【ベランダ菜園におすすめの野菜&ハーブ #10】3月はフェンネルを植えよう!

教えてくれる人

てしま農園 代表 / 龍 慶介さん

自衛隊のパイロット、大手広告出版会社と異色の経歴を経て、10年前に農業の世界へ。“植物のプロとお客様をつなぐ”をコンセプトとした『てしまの苗屋』を立ち上げる。初心者の方に植物を育てることの楽しさを伝えたいと、苗の丁寧な育成はもちろん、購入される方への説明や相談にも積極的に対応。失敗しにくい苗の販売と育成に力を注いでいる。

植物への愛情たっぷりの龍さんに、3月のベランダ菜園におすすめの野菜&ハーブと基本的な知識やアドバイスをいただきました。

てしま農園いよいよ本格始動!

編集部「少しずつ春が近づいている今日この頃ですが、最近のてしま農園さんはいかがでしょうか?」

龍さん「一般のお客様への苗の出荷が始まり、冬の間休んでいたぶん一気に動き出していますよ。コロナの影響もあってか、今年はすでに売り切れる苗もあって、かなり動きは早いですね。地域の運送会社がパンクするほど出荷が忙しくなるのでパートさんに入っていただき、スタッフ人数を倍に増やして万全体制で作業します!」

3月におすすめのハーブは「フェンネル」

編集部「3月におすすめのハーブは、なんですか?」

龍さん「寒さに強いフェンネルです!フェンネルは、寒さだけではなく病気にも強く、日差しと適度な水やりだけでも充分に育つので、比較的育てやすく発芽率が高いのが特徴。セリ科の植物です。

日差しさえあればフェンネルは次々と育つので、初心者の方におすすめですよ。例え枯れたとしても、翌年芽が出てくるくらいですから」

編集部「なるほど!フェンネルはどうやって使うハーブなんですか?」

龍さん「フェンネルシードといって、よくインド料理で口臭消臭に使われています。消臭効果の高さから、生臭さを消すために魚料理に使われることが多いです。もちろん、魚料理じゃなくてもおいしいですよ!

主に茎や根の部分を食べますが、実は種も食べることができます」

フェンネルを上手に育てるには?

最適な環境と植え付け方法

編集部「鉢とプランターでは、どちらが育てやすいですか?」

龍さん「これじゃなきゃいけないという訳ではないですが、丸型のボールプランターがおすすめです。というのも、フェンネルは広がるように育っていくので、丸型が育ち方に合った形なんですね。しかも50cmほどの高さまでに育ちます」

編集部「そんなに高くなるんですか!?」

龍さん「なので、高さが出てきたら4隅に支柱を立て、麻紐で囲いながら倒れないように補強していきます。大きくしたくないときは、カットしてしまいましょう」

水と肥料のやり方

編集部「水やりの注意点はありますか?」

龍さん「特にないですね(笑)。基本的には1日1回、表面が乾いたら水をやります。万が一、水をやりすぎても枯れることはないので、神経質になる必要はありませんよ」

編集部「それは初心者でも安心ですね!肥料はどうですか?」

龍さん「肥料も基本的にはいりません。ただ、育ちが悪くなった、または色が薄くなってきたと感じた場合は、1ヶ月に1回固形のものをひとつまみほどパラっとまいてあげてください。

枯れてしまった場合でも、特別な手入れをしなくても勝手に次の春には芽吹いてきます。なので、自分のなかではフェンネルが春の訪れを知らせてくれる風物詩的な存在なんですよね」

想定されるトラブルと対処法

編集部「病気にも強いと仰っていましたが、何か気を付ける病害虫はありますか?」

龍さん「たまにアゲハ蝶の幼虫がつくことがありますが……本当それくらいです(笑)」

編集部「フェンネル、たくましい~!」

フェンネルの収穫時期と収穫方法は?

編集部「3月に植えると、収穫時期はいつ頃になりますか?収穫方法も教えてください」

龍さん「種で植え付けた場合、大体5月の中旬くらいに収穫できますよ。軸の1本を残して、まわりに生える茎を取って収穫します」

編集部「一株でどれくらい収穫できますか?」

龍さん「一株だけでもかなり取れますね。プランターの大きさにもよりますが、軸を残せば次々と生えてくるので一生困らないかもしれません(笑)」

収穫後の保存方法

編集部「収穫後のおすすめの保存方法はありますか?」

龍さん「湿らせたキッチンペーパーを下に敷いて、冷蔵庫で保管すると10日くらいは軽く保ちます。冷蔵庫の中にいれると乾燥が原因で風味が落ちやすくなるので、適度に湿らせて予防してあげるといいです」

フェンネルをおいしく食べるには?

編集部「フェンネルはメインというより、香り付けや添え物用のハーブですよね」

龍さん「そうですね。やはり、魚料理の添え物というイメージが強いです。ただ、調べると僕も知らないようなフェンネルの魅力を引き出すお料理がたくさんあるので、ぜひ見てみて欲しいなと思います!

ヨーロッパのほうでは、根の部分を使った料理がポピュラーなようです。確かに見た目は玉ねぎに似ているので、煮込み料理が合いそうですよね。また、お伝えした通り種は口臭予防になります。全部を食べ尽くせる植物なので、いろいろな楽しみ方を見つけるのもいいかもしれないです」

編集部「食べておいしい、食べたあとも嬉しい、ってある意味最強かもしれないです!(笑)」

ベランダ菜園を始めるなら、過ごしやすくなった今が最適

ポカポカと暖かな日が少しずつ増え、色とりどりの花が咲き、虫たちも活動を始める3月。ベランダ菜園を再始動するという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、初心者向けの育てやすいフェンネルをご紹介しました。ベランダ菜園をお休みしていた方はもちろん、初めてベランダ菜園をやってみようという方こそトライしやすいハーブなので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

写真・取材・文/鎌上織愛(macaroniライター)