キリン株式会社で国産最軽量となるアルミ缶が開発され、横浜工場で発表会が先日ありました。同社には飲料メーカーにしては珍しく、容器や段ボールなどの包装資材を研究・開発する技術研究所があります。もともとビール瓶の生産について国内でのパイオニアだったキリンは、容器の研究・開発も行うようになったそうです。

容器を数グラム軽量化することで、コストだけでなく、CO2の大幅な削減が見込まれるといいます。。容器を数グラム軽量にすることで、大幅に支出が抑えられるといいます。そのため素材や製造工程の改良、デザインの工夫などを行い、新パッケージを開発しています。発表会の日は研究所の一部も公開されたので、その様子も一緒にご覧ください。

溝が強くする パッケージの小さな工夫がすごい


今回登場したのはおなじみ、一番搾りのビール缶です。飲み口がある「缶蓋」の部分と、私たちが持つ「缶胴」と呼ばれる部分のアルミの使用が削減されています。



小さな違いなので最初気付かなかったのですが、新しい缶蓋には1周、溝が付けられています。缶蓋と缶胴をつなぐ「巻き締め」という工程で、段差を付けているのだそう。この溝が、薄くなった缶蓋の強度を上げています。



缶胴については、もう見た目じゃ分かりません。製缶過程で使う機材の改良によって、従来より約7%、薄くなっています。

缶胴の製造は、板状のアルミをカップ状に伸ばし、ピストン状に引っ張りながら形作っていきます。すると、伸ばしたチューインガムのように、真ん中が薄くなる現象が起きるのだとか。そのため今までは全体の厚みを増やして、丈夫にしていたんです。今回機材を変えたことで厚みを均一にでき、缶胴全体を薄くすることが可能になりました。アルミ缶はやわらかいため、強い衝撃を受けると破損に繋がる可能性もありますが、厚みを均一にすることで、その可能性を軽減することに繋がりました。



今回の開発で、350ミリリットル缶は14.6グラムから13.8グラムに、500ミリリットル缶は18.1グラムから16.8グラムになりました。この軽量化により製造工程でのCo2排出量が、年間で約29,600トン、削減される見込みだそうです。

商品を包む段ボールは、でっかい折り紙製造機のような機械で開発


さて、発表を聞いた後は、研究所の一部を見せてもらえることになりました。容器のデザインをシミュレーションし、試作する機械や製造ラインと同様の機材があり、試作した容器をテストし、品質のチェックや検証することができます。



こちらは、缶ビールを梱包する段ボール「コーナーカットカートン」をカットする機材です。四隅を落として強度を増加した「コーナーカットカートン」「スマートカットカートン」は、この機材を使い開発されました。機械が移動しながらカットしていくと、あっという間に箱になる形状に! 開発された段ボール容器は、いくつものテストがされ、トラックや鉄道で運ばれる間も、中身をしっかりとガードする梱包容器となります。




「コーナーカットカートン」も、キリン自社開発の製品。コーナーの四隅を落とすことで、強度を上げています。ニューヨーク近代美術館(MoMA)に展示されたこともあるとか。機能美とはよく言ったものです。



同研究所では、他にも国産最軽量の2リットルペットボトルグッドデザイン賞を受賞したクラフトビールのシリーズ「GRAND KIRIN(グランドキリン)」のガラス瓶など、デザイン性も備えた軽量パッケージを続々と開発しています。



キリンの昔の缶を見ると1つのくびれもなく寸胴でした。コンビニの棚などで見かけるジュースやお茶の容器の形は著しく変わっています。商品の良さを伝えるラベルだけでなく、流通に耐えられる強度や、軽量化への取り組み、使いやすさの追求など、技術者の多くの工夫が反映されているんですね。



身近にあるパッケージにも、ちょっと目を留めてみたくなりませんか? 容器の軽さは、その一口を少し美味しくしているかもしれません。
(石水典子)