あの世でも“仲間外れ”は存在する? 臨死体験者たちが語る「死後の世界」

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「あの世」の存在を信じているにせよ、そうでないにせよ、もし、実際にあったとしたら「あの世」を覗いてみたいという気にはならないだろうか?

死んだあとで私たちの魂がどこに向かうのかは、生きている間には分からないこと。だからこそ、知りたい、覗いてみたいという欲求が生まれるのだろう。

ただ、この世には、死後の世界がどうなっているかを語る人もいる。臨死体験をしたことがある人だったり、あの世とつながる力を持っている人だったり、さまざまだ。

そんな彼らをコラムニストで漫画家の辛酸なめ子さんと涙活プロデューサーの寺井広樹さんが取材し、マンガと文章で一冊の本にまとめた。
『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』(マキノ出版刊)である。
3月30日に東京・紀伊國屋書店新宿本店で開催された本書の発売記念イベントは、いわば「取材後記」のような形で2人が取材した人たちのエピソードを振り返るという内容で、話が盛り上がった。

■5度死んで蘇った男の仰天エピソード



本で読んで「世の中にはとてつもない人がいるものだな」と思ったが、実際に2人のエピソードを聞いて、特に記憶に残った人がいる。

それは、ニューヨーク在住の自然療法医である小林健さんだ。
彼はなんと5回も死んだことがあるという。

1回目は、子どもの頃にダム湖で泳いでいたときに湖底の木に足がはさまり溺死。
2回目は、20歳のときにパラシュートの降下実験に参加したものの、パラシュートが開かず海面に叩きつけられて即死。その時の感覚は「1000℃の尿を漏らしたような感じ」だったそうだ。
3回目は、45歳のときにスキューバダイビングをしていたところ、潜水病で死亡。
4回目は、49歳のときに大雪で凍死。
5回目は、55歳のときに交通事故で川に転落して死亡。

不謹慎な話だが、とにかくよく死ぬ。そして、その度にモナリザに似ている性別の分からない神様に「まだ君が来る時間ではない」と追い返され、母親の「健ちゃん、すき焼き食べないの?」という声が聞こえて、現世に戻ってくるのだそうだ。

辛酸さんはこの小林さんの話を聞いて不安になったことがあったと告白する。
小林さんによれば、あの世にはたくさんの粒子が浮かんでいて、それが集まって人の形になっていたりするそうだ。辛酸さんは、それらは同じ波長の者同士が集まっているのではないかと推測しており、「あの世で仲間外れになったらどうしよう」と心配していたのだ。

一方で寺井さんが驚いたのは、「そこらへんに歩いている中でも、すでに亡くなっている人がいる」というエピソード。先に魂だけが昇天し、肉体が後から、というケースもあるようなのだ。

辛酸さんは小林さんが言っていた「死ぬのは超気持ちいい」という言葉から、自身が無呼吸症に苦しんで死にかけた際に見た幻想について語り、「仏さまのようなものが壁に浮かび上がってきて、お迎えみたいな感じで…」と振り返った。

■「ヒーラーの方に会って心が浄化された」



ほかにも地獄の光景を楽しそうに語る方やオーラの色が見える方の話、さらにはあの世に行ったあとに『この世の歩き方』という本を書きたいという寺井さんの野望などが語られた。

そして、こうした臨死体験者の方々のエピソードから分かったのは、「死後の世界は特別なく、今私たちがどう生きるかが何よりも大切」ということだった。

ラスト10分は質疑応答の時間。「臨死体験者の方々と会ってから、2人に変化や影響された部分はありましたか?」という質問について、辛酸さんは「渦巻くパワーがあったのか、しばらく具合の悪いときがあった」と正直に告白。

逆に寺井さんは「体調が良くなったこともありました」と語った。セドナ在住のヒーラーであるクレッグ・ジュンジュラスさんと30分じっと向き合っていると、体が不思議な感覚に包まれ、自分のネガティブな部分を相手にどんどん送っていると、心が軽くなっていったのだそうだ。この話に辛酸さんも同意し、「浄化されたような気持ちだった」と話した。

最後は「たましいクッキー」争奪じゃんけん大会とサイン会が行われ、盛況のうちにイベントは幕を閉じた。

この『辛酸なめ子と寺井広樹の「あの世の歩き方」』は、丹波哲郎さんの『大霊界』の影響を受けていた寺井さんが、「今ではあの世は近代化しているのでは?」という考えから、辛酸さんを誘ってはじまった企画だという。

いろいろな「あの世」の形が明かされているが、そこにあるメッセージはどれも「今をいかにちゃんと生きるか」ということ。私たちは死があるから生きていることを実感する。「死んだら天国に行けるように、しっかりと生きているか?」そんな問いをつきつけられたような夜だった。
(新刊JP編集部)

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