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今日の一杯は東京都新宿区にある「立喰いそば山吹」。「駅そば」と呼ばれることからも分かるように、立ち食いそばの多くは駅徒歩約2分圏内に集まっていることが多い。移動時間に支障なくスピーディに食事がとれるし、何より集客も見込めるからだろう。逆に言えば、少し駅から離れているところで残っている立ち食いそばには、その場所でもわざわざお客が来るくらいの味がある、ということにならないだろうか。

「立喰いそば山吹」は東京メトロ東西線「神楽坂」駅と有楽町線「江戸川橋」駅のちょうど中間、どちらからも歩いて6〜7分のところ、店名にもなっている「山吹町」の交差点近くにある。訪れたのは平日12時半頃。ランチタイム真っ盛りということで、20席ほどの立ち食いカウンターはほぼ埋まっていた。店内に入るとすぐに正面に券売機がある。

○店員の連携でスムーズに着丼

きつねやたぬき、ちくわ天、いか天など、奇をてらったような献立は見当たらない。天丼やカレーライスのセットメニューも各種取りそろえているのも定番。朝から10時までの限定で「朝食セット」というのもあるようだ。ここは「かき揚げそば」(税込400円)を注文してみた。この連載でかき揚げを食べるのはひさしぶりだ。

左手側に厨房、その中ほどに受け渡し口(奥が返却口)があるので、そちらで食券を「そばで」のコールとともに渡す。水をくみつつ1分程度待つ。店の人は3〜4人おり、大きな声で連携を取りながら手早くそばを仕上げていく。活気のある店内だ。客はやはり地元で働くような男性が中心で、もちろん長居はせず、どんどん入れ替わっていく。

○ボリュームある細麺にしっとりかき揚げ

そばは歯ざわりよく、細麺だがボリュームはしっかり。旨味を十二分に感じる、減点ポイントのないつゆ。その上には刻みネギ、ワカメとともに、メインのかき揚げが。タマネギがたっぷり使われていて甘い。揚げ置きで、少ししっとりしているところもこれがそばによく合う。まさに正統派のかき揚げそばといったところか。毎日食べても飽きのこない味だ。

変わったタネを載せているわけでもなく、ダシや麺のこだわりを押し付けることもない。だが、その後も客足が途切れる気配はない。正統派。それこそが、この店が愛され続ける理由なのだろうと思う。

○筆者プロフィール: 高山 洋介(たかやま ようすけ)

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に都内の銭湯を紹介した『東京銭湯』シリーズを制作している。