消えた「爆買い」、それでも家電量販店の売り上げが伸びている

写真拡大

 経済産業省の統計によると、家電大型専門店の販売額は消費税引き上げ(2014年4月)前の駆け込み需要と、そこからの反動減が落ち着いた、同年下期〜2017年上期までの約3年間、横ばいで推移していたが、2017年下期からは緩やかな上昇に転じている(グラフ1=左)。

 家電大型専門店と近しい関係にある機械器具小売業の販売額前年比を、数量要因と価格要因に分解してみると、数量要因によって上昇していることが分かっており、家電製品の販売量は確実に増えてきていたようだ。

 家電大型専門店の販売額前年比を商品別に要因分解してみると(グラフ1=右)、上昇寄与が大きいのは、販売額に占めるウェイトが大きい生活家電と情報家電だが、流れが転じた2017年下期以降に特徴的という意味では、通信家電とAV家電も目を引く。

 2018年上期の最終月である6月の前年比は特に大幅なプラスだった(前年比7.6%)。主役は、生活家電とAV家電。生活家電は、酷暑におけるエアコン需要、AV家電は、4Kまたは8K対応テレビの売上によるものではないかと考えられる。

 さて、昨今は家電大型専門店を訪れると、中国語などの外国語での案内や、外国人観光客向けの各種決済サービスが利用できるレジを目にすることも多いかと思う。昨年からの家電大型専門店の好調な販売額に、インバウンド需要はどれほどの貢献をしているのだろうか。

 訪日外国人の「電気製品(デジタルカメラ、PC、家電等)・時計・フィルムカメラ」の買物額は、2018年第2四半期で約390億円だった(グラフ2=左)。

 グラフを見ると、2016年第2四半期からは比較的落ち着いた推移になっており、2018年第2四半期はむしろ少し低下したことが分かる。これには、同時期にアジアからの訪日外客数が低下した影響が出ているものと思われる

 さらに、家電大型専門店の販売額に対する訪日外国人の関連製品買物額の比率を見てみよう。2018年第2四半期の訪日外国人の「電気製品(デジタルカメラ、PC、家電等)・時計・フィルムカメラ」の買物額は、家電大型専門店の販売額の規模と比較すると、約4%程度に過ぎない(グラフ2=右)。しかし、過去を振り返ると1割近くに達した時期もあった(2015年第2〜第3四半期)。

 それはどういう時期かというと、訪日外国人消費額の多い国・地域の自国の為替レートが円に対して強い時である(グラフ3=左)。2015年頃には、「爆買」という言葉を頻繁に耳にされたと思うが、訪日外国人の電気製品の買物額も急伸し、家電大型専門店の販売額の1割に相当する額になっていた。

 翻って、為替レートは過去2年程比較的安定的に推移しており、2018年上期については、特に訪日外国人の自国通貨に有利になったというわけではない。そのせいか、同時期の訪日外国人の「電気製品(デジタルカメラ、PC、家電等)・時計・フィルムカメラ」の買物額も安定的に推移しており、2018年上期に限ればむしろ低下している。