新しいものが次々と生まれ、一方で色々なものが終わりを迎えていきます。『笑っていいとも!』は2014年に終了したし、「こち亀」も今年に連載が終了しました。

そして、2015年8月に姿を消した寝台特急「北斗星」。惜しむ方も多かったはずですが、どうやら形を変えて復活するらしい。12月15日にオープンする「Train Hostel 北斗星」(東京都中央区)は、「北斗星」の実車パーツを内装に再利用したホステルであります。
同施設のプレス内覧会が昨日(12月1日)に行われており、記者も見学してきました!

フロントからして、思いっきり北斗星


JR「馬喰町駅」の4番出口から一歩出ると、すぐに姿を現すのはこの光景。


扉を開けると、フロントはこうです。


壁面は、北斗星のデザイン。


看板は、なんか鉄道チックだし。
「看板の『特急 北斗星』という箇所は、列車体の横で表示がスライドする部分をトレースしました。他の部分も、北斗星の色々なところからトレースしたデザインを載せています」
お答えいただいたのは、「株式会社R.project」の担当者さん。同社は、未活用不動産を活かした宿泊施設を運営する企業だそうです。

タオルバーも鏡も北斗星の備品をそのまま活用


では、ホステルを上から順繰りに辿っていきましょう。まず、6階はシャワー/ランドセル室です。




画像は、男性用シャワールームを写したもの。北斗星で使われていたシャワーは持ってこれないので新品ですが、タオルを掛けるバーや鏡は列車の備品が使われています。


「持ってこれないものに関しては新調いたしましたが、持ってこれるものはほとんどそのまま活用しています」(担当者)


ちなみに、この鏡はお手洗いや客室に設置されていたものだそうです。

北斗星の思い出を、ホステルに貼っていきたい!


駅に貼られているポスターが、ホステルの階段の踊り場にも貼られていました。



「このホステルを拠点としてJR東日本沿線だったり、日本の色んなところを旅してほしいという思いが我々にはあります。北斗星は東京と北海道を結ぶと言われていたので、そういった歴史を踏まえました」(担当者)
また、このスペースに貼られるのはポスターのみに限らないようです。
「北斗星で旅をした人は写真がお好きで、色々と撮られている方が多かったです。なので、今後はお客様に提供していただいた景色の写真等を貼っていき、昔の北斗星の思い出をここに蓄積していけたらいいなと考えております。北斗星を知らない人も泊まりに来ると思うので、ここで旅の仕方を知ったり、『昔、そういうのがあったんだ』と感じてもらえる場所にしたいと考えています」(担当者)

北斗星のベッドに寝てみた


さて、5階にやって来ました。こちらは、女性専用のフロアです。


「『ネ』は寝台列車を表していて、『オ』は重さのことを指します」(担当者)

歩を進めると、内装が完全に寝台列車。


ソファベットになっており、夜など眠りたい時は寝かせてベッドにしてください。


通常、ベッドにはマットを敷いて寝ることが想定されていますが、もちろんこのまま寝てもいいです。何しろ、北斗星ではみんなこのまま寝ていたのだから。
「ホステルなのでできるだけ寝る時の快適性を上げるためにマットを敷きますが、『俺はこのままで寝たいよ』という方もいらっしゃると思います。もちろん、そういう方はそのままで寝ていただいて大丈夫です!」(担当者)
試しに記者はこのままの状態で横になってみたのですが、問題なし! 硬めのベッドが、逆に雰囲気あります。というか、ウチのベッドより寝心地いいんじゃないだろうか?

あとベッドとベッドの距離が近いから、寝台列車気分が存分に味わえそうです。


「両側に座った人が『こんにちは』とお話をして仲良くなるとか、そんなコミュニケーションが生まれる場所を目指していきたいと考えています。逆に、このくらいの距離感がイヤな人は普通のホテルに泊まっていただいた方がいいと思います(笑)」(担当者)

また、同フロアに半個室も用意されていました。




窓があって日の光も入るし、非常に贅沢に感じられます。

ちなみに、4階は個室がなく二段ベッドのドミトリーのみの間取り。3階と5階は同じ間取りですが、2〜4階は男女混合フロアです。

というわけで、3階の男女混合フロアへ行ってみましょうか!


ここでは、北斗星B寝台のベッドを活用しています。


ベッドの下には荷物を置けるスペースがあり、輪っかと荷物をチェーンや紐でつなげば盗難防止になります。


これは、広げたり閉じたりして使うはしご。


補助席的な椅子も設置されており、実際に座っても大丈夫です。靴を履く時に使えそう。

みんなの憧れだった「北斗星」の食堂車を再現!


2階は、ラウンジと宿泊スペースが隣接しています。まず宿泊スペースの方へ行くと、活用されていたのはツインデラックスに使われていたベッドでした。



この紐みたいなのは、転落防止のためのものです。シートベルトみたい!


「寝台列車に乗ったことがない人でも、きっと懐かしさを感じてもらえると思います。今、日本の寝台列車はハイテク化が進んでいて、こんな雰囲気の寝台列車はほとんど残ってないと思います」(担当者)

一方、宿泊スペース隣にあるラウンジはこんな感じです。



同施設は自炊式になっており、ここでお客さんに調理等をしてもらいます。


「旅が長くて外食ばかりだと飽きてしまうので、食材をスーパー等で買って調理する方は結構いらっしゃいます。そういう方たち用のキッチンになっており、IHのクッキングヒーターやトースター、カップラーメンを召し上がる方のためのポットややかんを用意しました」(担当者)

それにしても、雰囲気がすこぶる洋食屋チック!


「ここは食堂車の椅子やテーブルをそのまま使っています。もともと、北斗星の食堂車ではフレンチを出しており、人気を博していました。実際にプロの料理人に方が料理を作っていたので『あの列車でフレンチを食べるのが憧れ』という方も多かったんです。ただ、ちょっと値段が高かったので……(苦笑)」(担当者)
「あのテーブルに座りたい!」と憧れていたものの何かしらの理由で実現できなかった方、チャンスですよ!

そして、こちらは「GRAND CHARIOT(グランシャリオ)」という食堂車の名前が表示されたドア。扉を開けると、トイレでした。


「お手洗いのドアに活用しているので、もしかしたらマニアの方には怒られるかもしれないです(苦笑)」(担当者)


また、トイレ内のドアには「北斗星」個室のものが使われていました。
「『便所』と書いてある札は、実際に使われていたものを模しています。あと、鏡は列車仕様です。列車の鏡って変わっていて、三面なんです」(担当者)



旅好きの人と交流によって、“旅の知識”がホステルに蓄積されていく


この「Train Hostel 北斗星」の今後の展望など諸々について、同社スタッフに伺ってみました。

――このホステルには、どういうお客さんが泊まりに来ると考えていますか?
担当者 最初の方は、北斗星が好きな方が多くいらっしゃると思います。私たちは、このホステルが“旅の拠点”になってほしいと考えているので、電車の旅が好きな方にもお越しいただきたいですね。それは、日本の方でも海外の方でもかかわらずです。あと、旅が好きな方と交流することによってスタッフにも旅の情報が溜まっていけば……ということも期待しています。結果、「こんな場所がオススメですよ」という生の声をお伝えし、それをきっかけにお客様が地方へ足を運ぶ……という流れができたらいいなと思っているんです。バックパッカーの方って、旅の行き先を決めてなかったりしますよね? 有名な観光スポット以外にも、日本にはローカルな魅力を持つ場所がたくさんあります。例えば東北の方には、海外からのゲストもそんなに行ってないと思うんです。そのような魅力的なスポットを発信し、それをきっかけに足を運んでもらう……という流れができたら楽しいなと考えています。
――なるほど。ところで、そもそもこのホステルはどのような目的でオープンするんでしょうか?
担当者 もともと、当社は地方で宿泊施設を運営している会社なんですが、地方に来ていただきたくてもガイドブックに載ってないエリアだと情報を得ることが難しいですよね。インターネットといった発信の手段もあるんですが、我々はこういう“場所”を持ち、この拠点から地方の情報など“生の声”をお客様に伝え、足を運ぶきっかけにしていただきたいと思っています。
――ホステルの歴史が長くなればなるほど、“生の声”が溜まっていきますね。
担当者 はい。そういう風になったら面白いなと思い、目指しています(笑)。

もちろん、すでに同施設には問い合わせがガンガン寄せられていました。
担当者 「実際の北斗星に乗りたかったけど乗れなかった」という方からのメールもいただきますし、「昔、すごく好きで泊まっていたので、ぜひ泊まりたいです」という方も多いです。あと「自分が好きだったので子どもにも乗せてあげたい」という方もいらっしゃいました。
――リアルタイムで楽しんでいた人と、乗りたくても間に合わなかった人。2種類のニーズがありそうですね。
担当者 後者の方も、結構いらっしゃいますね。「いつかは……」と考えていたらなくなっちゃってたっていう。
――電車好きな若い方は、たしかに多いです。
担当者 あと、海外に赴任されていた方から「久しぶりに日本に帰省するので、日本らしさを懐かしみたい」というお問い合わせもいただきました。日本食を懐かしむ感覚だと思います。皆さん“思い”があるので、そこまでメールに書いてくださるんです。また、タイ人の方からも「トレインホステルに泊まりたい」というお声をいただきました。

ちなみに、「Train Hostel 北斗星」の料金設定は、ドミトリー内二段ベッドが2,500円〜で、個室は4,000円。定員は78名で、宿泊できるのは中学生以上です。(中学生は保護者同伴が必須)


雰囲気は言うまでもなく最高だし、情報収集できるという要素は“旅の拠点”としてぴったり。あと、個人的に寝台列車に乗ったことがないので色々と新鮮でした。
(寺西ジャジューカ)