あなたは子どもに対して「聞き下手」になっていませんか?(写真:Fast&Slow/PIXTA)

人間関係が上手な人と下手な人がいます。人間関係が上手な人は仕事もうまく回りますし、親子関係もよくなります。

では、両者の違いはどこにあるのでしょうか? いろいろな要素が考えられますが、非常に大きいのが「話の聞き方」の違いです。ズバリ、人間関係が上手な人と下手な人は話の聞き方がまったく違うのです。そしてそれは、子どもとの会話に如実に表れます。

そこで、まずは下手な聞き方を7つ挙げます。自分が当てはまっていないかチェックしてみてください。

こんな聞き方は要注意!「聞き下手」7つの特徴

●ながら聞き

子どもが話しかけてきたとき、つい、何かしながら話を聞いてしまうことはありませんか?例えば、スマホをいじりながら、テレビを見ながら、パソコンで作業をしながらなどです。これだと、子どもは「パパ、聞いてるの?」と言いたくなります。

●無感動


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子どもが楽しかったことや頑張ったことを一生懸命話しても、「あ、そう」「ふ〜ん」「よかったね」などの簡単な返事で終わってしまったことはありませんか?これだと、子どもは話しがいがないと感じて、だんだん話さなくなります。

●話の腰を折る

例えば、子どもが「休み時間に嵐のダンスを練習していたら先生に叱られた。ほかの子もやってたのに、自分だけ叱られた」と話し始めたとします。それを聞いている途中で「嵐っていいよね。みんな個性的でさ。私は○○君がいちばん好き……」などと話し出して、そのまま自分が話したいことを話し続けてしまう人がいます。これは相手の話を取ってしまう行為であり、「話の腰を折る」ともいいます。これでは、相手は話を聞いてもらえないので不満がたまります。

●結論優先

とくに男性に多いのですが、子どもの話をじっくり聞くことができず、すぐに結果や結論を知りたがる人がいます。そして、「要するに何を言いたいの?」「結局どうなったの?」「結論を言ってよ」「それであなたは、いったいどうしたいの?」などと言ってしまいます。でも、これだと子どもはかえって話しづらくなってしまいます。というのも、大人のように論理的に話せる子は少ないからです。

●否定する

例えば、子どもが「疲れた。宿題やりたくない」と言ったとします。こういうことを聞いて冷静でいられる親は少なく、「わがまま言ってないで。ちゃんとやらなきゃダメ」と言ってしまいがちです。これは相手の気持ちを門前払いして否定する言葉です。これだと、相手は「この人に本音を言えば叱られる」と感じて、本音で話さなくなります。

●詰問する

自分が知りたいことを、根掘り葉掘り聞き出さないと気が済まない人がいます。例えば、「それはいつの話? 誰と誰がいたの? 誰がやり始めたの? その後どうしたの?」などとしつこく聞いてしまう人です。あまりしつこく詰問されると、子どももうんざりして「なんでそんなことまで聞くの?ママには関係ないじゃん」と言いたくなります。

●いきなり励ましとアドバイスをする

例えば、子どもが「もう部活やめたい」と言ったとします。それを聞いた親は大抵やめさせたくないので、「もうすぐレギュラーだよ。今まで頑張ってきたんだから、もうちょっと頑張ってみよう」と励ましたり、「嫌なことがあったら、夕日に向かって『バカヤロー』って言ってごらん。すっきりするよ」などとアドバイスしたりしてしまいます。

もちろん、親はよかれと思って励ましとアドバイスをするのです。でも、話をろくに聞いてもらえないまま、いきなり励ましとアドバイスをされると、子どもは「そんな簡単なことじゃないんだよ。私がどんなに大変か、ちっともわかってくれないね。なんで話を聞いてくれないの?もういいよ」となってしまいます。

「聞き上手」になるための10のポイント

以上、下手な聞き方を7つ挙げました。次に、上手な聞き方を10個挙げます。長年小学校の教員などをしてきた経験から、自信をもっておすすめできる方法です。

●一会入魂

子どもの話を「ながら聞き」するのではなく、その一期一会に魂を込めるくらいの気持ちで臨むことが大切です。そのためには、まず自分がやっていることの手を止めましょう。そして、誠心誠意、耳を傾けて聞きます。子どもと共にいられる「今・ここ」を大切にしましょう。

●目の高さをそろえる

子どもが幼児や小学校低学年だとすると、大人であるあなたはその子の約1.5倍の身長があります。そこで、あなたが1.5倍の身長の人と話をする場面を想像してみてください。相手はものすごく大きな存在で、あなたは見上げながら話をしなければなりませんよね。それがいかに話しにくいことか! ですから、子どもの話を聞くときは、大人は座るなどして子どもと同じ目の高さになってあげることが必要です。すると、子どもはとても話しやすくなりますし、自分の話を大切に聞いてもらえていると感じることもできます。

●感動しながら聞く

子どもが楽しかったことや頑張ったことを一生懸命話してくれたら、「それは面白いね。びっくりしたよ」「そうなんだ!それはよかったね〜」「楽しかったねえ。パパもやってみたかったよ!」というように、感動してあげましょう。すると、子どもは「パパ・ママが驚いてくれた。話してよかった」と感じることができます。

●うなずき

話を聞くときはうなずきながら聞きましょう。すると、話しているほうは「聞いてくれている。わかってもらえている」と感じて話しやすくなります。私も教師時代に、懇談会で保護者に話をするとき、うなずきながら聞いてくれる人がいるととてもうれしかったです。そして、その人に対する信頼感もわいてきました。今も、講演するときにうなずきながら聞いてくれる人がいると、大いに励まされて話しやすくなります。

●相づち

「うん、うん……」「へえ!」「ええ?」「ほんと?」「うそでしょ」「そうかあ……」「そうなんだ……」などの相づちもとても効果的です。こういう相づちを打ってくれると、話しているほうはとても話しやすくなります。

「オウム返し」と「言い換え」も効果的

●オウム返し

話し手の言葉の一部をオウムのように繰り返すことを「オウム返し」と言います。例えば、子どもが「○○で嫌になっちゃう」と言ったら、「嫌になっちゃうよね」と返します。「○○で疲れる」には「疲れるよね」です。「○○で面白かった」と言ったら、「それは面白いね」と返します。これによって、話し手は「聞いてくれてる。共感してくれてる」と感じて話しやすくなります。

●言い換え

「オウム返し」は効果的ですが、こればかりだとワンパターンすぎます。そこで、より高度な「言い換え」も使えるようにしましょう。これは、相手が言いたかったことを少し言い換えて返す方法です。例えば、子どもが「ケガをした1年生の子を保健室に連れて行って、それで体育館に行くのが遅れて、いきなり先生に怒られた」と言ったら、「いいことをしたのに怒られるなんて、嫌だよね。話くらい聞いてほしいね」と返します。

これは、相手が言いたいことの意を汲んで「言い換え」てあげるということです。こう言ってもらえると、相手は「聞いてくれてる。わかってくれている」と感じて、とてもうれしくなります。

●話の中身と表現をほめる

子どもの話の中で、ほめられる部分を見つけてほめてあげましょう。例えば、「頑張ったね」「頑張ってるね」「いいことしたね」「よく気がついたね」などです。また、話の中身だけでなく子どもの話し方自体をほめることも大切です。例えば、「今の説明、とてもわかりやすかったよ」「詳しく話してくれてありがとう。そのときの様子が目に浮かぶようだよ」などです。

●相手が話したいことを質問する

上手に質問してあげることで、子どもが話したかったことを引き出し、話の中身を膨らませてあげることができます。例えば、「○○君はなんでそんなこと言ったんだろう?」「それで○○さんはどうしたの?」「なんで○○したの?」などです。

質問するとき大事なのは、親が聞きたいことよりも子どもが話したいことを優先するということです。親が聞きたいことばかり聞いていると先述の詰問になってしまいます。「詰問」と「質問」の違いを意識していることが必要です。

最も重要なのは「共感」

●共感的に聞く

最後にいちばん大事なことを挙げます。それは共感的に聞くということです。さきほど、子どもが「休み時間に嵐のダンスを練習していたら先生に叱られた。ほかの子もやってたのに、自分だけ叱られた」と話しかけてきた、という事例をご紹介しました。この場合、まずは「自分だけ叱られるなんて嫌だよね。叱るなら平等に叱ってほしいよね」と共感してあげることがいちばん大切です。

そうすれば、子どもは「自分の気持ちがわかってもらえた」と感じて聞き手への信頼感が高まります。そして、「この人には何でも話せる。自分の本音を話していいんだ」となって、続きが話しやすくなりますし、心の内にある不満を全部吐き出すことができます。

先述の「一会入魂」「目の高さをそろえる」「感動しながら聞く」「うなずき」「相づち」「オウム返し」「言い換え」「話の中身と表現をほめる」「相手が話したいことを質問する」などの9つの方法も、すべて、共感的に聞くための方法とも言えます。ですから、今回上手な聞き方を10個挙げましたが、全部覚えているのは難しいという人は、とにかく「共感」というキーワードだけは覚えておいてください。