みなさん、休日はどのように過ごしていますか? 

私は、勉強したり、“リア充”っぽいイベントに行ったりして、有意義に過ごしたいと思っているんですが、ついダラダラしてしまっています…。

どうすればもっといい時間の使い方ができるのでしょうか。精神科医の樺沢紫苑先生に相談してきました。


【樺沢紫苑(かばさわ・しおん)】精神科医、作家。1991年、札幌医科大学医学部卒。インターネットを駆使し、累計40万人以上に、精神医学や心理学、脳科学の知識をわかりやすく発信している。月20冊以上の読書を大学生の頃から30年以上継続している読書家。そのユニークな読書術を紹介した『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版)は15万部突破のベストセラーに

ダラダラするのはいいことだった! アイデアを生むためには必要な時間

ライター・森:
先生、ついダラダラしてしまう習慣って、どうすれば直せますか。

樺沢先生:
みなさん疲れているから、しかたないことですね。

それに、ムダだと思ってるかもしれませんが、ダラダラする時間は大事なんですよ。

ライター・森:
え、そうなんですか?

樺沢先生:
まずひとつは、溜まった疲れをとるため

さらには“何もしてない”ときにも脳は働いていて、役割があるから必要だといえます。

ライター・森:
なるほど。それって、どんなふうに働いているんですか?

樺沢先生:
端的にいうと、情報の整理をしています。

ダラダラしているときの脳内では、「デフォルト・モード・ネットワーク」が活発に働いて、いろんな処理をしているんです。

脳が消費するエネルギーの3分の2以上は、デフォルト・モード・ネットワークに使われていることが最近の研究でわかっています。

何もしていないようで、脳の中では重要な活動が行われている
、ということです。

ライター・森:
その“情報を整理する”というのは、具体的にはどんなところに効いてくるんでしょう。

あんまり効果が感じられないと、やっぱりダラダラする時間はもったいないと思えてしまうんですが…

樺沢先生:
インキュベーションです。



ライター・森:
なんですか、それ?

樺沢先生:
インキュベーションは日本語で「孵化(ふか)」のこと。つまり卵からヒナがかえるように、アイデアが生まれることをいいます。

たとえば会社でブレストをしても、すぐにはいいアイデアは出てきませんよね。でも「出ないなー」と、お風呂に入って力を抜いているときなんかにパッと思いつく。

これはデフォルト・モード・ネットワークが、情報を整理してくれたおかげです。

ライター・森:
たしかに、お風呂で記事のネタを思いつくことあります!

樺沢先生:
そう、ダラダラしているときにいいアイデアは生まれるんです。逆にいうと、そういう余裕のない人にはいい発想はできませんね。

スマホを見ながらのダラダラは一番ダメ。寝る前はペットとたわむれよう

ライター・森:
でも、本当にダラダラするだけでいいんですか? なにかコツとか…

樺沢先生:
そもそもぼーっとする時間を意識的に確保できている人が少ないので、まずはそこからですね。ただし、気をつけるべきことがあります。

みなさん「ダラダラしよう」と思うとき、スマホを触ってません?

ライター・森:
そうですね。ついTwitterとか見ちゃいます。

樺沢先生:
それが一番ダメなダラけ方です。

脳は、キャパシティの90%を視覚情報の処理で使っているといいます。つまり、スマホ、パソコン、ゲーム、テレビなどの視覚情報を酷使する娯楽は、ものすごく脳に負担をかけるということです。

ちょっとした休憩時間にスマホを触ってしまうと、本人は休んでるつもりでも、脳にとっては全く休息にならない。むしろ、疲れがたまるので、マイナスと言えます

ライター・森:
うわあ、そうだったんですか…

樺沢先生:
寝る前のスマホいじりはもっとダメ。

ただでさえ脳に負担がかかるのに加えて、ブルーライトによって睡眠の質が下がってしまいます。すると翌日も疲れが残るので、仕事の質が落ちてしまう。

ライター・森:
悪いことだらけだ…

樺沢先生:
なので、寝る前の1時間は、スマホやパソコンを触るのをやめましょう。

その代わり、視覚以外の五感への刺激が癒やしになります。たとえば音楽を聴くことや、お風呂にゆったりつかるのもいい。

あとは、ペットですね。



ライター・森:
え、ペット?

樺沢先生:
ペットと3分ふれあうだけで、「オキシトシン」という、リラックス効果のある脳内物質が出るんです。

するとストレスが発散して、免疫力も高まり、睡眠も深まります。

ライター・森:
なるほど! 今日から寝る前は、飼っている犬とたわむれることにします。

でも、欲をいうと寝る前の時間もなんとなくもったいなくて、何かのインプットに使いたいと思ってしまうんですが…

樺沢先生:
読書はリラックス効果もあるので、おすすめです。視覚を使いますが、スマホと違って強い光が出ていないので刺激は弱い。

ただ、本の内容を耳で聴くオーディオブックだとよりいいですね。

二度寝はほぼ意味なし。休日は普段とは違うことをするのがおすすめ

ライター・森:
寝る前のダラダラについてはわかったんですが、休日はどうすればいいですか?

つい二度寝してしまいがちなんですが…

樺沢先生:
それはとてももったいない時間の使い方です。

実は、ちょっとした二度寝ってほとんど意味がないんですよ。

90分おきに深い眠りのサイクルがくるので、30分寝たとしても非常に中途半端。疲労回復効果は、睡眠の最初のほうでおこなわれますし。

ライター・森:
ただの時間のムダなんですね…

樺沢先生:
目が覚めるということは、睡眠が足りている可能性が高いんです。それなら、目が覚めたときに、スパッと起きてしまった方がいい。

同じ30分眠るなら、昼の仮眠をするべきでしょう。NASAの研究では、26分間の仮眠で、認知能力が34%、注意力が54%向上したというデータもあります。

ライター・森:
おお、昼寝なら効果があるんですね! じゃあ、おすすめの「休日の過ごし方」はありますか?

樺沢先生:
私がおすすめしているのは、「普段は使ってないところを使う」こと。

たとえばデスクワークをしている人は運動をしたり、数字ばかり眺めている人は美術館でアート鑑賞をしたり。

ライター・森:
結局は、そういうことをたくさん休日にしなきゃいけないんでしょうか。

樺沢先生:
いえ、楽しいことでもストレスは少しずつたまっていくので、のんびりする時間もあったほうがいいです。

「ダラダラすることが時間のムダ」という発想はダメ。クリエイティブな活動のため、積極的にダラダラしましょう

ぼーっと過ごした休み明けはいつも「もっと生産的な時間にできたはず…」と、後悔していましたが、まさかダラダラすることが重要だったとは!

仕事も予定も詰め込まないと不安、というタイプの人も、積極的にだらける時間をつくりましょう! もっといいアイデアが生まれるかも。

〈取材・文=森かおる(@orca_tweet1)/取材・撮影・編集=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉

精神科医 樺沢紫苑@8/3アウトプット大全発売(@kabasawa)さん | Twitter
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