「おんな城主 直虎」NHK公式ホームページより

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 柴咲コウ(35)主演のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の第6回が12日に放送され、平均視聴率は前回から1.5ポイント下がって14.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となりました。今回は、帰参した亀之丞(三浦春馬)が「やっぱり次郎法師(柴咲コウ)とめおとになりたい」と言い出し、なんだかんだで断念して別に嫁をもらったというお話でした。

 元服して井伊直親となった亀之丞が次郎法師を妻にするには、次郎法師が俗世に戻る「還俗」が必須。ただ、今川への謀反人の息子である亀之丞の帰参と、本領安堵の条件である次郎法師の還俗とをいっぺんに今川家に認めてもらうのはあまりにも虫が良すぎるとあって苦悩する井伊家の人々。

 ここであることを思い付いてしまった直親。死んだことにして、名前を変えてオレの妻になればいいじゃん!名案じゃね?と、軽薄なウェーイ系の若者のように次郎法師に提案します。うーん、浅いですねー。策を立てる才能が絶望的に欠けている井伊家の血をしっかり受け継いでしまっています。

 三浦春馬の見目麗しい若武者ぶりは誰もが認めるところですが、なんだか子供の頃の亀之丞とつながらず、違和感を感じるのも事実。病弱でかわいらしかったあの亀之丞が、なんでこんな空気の読めないバカに育ってしまったんでしょう。まあ、そうじゃなきゃ潜伏先で今まで生き抜いてこれなかったってことだと解釈しましょう。

 なおも次郎法師の説得を続ける直親。「仕方ないとなんでもあきらめて、一生くすぶって生きるのか!」と彼女の心を揺さぶります。「確かに、いつの間にかあきらめる癖が付いていたのかも知れぬ」と、心がぐらつく次郎。その後も井伊の城の前でじっとたたずんで母の顔を見ていたり、いかにも決意を固めた様子。

 ところが、次に直親に会った次郎法師は、「おとわは死ねぬわ」ときっぱり。南渓和尚から聞いたまんじゅうの故事を引き合いに、井伊の血を継ぐ自分は直親に万が一のことがあった場合の備えとして、姿を消すわけにはいかないと告げます。まんじゅうの故事とは、2個のまんじゅうを一度に食べたり使ってしまったりするより、たとえ腐ってしまったとしても1個残しておいたほうが賢いという話。一見すると「なんだそれ?」というエピソードが重大な決断に至る伏線だったという今回の脚本も、なかなか良いです。

 ただ、次郎法師にとってこれは、結婚の道を自ら閉ざしてしまったことにほかなりません。女が、お家の存続を優先させるために自分の幸せを自ら捨てるような言葉を語らなければならないという現実。戦国の世の厳しさと切なさが感じられる名シーンでした。

 その頃今川家では、後に徳川家康となる竹千代(阿部サダヲ)が、人に慣れないと思われていたスズメを飼いならしていました。最初はバカにしていた瀬名(菜々緒)も「うそでしょ……」と絶句。この2人、いずれこのドラマを大いに盛り上げてくれそうです。

 次回予告では、これが動くと誰かが死ぬという今川義元の魔の扇子が再び一振りされる場面がほんの一瞬写りました。これだけで危機感をあおれる演出、見事です。果たして危機に陥るのは誰なのか、第7回で明らかに。

文・中島千代