転職がイコールで“ステップアップ”になれば言うことないですが、今まで自分が培ってきたスキルが活かせないような新天地だったら、とても右上がりとは言えないと思うのです。
では、自分のスキルが最も活かせるシチュエーションは何処なのか? もしかしたら、それは過去に在籍した会社かもしれません。

およそ半分の企業が“出戻り”の受け入れに前向き


12月6日に、ある新たな求人システムがスタートしています。その名は、「ブーメラン」。


なんとこれ、「世界初の“出戻り専用求人システム”」を謳っています。どういうことかと言うと、退職した元社員の再雇用(出戻り)にのみ照準を絞っているらしい。

このようなサービスを立ち上げた経緯について、「ブーメラン」を運営する日本リブライン株式会社(大阪府大阪市)の相原悟郎さんに伺いました。
「人材採用は、企業からすると莫大なお金がかかります。もちろんリスクはあるし、しかも人手不足です。この問題を解消させたいと考え、現在のシステムに行き着きました」(相原さん)

なぜ、人手不足なのか? まず言えるのは、昨今は企業への就業希望者が減少傾向にあるのだそう。
「企業は、常に人材不足で人を欲しがっています。ただ、せっかく社員を1人採用したとしても、結果的にその人材が会社とミスマッチだったということも少なくないです」(相原さん)

ここに、一つのデータがあります。


実は、企業の67%が“出戻り社員”を受け入れたことがあり、51%の企業が“出戻り社員”の再雇用を前向きに考えているそうです。どうやら「即戦力を求めている」という理由で、企業側も出戻りの受け入れにはやぶさかでない模様。(データ出典:出戻り社員(再雇用)実態調2016 エン・ジャパン社)
「企業としては『教育の必要が無い』という理由で、経験のある“出戻り社員”を実は欲しがっているんです」(相原さん)

一方、古巣に戻りたい人材も多い。「やっぱり、前の職場が良かった」と後悔する人もいるでしょう。でも、やっぱり気まずいよなあ……。
「自分で直接電話して『戻りたいです』とは、なかなか言いづらいですよね。でも、“出戻り社員”に対する企業からのニーズもあるんです」(相原さん)
この相思相愛な両者を、「ブーメラン」ではマッチングさせるようです。

“出戻り”を望む人材はモチベーションが違う


では、希望者が古巣への“出戻り”に至るまでの流れについて。まず、“出戻り社員”の受け入れに前向きな企業は月額980円を払って「ブーメラン」 に登録します。一方、求職者側は出戻りたい企業に無料でエントリー 。


企業が出戻りの募集登録をしていたら、希望者の名前が実名ではなくイニシャルで通知されます。
「名前を出す勇気のある人はご自分で直接コンタクトがとれるはずで、ブーメランは使わないと思うんですね。一方、企業側にはイニシャル、年齢、性別、在籍期間等が伝わります。それらのデータを見れば、企業側は『あの人がエントリーしているのかな』とだいたい察することができるのではないでしょうか」(相原さん)

ブーメランが関わるのは、この時点まで。後は、企業側と求職者側が自由な方法でコンタクトを取り合います。なるほど、勝手知ったる間柄の両者。お手伝いするのは、ここまでで十分かもしれません。また、月額980円という低料金を実現するためにも、この辺がいい頃合いでしょう。

でも、一つだけ疑問がある。求職者が「出戻りたい!」と思っていても、その企業が登録していなかったらどうしましょう?
「検索結果で出戻りたい企業が出てこなかったら、『出戻りたい企業が登録されていない』と申請フォームでシステムに送っていただくことができます。それを受け、当社がその企業に『“出戻り”を希望している方がいますよ』と連絡いたします。『どんな人かな?』とその企業が気になったならば、ブーメランに登録するという流れです。それも、たった月額980円ですしね(笑)」(相原さん)

実は、一人の人材を採用させるまでに企業は安くても100万円はかけているのだそう。しかも、その人材と会社の相性がミスマッチだったというケースは少なくない。しかし、月額980円ならば10年登録し続けていても10万円で済みます。
「また、過去に在籍していた人材なので、人となりや会社への適性はお理解し合っています。お互いに納得した上での採用・再入社なのでミスマッチという概念は存在しないと考えています。ミスマッチ率は、基本的に0%ですね」(相原さん)

ところで、ブーメランにエントリーするには“制限”のようなものは設けられていないんですか?
「設けていません。例えば年齢に関して言えば、80歳の方でも大丈夫です。技術職ならば80歳の熟練の方にニーズがあるかもしれませんし、そういう人材を企業側が欲していれば“出戻り”が成立するのではないでしょうか」(相原さん)

なるほど。たしかに、その名の通りに「ブーメラン」ですな。ネーミングが言い得て妙。
「一度辞めた会社に再度戻ってくるという事は、求職者側もそれなりの覚悟を持っています。例えば彼女と彼氏がよりを戻すと、以前より愛が深まりますよね? それと同じと考えていただいて問題ないでしょう」(相原さん)
もちろん、現在もしくはかつて在籍していた会社に“出戻り”を希望していることがバレることはありません。出戻り希望者にコンタクトできるのは、ユーザーが出戻りたい企業のみです。

このシステム、今までにない仕組みなのでビジネス特許の取得も予定されているそうです。
(寺西ジャジューカ)