全体の意思疎通は高まってきたが、変化に弱い日本の欠点は変わっていない。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 ベルギー戦は72分に失点を喫し、0-1で敗れたものの、選手たちはチームの守備パフォーマンスに手応えを感じた試合だった。槙野智章は次のように語っている。
 
「ブラジル戦からチームで出た課題を、練習の中でみんなが修正し、それが今日の試合に凝縮されたと思います。ブラジル戦の前半と後半で大きく違ったのは、全員の意思疎通を取れた時に前から行けば、ボールを取れていたこと。その時間帯と、どこからスイッチを入れるのか。オーガナイズ、全体の選手たちの共通意識は(ベルギー戦で)統一できたと思います」
 
 どこからプレッシングのスイッチを入れるのか。ハイプレスと、ロープレス。その使い分けは、本大会でも戦術的なベースになる。それを整理するために、この短期間でかなりの試行錯誤をしたようだ。槙野は回想する。
 
「2日前の練習、雹が降ったときの(プレッシングの)練習を見てもわかるように、あまりうまくいかなかったです。あの夜と、昨日のミーティングでは、選手同士でいろいろ意見を出し、前の選手が“こうしたい”という意見と、後ろの選手が“もっとこうしてほしい”という意見をぶつけ合いながら、今日の試合を迎えました。ブラジル戦ではっきりしなかったところ、前から行くのか下がるのか。今日は僕と吉田選手を中心に声をかけてはっきりできたのは良かったです。
 
 原口選手とかはフィジカル面で優れている選手なので、前から行きたいと思うんですけど、そういう選手に対し、時間帯に応じて、開始10分までは前からプレスに行くとか、そのコントロールをすることも僕たちの大きな仕事でした。ただ、彼の良さは前への推進力なので、できるだけ最終ラインに入らないようにはしていましたけど。
 
 2試合を通じて、自分たちの良さが出るのは、前からプレスをかけて、しっかりと速いスライドをし、蓋をすること。その手応えをつかんだ試合だったと思います」
 
 時間帯に応じて、ハイプレスに行く。あるいはロープレスで構える。いずれの場合も、重要なことは間延びせず、全体が連動してコンパクトさを保つことだ。その点はブラジル戦とベルギー戦で手応えを得ることができた。
 ただし、それでも失点シーンについては課題が残る。
 
 89分良いプレーをしても、一瞬の油断によって失点すれば、せっかく耐え忍んだ努力が無駄になる。そういうギリギリの勝負だ。
 
 72分、左ウイングハーフのナセル・シャドリがボールを持って内へターンした場面。まず、対面した久保裕也が置き去りにされた。そして、隣りでカバーできるはずの右インサイドハーフ、森岡亮太は相手センターハーフのアクセル・ヴィツェルへのバックパスを先読みし、前に出てしまっている。攻撃タイプのMFは、このようなポジションを取りがち。本来ならば中盤のスペースに残り、仮にヴィツェルにパスが出たら、その時点で前に出て寄せるところだが。
 
 後追いになってしまった森岡のプレスバックも間に合わず、シャドリは久保と森岡の間をドリブルで通過した。一方、アンカーの山口蛍は、森岡にカバーを任せたのか、自分は行かず、その場にとどまる。対応を味方に任せた。
 
 そしてスルスルと抜けて行くシャドリに対し、吉田麻也が対応。しかし、ケヴィン・ミララスのサイド流れに引っ張られ、中央にポジションを回復したばかりの吉田は、万全の体勢で立ち向かえず。森岡も久保も間に合わず、山口も行かないため、攻撃優位の1対1がペナルティエリア内で生じてしまった。こうして4人は1人に突破され、吉田を抜いたシャドリから、最後はロメル・ルカクが決めている。