iPhone新OSで実現「仕事で使える」3つの機能
「WWDC」を取材した情報をもとに、「iOS 13」のオススメ機能を3つに絞って紹介していく。写真はWWDCの会場、カリフォルニア州サンノゼのサンノゼマッケンナリー会議センター(筆者撮影)
6月3〜7日の5日間にわたり、アメリカのカリフォルニア州サンノゼでアップルの開発者向けイベントである「WWDC」が開催された。
このイベントの基調講演では、iPhoneに搭載されるiOSの新バージョンである「iOS 13」が発表されたほか、iPad向けのOSがiOSから独立し、「iPadOS」になることも明かされた。また、Apple Watchにも、iPhone不要でアプリをインストールできるApp Storeが加わる。次期macOSではiTunesも廃止され、各コンテンツの管理は「Music」「TV」「Podcast」の3アプリに引き継がれることも、大きな話題になった。
OSのパフォーマンス向上や、適用できるiPhoneの幅の広さがアピールされた昨年の「iOS 12」とは異なり、「iOS 13」は新機能のオンパレード。ファイルアプリが刷新されるほか、リマインダーの使い勝手も刷新される。ビジネスに役立つ機能という点では、マップアプリの改善も大きな話題といえそうだ。
今回は連載の“特別編”として、現地で取材した情報をもとに、「iOS 13」のオススメ機能を3つに絞って紹介していきたい。
ファイルの受け渡しが簡単に、外部メモリにも対応
WWDCの基調講演ではiPadOS向けの新機能として、時間を割いて紹介されたが、「iOS 13」でもファイルアプリが刷新される。中でも大きいのは、SDカードなどの外部ストレージに対応したことだ。これまでのファイルアプリは、Lightningに接続した外部ストレージのデータを直接読み取ることができなかった。iPhone内にあるデータのコピーも、ファイルアプリ経由ではできず、手間がかかっていた。
ファイルアプリが刷新され、USBメモリなどを直接読み込めるようになった。写真はiPadOSだが、この機能はiPhoneでも利用可能だ(筆者撮影)
「iOS 13」の新ファイルアプリでは、この問題が解決された。これによって、USBメモリにデータを入れて、目の前にいる人に渡すことが可能になる。軽いデータであれば、iCloudを使ったり、AirDropで送ってもいいが、動画などで容量が大きかったり、ファイルの数が多かったりするときには、外部ストレージを使ったほうが効率的なこともある。PC同士でデータをやり取りする際にはよく使われる手だが、iPhoneでも、それができるようになるというわけだ。
また、iCloud上にフォルダを作ってデータをまとめておき、それを丸ごとほかのユーザーと共有する機能にも対応する。ファイルサーバーを読み込んで表示することもできるため、会社で使っているファイル共有サーバーなどにアクセスすることも可能。同じ部署で共有しているデータを、サッとiPhone本体にコピーして、外出先で使えるようになる。
ZIPの圧縮、解凍ができるようになるのも、ファイルアプリの新機能だ。ビジネスシーンでは、複数のファイルをフォルダにまとめて、ZIPで圧縮してからメールなどで送信することが多いが、iPhoneだと閲覧方法が限られていた。ファイルアプリがこのZIPファイルの解凍に対応するため、ユーザーは別途アプリをインストールする必要がなくなる。圧縮もできるため、iPhoneで作成した書類などを送るときに便利そうだ。
新しいファイルアプリでは、PDFなどのデータのプレビューも表示でき、ファイルを開かなくても、中身がある程度わかるようになる。いずれの機能も、PCでは当たり前のように使われているが、iPhoneではできなかったことばかり。iPhoneをビジネスで活用しているユーザーには、うれしいアップデートといえる。
リマインダーのUIが大きく進化、人へのタグ付けも可能
リマインダーアプリの使い勝手も、大きく進化する。これまでのリマインダーは、例えば「10時に○○さんに電話する」という項目を入力しても、その時間に合わせて通知を出すためには、詳細を開いて時間を設定しなければならなかった。新しいリマインダーでは、これが改善され、入力した文字に基づいて時間を設定できるようになる。
リマインダーは、特定の場所に入ったときに通知が出るような設定もできるが、場所の指定も詳細を開く必要があり、手間がかかっていた。
リマインダーの機能が大きく変わり、入力がより簡単に。人をタグ付けして、メッセージのやり取りをしている際に、通知を表示させることもできる(筆者撮影)
新しいリマインダーではこの入力方法も変わり、リマインダーの項目を入力している際に、「自宅に着いたとき」や「職場に着いたとき」といったボタンが表示されるようになる。このボタンをタップするだけで、場所の指定ができ、操作性が大きく向上する。場所のボタンは、カスタマイズすることも可能だ。
また、リマインダーに人をタグ付けしておくことができるようになった。これまでのリマインダーは、時間や場所をトリガーに、通知を出せたが、ここに人が加わるというわけだ。この新機能のメリットは、メッセージなどのやり取りをしている際に、リマインダーの通知が表示されるところにある。
例えば、上司と次にメッセージした際に、有給休暇の取得を申請したいと思ったら、リマインダーに「有給休暇の取得」と書き、上司をタグ付けしておけばよい。別件で上司からメッセージがきても、有給休暇取得の件が画面上部に表示されるため、確実に用件を思い出せる。
これはあくまで一例で、ほかにもさまざまな利用方法が考えられる。同僚や家族などに、機会があったら何か尋ねようと思っているときに、活用できる機能だ。
ほかにも、リマインダー内に画像を貼り付けられるようになったり、重要なリマインダーにフラッグをつけて管理できたりと、新しいアプリは、かゆいところに手が届くようになった。これまでリマインダーの使いどころがいまいちわからなかった人にも、オススメしたいアプリになりそうだ。
マップがさらに進化、詳細な表示と道路画像にも対応
登場時から徐々に精度を上げ、データベースも充実してきた結果、今では十分実用的になったiOSのマップだが、「iOS 13」では、この機能も大きく進化する。
まず変わるのは、その見た目だ。建物や道路などが、細かく描き込まれるようになり、現在地や目的地をより把握しやすくなる。マップの見やすさが大幅に上がることになり、iOSの標準マップで済ませるユーザーも増えそうだ。
マップアプリは、表示が詳細になるほか、「Collections」機能に対応(筆者撮影)
また、お気に入りの場所を複数まとめて保存しておく、「Collections」という新機能にも対応する。このリストは、ほかのユーザーと共有することも可能だ。これまでも、「お気に入り」として場所を保存しておくことはできたが、Collectionsでは、「仕事中によく行くランチのお店」だったり、「営業先の会社」だったりと、複数のリストを作成できる。共有も可能なため、同僚に場所を教えたいときにも便利な機能といえる。
さらに、新しいマップでは、グーグルマップの「ストリートビュー」に近い機能も利用できるようになる。この機能は「Look Around」と呼ばれ、マップ上から呼び出すことが可能。初めて訪れる場所を事前に調べる実用性の高い使い方ができるのはもちろん、有名な観光地を巡ってみることもできそうだ。
こうした機能を実現するため、アップルは世界各国で測位を行うための車を走らせ、データを収集している。
日本でも多数の目撃情報があり、プライバシー保護のため、アップルもその情報は公開している。新しいマップは、このデータを生かしたものになる。ただし、マップに関しては「iOS 13」より提供が遅くなる。「iOS 13」が秋に配信されるのに対し、新しいマップは2019年中に、まずアメリカで開始される。アメリカ以外の世界各国に広がるのは2020年になり、日本でももう少し待つ必要がありそうだ。
ほかにも、画面全体を黒基調のデザインで表示する「ダークモード」に対応するのは、「iOS 13」の大きなトピックだ。基調講演でも、この機能が真っ先に紹介された。また、Apple IDでサードパーティのウェブサイトにログインできる「Sign In with Apple」も、プライバシーを重視するアップルならではの新機能といえる。
細かな機能では、使用するデータ容量を削減する機能や、プライベートとビジネスでデータを使い分ける機能なども搭載される。こうした機能の数々は、「iOS 13」が実際に配信された後、本連載でもお届けしていきたい。