好きな「ふりかけ」を一つ挙げてみて、といわれると、多くの人は「のりたま」と答えるのではないだろうか。あのたまごと海苔の組み合わせは「のりたま」でしか味わえないものだ。しかし、製造する丸美屋食品によれば、56年の時代の変遷と共に、味を微妙に変化させているという。もしかすると子どもの頃に食べていた「のりたま」と、今食べている「のりたま」とでは、味わいが変わっている可能性がある。果たして、どのような変化があったのか。丸美屋に聞いてみた。

現在は8代目!「のりたま」進化の理由とは?


1960年の誕生以来、いまだにふりかけ市場で1位を獲得し続けている「のりたま」(※「のりたま大袋」インテージSRIふりかけ市場2015年1〜12月アイテムランキング 累計販売金額)。丸美屋の担当者によれば、これまで8回にも渡り、味を進化させ続けてきたという。

「のりたまは時代によって味やバランスを見直しています。時代によって『おいしい』と感じる味が異なるからです。ライフスタイルや味覚の変化に合わせ、減塩や味付けを変更しています。いつの時代も変わらずおいしいと感じていただけるように、今ものりたまは進化しています」

不動の「のりたま」人気の秘訣は、実はこの「時代に合わせた“おいしさ”」を常に追求し続けてきた成果だったようだ。

「のりたま」進化の歴史


では具体的に、どのような変化があったのか。まずはその8代までの変遷をざっと見ていこう。

1960年、初代「のりたま」が誕生する。丸美屋創業者の阿部末吉氏が旅館の朝食をヒントに思いついたのだそうだ。そして2代目1969年には中身が見えるパッケージに。3代目1981年には健康ブームの到来で塩分を大幅削減。4代目1991年は素材を見直し「塩分ひかえめ おいしさアップ」。さらに5代目1996年は新たに「たまごそぼろ」を加えた記念すべき年。6代目2003年には「たまごそぼろ」が30%増量し、食感がアップした。ちなみにパッケージのひよこも4羽に増えている。7代目2010年には、たまごと海苔のバランスが調整される。そして、8代目2015年には、たまご感をアップし、よりまろやかな味わいになり、現在に至る。


「のりたま」といえば、たまごと海苔。それぞれの変遷について、丸美屋の担当者はこう語る。

●たまごの変化
「もっとも大きな進化は5代目でした。のりたまは、たまご顆粒、海苔、胡麻、削り節、抹茶塩の5種類の素材からできていますが、大きめのふっくらした『たまごそぼろ』を新たに加えたことで、6種類となりました。彩りや食感、風味が異なる2種類のたまごを使用することで、よりたまごの風味を感じていただけるようになりました」

●海苔の変化
「海苔については、発売当初から国産の海苔を使用しています。海苔は、産地や収穫時期によって大きく味が異なります。そのため、のりたまが、一年を通してずっと同じ味になるように、全国様々な産地の海苔をブレンドしています」

「のりたま」が、いつ食べても「のりたま」なのは、このような細かい配慮があったのだ。

のりたまのこだわり


知れば知るほど、奥深い「のりたま」。一番のこだわりはどこにあるのだろうか。

「のりたまの一番のこだわりは、“素材のバランス”です。たまごが強くても、海苔が強くてものりたまではありません」

やはり「のりたま」は、たまごと海苔のバランスが命。その絶妙なバランスこそが「のりたま」が「のりたま」たる所以なのである。とはいえ、他の影で支える素材にもちゃんとした意味があるそうだ。

「それぞれの素材にも役割があり、どの素材ものりたまにはなくてはならないものとなっています。旨味やコクの『削り節』、食感や香ばしさの『胡麻』、彩りや味を引き締めてくれる『抹茶塩』、そして、濃厚な『たまご』と風味豊かな『海苔』をバランスよく混ぜ合わせてはじめて、のりたまになります。
現在に至るまでこのバランスを追求し、時代に合った“おいしい”を求めて、のりたまは今後も進化し続けます」

ちなみに「のりたま」には、さらに「こしあん」も入っている。丸美屋によれば、「のりたまを構成する上でなくてはならない素材」だそうで、実は初代から入っているのだそうだ。

時代の変化と共に、そのニーズに合わせて変遷してきた「のりたま」。大きくふっくらとした「たまごそぼろ」が加わった変化には、気づいた人も多いのではないだろうか。しかし、その絶妙なバランスは、家庭では決してつくりだせない、「のりたま」ならではのものである。最近、トレンドのふりかけに浮気していた人は、ぜひ今一度のりたま回帰してみてはいかがだろうか。
(石原亜香利)

取材協力
丸美屋
のりたまシリーズ