ飛ばす」という運転者も一定程度いる。ダミーを残し続けた沖縄県警を一概には責められないと私は思う。また、そもそも高抑は単なるオービスではない。光学式などのセンサーで通過車両の速度をすべて測定し、制限速度をかなり超えた車両に対し電光掲示板で警告する。警告しても速度を落とさない場合、その先の門形構造の上から改めて測定し、写真撮影する。だから高速走行抑止システムというのだ。

現時点では確認できていないが、2021年2月11日当時、電光掲示板での警告はおこなっていたのかもしれない。取り締まりのためのレーダーアンテナとカメラ&ストロボを撤去しては、警告の効果が弱まるので…。

なんにしても、中央分離帯がある場所で対向車線から猛スピードのダンプが突っ込んでくるとは、誰にとっても想定外だったのではないか。合掌するほかない。

〈文=今井亮一〉
交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を発行。