マーリンズ・イチロー【写真:Getty Images】

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認め合った元同僚シーガー、言葉なき称賛「彼に対して戦慄が走った」

 19日(日本時間20日)に行われた古巣マリナーズ戦で今季初本塁打を放ったマーリンズのイチロー外野手。本拠地セーフコ・フィールドで迎えた凱旋試合の9回、最終打席で劇的なアーチを描くと、イチローはスタンディングオベーションの中、ダイヤモンドを回る間に、かつての同僚と無言のコミニケーションがあったという。地元紙「シアトル・タイムズ」が報じている。

 6点を追う9回、先頭打者で打席に入った背番号51が千両役者ぶりを見せた。右腕マーシャルの初球を強振すると、打球は右翼席に飛び込んだ。表情を変えずに、颯爽とダイヤモンドを駆け抜けたイチローだったが、記事によると、三塁ベースを回る時、後輩との無言の会話があったという。

 2011年にマリナーズでメジャーデビューを果たした三塁手、カイル・シーガーだ。

「相手チームのホームランは普通、見たくないよね。でも、あの瞬間は、スペシャルだったんだ。彼に対して戦慄が走ったよ。彼相手にもホームランは打たれたくはない。それでも、彼がこのセーフコで打ってしまった。ここで彼が成し遂げた全ての偉業などを考えれば、まさにスペシャルなワンシーンだったよ。この試合自体よりもずっと大きなものなんだ」

 かつて後輩として背番号51の背中を追いかけたシーガーは、イチローの凱旋弾がメジャー史に残るワンシーンだと表現。そう思うからこそ、偉大な先輩とはベース上で敢えて会話はしなかったという。

「彼を見つめ、彼もまだ僕を見るようだった。そこに言葉はなかった」

「僕は何も言わなかった。彼を見つめる感じで、彼もまた僕を見るようだった。そこに言葉はなかった。でも、すごくクールな瞬間だったんだよ」

 3連戦初戦となった17日の試合前、マリナーズ側がイチローのメジャー通算3000本安打などの偉業を称えるイベントを行った。球団会長、元同僚で現コーチのエドガー・マルティネスら首脳陣に加え、シーガーは選手代表として岩隈久志投手、フェリックス・フェルナンデス投手とともに参加し、赤絨毯の上を颯爽と歩いたイチローを祝福していた。

 そしてこの日、先着2万人の来場者にイチローの特製ボブルヘッド人形がプレゼントされる一戦で、最後に最大の熱狂を与えたレジェンドに対し、シーガーも3打数2安打4打点と大爆発。大先輩への敬意をバットで示した。

 かつて一緒に汗を流したセーフコ・フィールドで、成長した姿を見せたシーガーと健在ぶりを示したイチロー。無言の会話には、お互いを認め合う気持ちもそこにはあったのかもしれない。