幻のMac電話ことW.A.L.Tの実機操作動画。中味はPowerBook 100でスタイラス対応
Sonny Dickson

1993年のMacWorld Bostonで発表された、電話とFAXとMacの複合機W.A.L.T(Wizzy Active Lifestyle Telephone)。いわばiPhoneの前身とも言える存在ながら、歴史の闇に消えていった幻のデバイスを実際に操作する映像が公開されています。W.A.L.Tが発表されたMacWorld Bostonは、世界初のPDAといわれるNewton MessagePadが発売されたイベントでもあります。スティーブ・ジョブズ氏が復帰する数年前に、すでにアップル社内にiPhoneの萌芽的な何かが生じていたのかもしれません。

さてW.A.L.Tとは、アップル初の電話(およびFAX機能)搭載のデバイス。それ以外の情報はほぼ未知となっていましたが、実績あるリーカーとして知られるSonny Dickson氏がプロトタイプを入手し、実機を使用するビデオをシェアしています。

過去のデバイスなりに起動時間のかかるWALTですが、実はMac System 6を搭載し、Macの親戚と言うこともできます。タッチスクリーンやFAX機能、電話の発信者ID表示、内蔵アドレス帳やカスタマイズ可能な着メロ、そしてオンラインバンキングといった、90年代前半のデバイスとしては過分なほどの機能を備えていることが披露されています。

その操作はハードウェアボタンおよび接続されたスタイラスにより実行。今の目で見るとレスポンスの緩慢さは厳しいものがありますが、画面に文字を手書きできている様子も確認できます。

Dickson氏のブログでは、W.A.L.Tの内部構造についても解説あり。のちにAT&Tに買収された電話会社BellSouthと共同で設計された本機は、PowerBook 100の部品で作られており、中味もやはりMacでした。ファームウェアを使用するためにハードディスクも搭載されているとのことです。

このプロトタイプには「水の近くでW.A.L.Tを使用しない」「W.A.L.Tを落とさない」といった説明書も添付。たしかに基本的にはPoweBook 100でHDD内蔵のデバイスを濡らしたり落としたりすると、大変なことになりそうです。

アップルは結局はW.A.L.Tを試作品に留め、最終的にはデバイスを発売することはありませんでした(2012年にeBayで8000ドルで落札された個体もありますが)。Dickson氏はブログで他にも多数写真を公開しているので、90年代当時の最先端のデバイスを目で堪能してはいかがでしょう。