スウェーデン本社がオンラインでワールドプレミアした2日後の3月4日、ボルボは「C40 リチャージ」のプロトタイプ、「C40 デザイン プロトタイプ」を東京・北青山にあるボルボスタジオ青山で公開した。C40 リチャージは同社初のBEV(電気自動車)専用モデルで、2021年9月からベルギーのヘント工場にて生産開始を予定している。

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今回公開された車両は、名前の通りデザインのプロトタイプで、エクステリアデザインのモックアップといったところ。イエテボリのデザインセンターでモデラーが手造りしたものを、そのまま空輸したような状態だ。とはいえエクステリアは、ほぼ量産仕様と変わらないという。ちなみに今回インテリアは公開されておらず、このプロトタイプでも内装は塞がれていた。


●ボルボ C40 デザイン プロトタイプ

C40のプロトタイプは、東京のほかにはイタリア・ミラノとアメリカ・ニューヨークの3ヶ所のみで披露された。ボルボの販売ボリュームを考えれば、ヨーロッパの次に大きな市場となった中国で公開したほうが、ビジネス的には正解のように思える。それでも日本をアジアでのお披露目の場に選んだのは、ボルボが今後の日本市場の成長へ期待している証でもある。



400馬力級のクロスオーバーBEV
C40 リチャージは、すでに欧州で販売開始されているXC40のBEV仕様、“XC40 P8 AWD リチャージ”がベース。共通するシャシーには「CMA」というコンパクトクラス用のモジュラープラットフォームを採用する。外観もフロントは一見XC40と同じように見えるが、フロントグリルやフロントバンパー、ヘッドライトなどはデザインが異なり、よりスマートな印象だ。


●ボルボ C40 デザイン プロトタイプ

ルーフラインはリヤに向かって滑らかな弧を描きながら絞りこまれ、エレガントなシルエットとスポーティなリヤビューを実現している。細かいディテールは、ドライバーチャンネルで上げている動画で確認してもらいたいが、とても洗練されたクロスオーバーBEVといった雰囲気である。ちなみに車名にある「C」は、従来からあったクーペを意味するものではなく、「クロスオーバー」を意味しているそうだ。

パワートレーンは前後に各1基、計2基の電気モーターを搭載した4WD。バッテリー容量が78kWh、航続距離はWLTPで420km、0→100km/h加速は4.9秒という、今回発表された数字を見るかぎり、BEVとしてのメカニズムはXC40 P8 AWD リチャージとまったく共通と考えてよさそうである。そうであれば、最高出力が408馬力、最大トルクは660Nmになると思われる。車両重量はXC40 P8 AWD リチャージより若干軽い2100kg程度だろうか。いずれにせよ、なかなかパワフルな走りが楽しめそうだ。


●こちらはXC40 P8 AWD リチャージのシャシー

進化したインフォテインメントシステムにも注目だ。Googleと共同開発したAndroidオペレーティングシステム採用により、GoogleマップやGoogleプレイなどをスマホと同じように使用できる。Googleアシスタントによる音声操作も可能だというから楽しみだ。最近ではOTAによるソフトウェアアップデートが増えてきているが、C40 リチャージにももちろん搭載される。インフォテインメントシステムだけでなく、車両制御に関するソフトウェアも即時にアップデートが行われるのは、ユーザーとしては嬉しいところである。


サブスクって3ヶ月でも契約できるの?
冒頭で書いたように、21年中には生産が始まるこのC40 リチャージだが、日本へのデリバリーは翌22年となる予定。XC40のほうは、すでにヨーロッパで販売がスタートしているが、日本市場にはまずC40 リチャージが先に導入され、XC40 P8 AWD リチャージはそのあとに上陸する予定だそうだ。

販売方法はほかの市場と同様、日本もオンラインのみになる。ボルボはBEVの販売構成比を25年までに新車販売の50%(日本市場については25年に35%)、30年までには100%とする計画で、今後BEVはオンラインのみで販売すると明言している。つまり、30年にはすべてのモデルがオンライン販売に切り替わるということである。となると現在営業しているボルボディーラーの先行きが不安になるが、ボルボ・カー・ジャパンの広報担当者によれば、既存の販売ネットワークは問題ないようだ。サービス拠点や試乗の拠点として、オンラインと上手く融合した形で継続する予定だそうなので、特に心配する必要はなさそうである。


●ついに、スマホでクルマが契約できてしまう時代に

C40 リチャージの導入計画で特に興味深いのは、100台限定でサブスクリプションサービスが用意される点だ。これは毎月定額を支払うことで、クルマを使用できるものだが、通常は3年間や5年間といった長期契約が一般的。これに対しC40 リチャージでは、3カ月で解約できるという前代未聞のプランになるというから驚きである。「スタイリッシュなBEVのある生活」を一度体験してみたい、という人にはオススメだ。


プレミアムBEV市場は補助金の影響なし?
そして21年から22年にかけては、このC40とXC40のBEV以外にもさまざまなタイプの電動SUV/クロスオーバーが市場に投入される。3月現在で知られるものだけでも、アウディ Q4 eトロンやVW ID.4、メルセデス・ベンツ EQA&間もなく発表と噂のEQB、BMW iX3、ポルシェ マカンEV、シトロエン e-C4、ルノー メガーヌeヴィジョン、国産勢ではマツダ MX-30や日産 アリアなどだ。選択肢の増加がBEV普及をどこまで後押しするのか注目である。


●XC40 P8 AWD リチャージは欧州では6万ユーロで販売されている

しかし、ボルボのラインアップが今後BEV中心になってゆくということは、BEVを取り巻く各国の社会状況や補助金、税制などに、販売が大きく影響されることは否めない。しかし前述の広報担当者によれば、「プレミアムBEV市場は、それらに大きな影響を受けないと考えています。」とのこと。

確かにXC40 P8 AWD リチャージも、ヨーロッパでの価格は6万ユーロ(約775万円)超で、補助金を当てにした価格設定ではない。マスを狙わずにプレミアムBEV市場での覇権獲得にフォーカスしたボルボが、今後どう変わってゆくのか、とても楽しみだ。


<文=竹花寿実 text by Toshimi Takehana 写真=ボルボ/編集部>