プログラミング指示を出します。

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東京オリンピックで湧く2020年より、小学校の授業で「プログラミング学習」が必修化されます。

【画像】どんなロボット作ろう?ソニーが仕掛けるプログラミング学習キット「KOOV」のワークショップ

小学校に通う児童をもつ保護者にとって、プログラミングとは実際にどういったものなのかわからないために、子どもが学習についていけるか不安を抱えている人もいるかもしれません。

今回はソニーのロボット・プログラミング学習キット「KOOV®」を使った「KOOVワークショップ〜ロボット人間編〜」に取材に伺いました。まずは“習うより慣れろ”の精神で、子ども達がワークショップに取り組む姿を見守ります。

ロボットというアートを入口に、プログラミングの世界へ

「KOOV」(クーブ)とは、まだ聞きなれない人も多いかもしれません。

「KOOV」はソニーが手がけているロボット・プログラミング学習キットです。ブロック遊びの要領で、自由に形を作ることができます。「KOOV」は、プログラミングによって簡単に音を出したり、光らせることができるのです。

プログラミングと聞くと難しい知識や技術が必要そうに見えますが、パソコンやタブレットにダウンロードしたアプリを使うことで、子どもでもプログラムを組むことができるのです。

アクアシティお台場にあるソニー・エクスプローラサイエンスでは、このKOOVを使ったプログラミング学習が体験できるワークショップが不定期に開催されています。

ワークショップの対象となるのは小学2年生〜小学6年生。しかし、未就学児でも自宅でブロックを組み合わせて遊ぶこともできるので、最初はあまり年齢にとらわれず触らせてみることが大事かもしれません。

今回のワークショップでは、対象年齢の男女が7人参加していました。ワークショップの進行を担当するのは、表情豊かで親しみやすい『しみてる博士』と、『マナティ研究生』の二人。

今回のワークショップでは、“ロボットを作る”というアートを入口に、プログラミングに触れる事ができます。

しみてる博士が子ども達に「ソニーって知っている? 」と質問をすると、子ども達からはヘッドホンや、ゲーム機の名前が飛び出しました。

音響機器やゲームなど知名度の高いソニーですが、子ども達のために「ソニー・サイエンスプログラム」と呼ばれる活動を行っています。この活動では、科学の力を応用して、より良い社会を作るための力を身につけるきっかけとなる体験を提供しています。

体験型科学館「ソニー・エクスプローラサイエンス」の運営や、ワークショップもこの活動の一環として行われています。

今回のワークショップでは、「しみてる研究所の仕事が忙しいため、家事をしたり、寝る時間がない」というマナティの悩みを、解決するためのロボットを作ります。2人1組でチームとなり、チームで相談してどのようなロボットを作るか決めていきます。

子どもたちが考えたのが「寝ながら掃除が終わっていたり、寝ながら本が読めたりする」ロボット。マナティの悩みを解決するロボットを、果たして作ることができるのでしょうか。

子ども達は初対面同士でも、一緒に相談をしながら、マナティの身体のどこにつけるマシーンを作るか、参加チームで決めていきます。ただのプログラミング学習だけではなく、きちんと周りとのチームワークや協調性も必要なところがこのワークショップの良さと言えそうです。

参加チームはそれぞれ、マナティの右腕、左腕、頭、足とチームで作るパーツを分担していきます。

まずはKOOVの電子パーツの確認です。しみてる博士が「このパーツありますか? 」と次々とパーツを確認していきます。素早く見つけられる子もいれば、一生懸命探す子の姿も。

実際に手に取って、“このブロックで、どうしようかな? “と、ブロックで考えながら作ることで、思考能力が育まれていきます。

パーツとパーツを組み立てて、マナティが身につけた時にもかっこいいようにデザインも考えています。繋ぎにくい箇所は、毛糸の紐なども使ってみたり、創意工夫をしていきます。その姿は、大人だと失われてしまった柔軟性に満ちています。

おおまかなデザインが完成すると、次はいよいよプログラミングに挑戦します。作ったマシーンを動かすためには、チームで分担作業の開始です。

まずは右の人がタブレットを持ち、左の人はタブレットを覗きこみ、その後交代して作業をすすめます。

クーブコア(コンピュータ)と呼ばれる部分に、パーツを繋いでいきます。タブレットのメニューを押すと、接続設定が表示されます。

電子パーツの名前が書いてある参考書を見ながら、“どれを、どこにつないでください”という画面を確認して、クーブコアに指示された穴にケーブルを挿していきます。

アプリの操作は、見た目以上に簡単です。左側からプログラミングブロックを持っていて 右側に置くとプログラミングができる仕組みです。

最初は、わからなくて戸惑った表情を見せた子ども達でしたが、すぐにプログラミングや試行錯誤の要領を得て、どんどん楽しそうな表情に変わっていきました。

ワークショップでは、みんなとても没頭し、組み立てやプログラミングの作業時間を何度か延長してついに完成!最後は中央のスペースに移動し、みんなの前で完成したロボットのプレゼンテーションを行います。

家事が終わったら知らせてくれるブザー、寝ながらマッサージができるマシン。子どもならではの豊かな発想で、KOOVが様々なロボットに変身しています。

最後はしみてる博士の「たくさん挑戦して、たくさん失敗して、経験する機会を大事にしてください」という言葉でワークショップは締めくくられました。

目標はプログラミングだけじゃない!?【インタビュー】

今回は、株式会社ソニー・グローバルエデュケーションのエデュケーション エヴァンジェリストである清水輝大さんと、同社・マーケティングスペシャリストの東郷愛美さんにお話をお伺いしました。

清水さんは、ワークショップではしみてる博士として、コミカルな語り口でプログラミング学習の楽しさを伝えていました。

東郷さんも、マナティ研究員としてワークショップに参加し、子ども達がわからないことがあれば、一緒に創作をしていました。

――2020年に必修となる予定のプログラミング学習ですが、こちらのワークショップはどういった位置づけで取り組んでいらっしゃいますか?

清水輝大さん(以下、清水):あくまで、プログラミング学習への入口として考えています。プログラミングをマスターすることではなくて、思考を体験しながら物事を解決していこうという姿勢です。

今回のワークショップでも、“忙しいマナティが寝たい”という問題をどう解決するかという部分が重要なんです。

論理的に問題を抽象化してカテゴライズしながら、どういう風に問題を乗り越えていこうかという訓練や体験をして貰うのが、このワークショップの目的です。

――プログラミング学習ですが、何歳頃から始めるのが良いのでしょうか?

東郷愛美さん(以下、東郷):今回、付き添いで来られていた5歳の子どもが、お兄ちゃんと一緒に遊べることで興味を持っているようでした。

あまり年齢に縛られることはないのかなと思いました。適正年齢は、ご家庭でのITの接し方で変わるのではないかと思います。

――今回、ワークショップで使用された「KOOV」ですが、どういった仕組みの製品なのでしょうか

清水:この「KOOV」では、ソニーがオリジナルで開発した言語が使われています。英語にも対応していますので、英語版での使い方もできます。

東郷:“もし”というのが「if」で表示させたりもできます。色々な使い方ができます。

清水:「KOOV」はプログラミングを使うので、“プログラミングを学ぶだけのキット”と誤解されがち。

ですが、たとえば未就学児というところにおいては、プログラミングを使わなくてもブロックを組み立てていろんな視点から見るという空間的な認識など、プログラミングじゃない部分にもアプローチできるような商品になっています。

また子ども達は、説明を重視するよりも「まずはやってみる」を重視した方がのみ込みが早いため、今日も、 詳しい説明をできるだけ省いて進行をしました。

――保護者にとって気になるのは、どうやればプログラミング能力が身につくのかという部分だと思うのですが、実際にプログラミング能力を養うにはどうすればよいのでしょうか?

清水:エンジニアとも話すのですが、プログラミングに必要なコーディング力は、やれば身に着くのです。英語が話せるようになるのと同じで、何回も繰り返すことで身に着いていきます。

弊社のエンジニアが重要だと言っているのは、“身の回りで課題を見つける能力”です。課題に挑戦し、試行錯誤する。出来上がった製品が、実際に生活のなかでどう役立つかまで考える。そうじゃないと意味がないです。

プログラミングのスキル能力と、物事に取り組んでいく力をバランスよく伸ばしてあげることが重要だと思います。

東郷:開発者の方が、みんなが子どもみたいに、ワクワクしながら開発に没頭しているかんじですね(笑)

会社の中にクリエーターを育成するという精神があって、みんながそれぞれクリエーターという意識があるんです。自分が何かに興味を持ってワクワクして、それを作って世に出していくというのが共通した意識としてあります。

清水:たとえば家庭の中にも、もっと改善できそうな問題で溢れています。子ども達がプログラミングを学ぶことで、プログラミングやコンピューターができることとできないことを知り、世の中がもっと良くなることができるようになるといいなって思います。

最後に、「ソニー・エクスプローラサイエンス」館長の速見充男さんに、「ソニー・サイエンスプログラム」について、お話をお伺いしました。

――「ソニー・サイエンスプログラム」について、具体的にお聞かせください。

速見充男さん(以下、速見):ソニーの科学教育への取り組みは、創業者である井深大(いぶかまさる)の時代にスタートしています。戦後の日本における教育において、科学の知識を皆さんに届けることもソニーの役目ではないかと考えていました。

会社を設立してから70有余年。科学教育を子どもたちに伝え続けて、2019年で60周年になります。

「ソニー・サイエンスプログラム」では、科学館や、全国各地の拠点で行なっている科学ワークショップなどを通して、科学と技術に触れてもらいながら、学ぶきっかけ作りをしています。個々の拠点以外にも、ワークショップを実施しています。

そのほか、ソニー教育財団では、理科の先生方の支援も行っています。これらを含めて「ソニー・サイエンスプログラム」と呼び、取り組んでいます。

――今後の活動について教えてください。

速見:今の時代の子ども達はデジタルネイティブだったりするので、パソコンやタブレットの扱いに慣れていたりします。そういったツールを活用して、論理的思考を育むプログラミングワークショップの機会を増やしていきたいと思っています。

プログラミング学習や、IT化など新たなテクノロジーに対して、ついていけるのかママたちは不安も大きいと思います。

このようなワークショップを通して、より科学を身近に感じることで、子ども達は自然とITスキルを身に着けて行けそうです。