「トイレの水」そのもの(C)共同通信社

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「正直くさい。トイレみたいな臭いがする」

五輪テスト大会で選手が悲鳴 お台場の海“トイレ臭”の必然

 2020年の東京五輪トライアスロン会場となる東京・港区の「お台場海浜公園」で行われた水泳オープンウオータースイミング(OWS)の五輪テスト大会で、選手から苦情が相次いだ問題。五輪本番では、汚水の流入を防ぐ膜を設置して万全の態勢を整える――と楽観視しているようだが、そんな簡単な話じゃない。

「私もNPOの代表をしていた平成19年に、このお台場でカキを使った大規模な水質浄化実験を提案し、お手伝いをしたことがあります。宮城からいただいてきたカキは、残念ながら1年を待たずして死滅してしまいました。理由の一つに挙げられたのが、毎月何度となく流れ込んでくる未浄化の生活排水によるものです」

 14年9月の港区議会定例会。トライアスロン会場のお台場の水質について、こう指摘していたのが榎本茂議員だった。議事録を引用する。

「東京都下水道局では、平成24年度に簡易処理水と呼ぶ排出基準を満たさない未浄化の下水を180万7200立方メートル、実に東京ドーム15杯分(原文ママ)に相当する莫大な量を運河に放水しております。この放水を実際に目にすると、誰もが驚くのですが、焦げ茶色の汚水が濁流となって放水され、あっという間に運河は黄土色に変わり、高浜水門から運河の外へ流れ出し、レインボーブリッジ、お台場へと順次海の色を変えていきます」

 自身のホームページでも〈山手線エリアの内側のほぼ全域から(トイレや台所などの)汚水が、私たちの街に集められ、雨が降るたび茶色の「簡易処理水」として運河に放水されているのです〉と、写真付きで警鐘を鳴らしていた榎本議員。塩素を混ぜただけの「簡易処理水」が毎月、大量に放水されていたなんて衝撃の事実だ。あらためて榎本議員に話を聞くため、事務所に電話をかけ続けたものの、夏休み中なのか、話し中コールのまま、つながらず。

 プロフィルを確認すると、〈国土交通省「水辺空間の有効利用によるみなとの魅力向上促進に関する研究会」委員〉などを務めたほか、〈港区の海が汚れるメカニズムを国の研究機関と共同で解明〉とある。単なる杞憂ではなく、きちんとした科学的データに基づいて問題点を指摘しているようだ。

 この通りであれば、お台場の海は「トイレみたい」ではなく、「トイレの汚染水そのもの」。テスト大会に参加した選手は「肥溜め」の中を泳がされているような気分だったに違いない。

 とてもじゃないが、競技に集中できるような環境にはなかっただろう。

 水質汚濁や富栄養化などを防ぐための浄化対策としても使われるカキが、1年も持たずに死滅し、雨が降った後は大量の黄土色の汚水が広がる海でなぜ、トライアスロン競技を強行する必要があるのか。一体誰のため、何のための五輪なのか、あらためて考えるべきだ。