佐々木蔵之介「時代劇って自由なんだ」――『超高速!参勤交代 リターンズ』に“やりすぎ”な熱量を注ぐ
コミカルなのに本格的! 斬新な時代劇として老若男女から支持された映画『超高速!参勤交代』。磐城国(いわきのくに)の弱小藩主・内藤政醇(まさあつ)は、超短期間での参勤交代の任務を終えてホッとしたのもつかの間、『超高速!参勤交代 リターンズ』で、さらに無茶な日程で藩に帰らざるを得ないピンチに陥る! 主演の佐々木蔵之介は、再び危機に遭遇しても前向きに走り続ける政醇を熱演。撮影の日々を落ち着いた関西弁で淡々と振り返りながらも、その中に秘めた熱い想いを隠さない。

撮影/平岩 享 取材・文/新田理恵 制作/iD inc.



大ヒットした前作以上に、濃く! 伸びやかに!



――『超高速!参勤交代 リターンズ』は前作の1カ月後という設定で物語が始まります。前作のテンションを引き継いで、すんなり撮影に入ることはできましたか?

はい。実際、撮影時期は2年あいているので、その分、年を取ってるんですけど(笑)、そこは、なんだか体に残ってるものなんですね。いわき弁にしても、各々のキャラクターにしても、みんな前作以上に伸びやかに演じられたんじゃないかなと思います。



――では、いわき弁や所作などの準備に改めて時間をかける必要はなかったんですね。

いわき弁に関しても意外と残ってるもので、方言指導の先生は前作から引き続きの方なんですけど、現場で「もっと濃いめのちょうだい」「じゃあ、これは?」みたいなやり取りをしてましたね。あんまりやりすぎると、音声さんから「もうちょっとマイルドにして。何言ってるかわからない」って言われてましたが(笑)。

――佐々木さんは関西弁でお話されていますが、方言を使い分けるのは得意ですか?

やっぱり、役者にとって、方言っていうのは非常に困難なもので、ハードルは高いんですけど、この作品に関しては、ある意味、方言がひとつの主役だと思ってます。だから、僕は徹底してやりたいと思ってましたね。この作品のキャラクター造詣の中で、すごく武器になるものだと思ってます。




――前作に引き続き、アクションシーンも多いですし、今回もとにかく走ります!

そうですね。前作の『超高速!参勤交代』出演の話が来たときに、「ふざけたタイトルだな」と思ったんですよ(笑)。ただ、パンチはありますよね。それで、シナリオを読んだらめちゃくちゃ面白かった。それと同じで、お客さんもふざけたタイトルだなと思って見てみたら、「意外に時代劇だよな」「意外にしっかりチャンバラやってるな」って感じたと思うんです。

――本格的な立ち回りを披露してらっしゃいますよね。

それが、若い人にも時代劇の敷居が下がり間口を広げて、時代劇ファンの人からも非常に評価してもらえた部分だったので、どうしても外せない。だから、チャンバラを「もっとやろうぜ」とは思ってやってましたね。実際、殺陣師の方も、時代劇に携わっていても、ここまで立ち回りをやらせてくれる作品はない、非常に嬉しいとおっしゃってました。



――命のやり取りがすごく伝わる立ち回りだと思いました。演じ手として、あの緊迫感を出す上でこだわったところは?

こだわったシーンは、政醇が相手と斬り合いをしているときに、お咲(深田恭子)が「私のこと、どう思ってるの?」って迫ってくるところ。そこをシナリオで読んだとき、「これ、やるんか…」って思ったわけです。

――なるほど。

でも、これを成立させるのが『超高速!参勤交代 リターンズ』なんじゃないかと。ここは「無理」って言うんじゃなく、エンターテインメントとして成立させたら、非常に上質な時代劇エンターテインメントができあがると思ったんです。セリフと動きのタイミングなど、結構綿密に打ち合わせをして、この作品ならではの立ち回りにできたのではないかと思っています。

――後ろでふたりを見ている伊原剛志さん(雲隠段蔵役)の視線が面白かったです。

そうなるやろ、と(笑)。そんな視線でしたね。「んなアホな」ってことばっかりですから。でも、あのシーンは頑張った甲斐があったかなって思っています。



――しかし、あの場面のお咲さんの行動は、女性目線で見ても「ないわ…」と思うのですが(笑)、実際ああいう風に自分の気持ちに正直すぎる女性はかわいいと思いますか?

深田恭子だからOKですよね(笑)。

――男性としては、仕事に一生懸命の場面じゃないですか。

客観的に見て「ないわ」と思っても、実際、大なり小なり、女性の方にはああいう気持ちもあるんでしょうね。そこはチャーミングですし、あのシーンは僕はいいな、と思ってます。

――時代劇も、それを演じられる俳優さんも減ってきたと言われています。そんな中、このようなエンターテインメント性の強い時代劇で主役を張ることについて、俳優として何か感じるものはありますか?

演じる立場としても、時代劇ってこれまで所作であるとか、衣装であるとか、言葉であるとか、ちょっと取っつきにくいところはありました。それは、お客さんもそうだと思うんですよね。古くさいんじゃないかとか、説教くさいんじゃないかとか。でも、私自身、この内藤政醇という役と出会ったことで、それが大きく変わりました。



――どんな変化があったんですか?

時代劇でも弾けられるし、伸びやかにできるんだ、と。余計なものを大きく取っ払ってくれて、「時代劇って自由なんだ」って思わせてくれた作品でもあります。日本人だからこそ笑える作品かもしれないですね。ふんどしで走っとったら、なんか笑ってしまいます(笑)。

――2年ぶりに政醇を演じてみて、新しい発見はありましたか?

前回で終わりだと思っていて、誰ひとり続編をやるとか思ってなかったので(笑)、「次やりましょ」って言われて、「止めときましょ」って言ったんですよ。「調子こいてやったらアカン」って(笑)。でも、一度やりきったと思ったものを、もういっぺんやるって決まったときに、「やりすぎるしかない」と思いました。過剰に、過激に。それしか手はないと。結果が、これくらいのポスターの熱量に(笑)。



もう盛りだくさんですわ。「これにサインしてくれ」って言われても、どこにしたらいいかわからへん(笑)。とりあえずやりすぎるくらいやってやろう、と。陣内(孝則)さんなんて、前回メイクが濃いって言われていたんですが、今回、メイクさんと話をして「さらに濃くしよう」という決断に至ったらしいです(笑)。



いわき、熊本…映画が繋いだ被災地との縁



――『超高速!参勤交代 リターンズ』で特に注目してほしいところは?

今回果たせたなと思うことは、(東日本大震災の影響で)前回できなかった、いわきロケができたことです。その中でも主に注目してほしいシーンがふたつあって、ひとつは、いわき市民150名と一緒に“じゃんがら念仏踊り”を踊るシーン。これは鎮魂の踊りでもあるので、それを地元の方と一緒に撮影することができて、皆さんが「殿、お帰り」という風に迎えてくれた。それは映画がクランクインして間もない時期の撮影だったので、背中を押していただいた気持ちがして、嬉しかったです。



――もうひとつは?

小浜海岸で走るところです。前作では、ロケハンはしていたけど、まだ撮れる状況ではなかった。今回は復興して、入江のところで撮影ができるようになったので、そこを走ったのは感慨深いものがありました。「ポレポレいわき」という地元の小さい映画館があるんですが、前作の観客動員がそこで全国3番目を記録したんですよ。それでホントに、皆さんが「リターンズ」させてくれたという思いがあって、心から嬉しく思っています。

――政醇たちには数々のピンチが訪れますが、俳優・佐々木蔵之介さんの危機に直面したときの乗り越え方は?

笑い過ごす。ぎりぎりになるよりも、逆に「これ、わろてまうな」「ありえへんな」って、笑いに転化する。そういう風にしないと、文句を言っていても無理なので。ちょっと俯瞰で自分を見るところはありますね。与えられたピンチは、見込みがあるから与えられたものだと思ったほうがいいでしょう。



――参勤交代にかけて、旅行好きの佐々木さんが今、日本で歩いてみたい地域は?

今は熊本がいいなと思ってます。僕、震災から1カ月後ぐらいの時期に、熊本の八千代座というところへ舞台公演に行ったんです。明治時代の芝居小屋を伝える、ほんっとにいい劇場で。そこでの芝居は前々から決まっていて、震災の被害もそれほどなかったんですけど、そのときに、ここで新作を上映できたらいいなと思っていて。それが先日(8月15日)実現しました。

――それは感慨深いですね。

明治時代に作られた芝居小屋で時代劇をかけられて、すごく良かったんです。地域の人がみんな近くて、のんびりしていて。温泉もあって、馬刺しもおいしかったし、熊本はいいですよね。今作では、いわきでロケができて、熊本でも映画を上映できて、みんな楽しんでくださってすごく嬉しかったです。

――この作品の、ピンチのときでも前向きに乗り越えるというスピリットが、図らずも被災地との気持ちを繋いでいる感じがします。

そうですね。このご縁を大切にしていかなければ。



【プロフィール】
佐々木蔵之介(ささき・くらのすけ)/1968年2月4日生まれ。京都府出身。O型。大学在学中から劇団で活躍し、2000年NHK連続テレビ小説『オードリー』で注目される。以降、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。05年にはプロデュースを務める劇団ユニット「Team申」を立ち上げる。主な映画出演作は、『間宮兄弟』(06)、『アフタースクール』(08)、『岳 -ガク-』(11)、『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋-』(16)など。15年、『超高速!参勤交代』で第38回日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。待機作に『破門 ふたりのヤクビョーガミ』『花戦さ』『3月のライオン』(17)がある。


『超高速!参勤交代 リターンズ』
大ヒット上映中!
http://www.cho-sankin.jp/


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・当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから9月20日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただきます。9月23日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。

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