イタリアやフランスなどで一部の心無い人間から差別的な仕打ちを受けてきたバロテッリ。それだけに、アメリカで起こっていることに黙っていられなかったのだろう。 (C) Getty Images

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 アメリカンフットボール界で巻き起こる人種差別に対する抗議活動は世界中に波及し、ついにはサッカー界にも影響を及ぼした。リーグ・アンのニースに所属するイタリア代表FWマリオ・バロテッリが、インスタグラムで自らの態度を示したのだ。
 
 抗議活動の発端は、昨夏にひとりの選手が起こした行動だった。

 NFLのサンフランシスコ・フォーティナイナーズに所属するコリン・キャパニックが、警察による黒人をはじめとする有色人種に対する暴力行為に、「差別がまかり通る国に敬意は払えない」とし、国歌斉唱時に起立を拒否したのだ。
 
 この行動に、多くの黒人選手が賛同。その運動の波は瞬く間に広がり、ベンチの前で膝をつき、国に不平を訴える選手が相次いだ。
 
 これに対してアメリカのドナルド・トランプ大統領は、今月22日に行なった支持者集会で、「我々の国旗に不敬な態度をとる奴に、NFLチームのオーナーが『あのクソ野郎をすぐにグラウンドからつまみだせ。出ていけ。クビだ』と言ったら最高じゃないか」と、罵り言葉を用いて発言したのだ。
 
 この大統領の発言が火種となり、抗議活動はNFLのみならず、NBAやMLBやMLSなどアメリカ・スポーツ界全体に波及し、さらには欧州にも伝わった。
 
 アメリカで多くの有色人種の選手が差別に対する自らの態度を示したように、バロテッリもSNSを通じて、その姿勢を明らかにした。
 
 9月26日(現地時間)にバロテッリが更新したインスタグラムのつぶやきには、黒人の握り拳の絵文字画像が張り付けられ、ハッシュタグには「#theystillnotunderstanding(彼らは分かっていない)」、「#weproud(俺たちは誇り高い)」、「#theyllfall(彼らは倒れる)」がついていた。いずれも、人種差別やトランプ大統領に対する抗議と見られるものだ。
 
 このイタリア代表FWのインスタグラムを紹介した英紙『デイリー・メール』は、次のように、その絵文字の意味を推測した。
 
「1968年のメキシコシティ・オリンピックで、200メートル走の金メダリストであるトミー・スミスと銅メダリストのジョン・カルロスが、表彰式において黒手袋で覆われた拳を突き上げて不平等を訴えたことに倣ったのかもしれない。『ブラックパワー』の象徴である」
 
 かく言うバロテッリも、これまでに人種差別の被害を受けてきたひとりだ。今年1月21日のバスチア戦でも、相手サポーターからモンキーチャント(猿真似)を繰り返され、その際には「フランスでは人種差別は合法なのか? 恥ずべきことだ」と怒りを露わにしていた。
 
 スポーツ界全体で広がりを見せている、差別やこれを助長するともとれる発言をしたトランプ大統領への抗議活動。バロテッリなど多くの選手が発信しているように、平等な社会が築かれることを祈るばかりだ。