問題作連発の脚本家・遊川和彦の新作「はじめまして、愛しています」スタート。今回も心配だ!

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今年もはじまるよ、遊川和彦ドラマ!


7月14日より、遊川和彦脚本の新作ドラマ『はじめまして、愛しています』(テレビ朝日系・木曜21:00〜)が放送開始される。


多くのメディアで、視聴率40%を記録した大ヒットドラマ『家政婦のミタ』の遊川和彦の脚本ドラマに、尾野真千子と江口洋介が夫婦役で……的な紹介のされ方をしているが、ちょっと待て!

確かに『家政婦のミタ』は社会現象レベルの大ヒットをしたけど、その後に、まあまあやらかしてしまった『純と愛』や『○○妻』『偽装の夫婦』があったことを忘れたとは言わせないぞ!

とりあえず、『はじめまして、愛しています』に関しては放送前ということもあり、あまり情報がないので、賛否両論を巻き起こしまくり、良くも悪くも話題となった近年の遊川和彦ドラマを振り返りつつ、新作の展開を予想してみたいと思う。

「なんじゃこの最終回は!」三連発


近年の遊川は、ドラマの「お約束」に対して懐疑的な姿勢を貫いているように感じる。見る者を決して安心させてくれないのだ。

『家政婦のミタ』の大ヒット直後に鳴り物入りではじまったNHKの連続テレビ小説『純と愛』では、がんばる主人公が周囲の人たちの協力を得ていき、目的を達成して何だかんだでハッピーになる……という朝ドラのお約束をぶち壊した。

主人公の純が、がんばればがんばるほど空回りして周囲から嫌われていく。最終目標だった「夢の国」のようなホテルもオープンできない。数少ない理解者である夫も突然ぶっ倒れて植物人間状態に。しかも、そのまま目覚めずに最終回という、まさかのバッドエンドで朝ドラファンにトラウマものの衝撃を与えたのだ。

『○○妻』では、わがままな夫を完璧にフォローする妻・ひかりが主人公。どことなく『家政婦のミタ』を思わせるキャラクターに、「遊川さん、『ミタ』の頃に戻ってきてくれたんだ!」と思いきや、最終回直前にひかりが何の伏線もなく登場した不良高校生たちに暴行を受けて、やっぱり植物人間状態に。さらに最終回で死亡するという、衝撃的過ぎるバッドエンドを迎えた。

『偽装の夫婦』は、ノンケの女がいつの間にかゲイになっていた元カレと偽装結婚をするというストーリー。かなり飛び道具な設定ではあったが、放送開始前のインタビューで遊川が「今回は最終回を見ても不愉快な思いはしませんから」と語っていたので、さすがにとんでもない展開にはならないだろう……と思っていたのだが、やっぱり最終回では思いっきりモヤモヤさせられた。

ノンケの女がレズビアン転向して彼女を作り、ゲイの元カレも別で彼氏を作り、ゲイ・レズビアン2組のカップルが幸せに暮らしていくのかと思いきや、最終回ではそれぞれのパートナーを捨てて、結局男女カップルで結婚をすると決断。視聴者を総ズッコケさせたのだ。

「最終回ではきっと、みんな幸せになるはず」という視聴者たちの期待を、次々に裏切ってきた遊川。もちろん、「なんじゃこの最終回は!」と怒ってしまうくらい、ドラマに夢中になっていたということだが……。

まあ、極端な設定や展開で視聴者の感情を揺さぶるという手法は、昔から遊川の得意とするものだった。

だって『十年愛』で、故障によって高速回転するメリーゴーランドから主人公の夫が吹っ飛ばされて死ぬという、日本のドラマ史上に残る珍・死亡シーンを書いた人なんだもん!

『はじめまして、愛しています』はどうなるのか……


それにしても、どうして近年の遊川ドラマはここまで最終回でモヤモヤっとした感情を喚起させるのか?

そこには、遊川和彦が2014年に結婚したことが影響しているのではないかと思うのだ。

『純と愛』以降のドラマはすべて「夫婦」「家族」がテーマとなっているが、遊川自身が「結婚して家族ができてすごく幸せ!」という気持ちと「結婚すること、家族と一緒にいることが本当に幸せなのか?」という気持ちの迫間で揺れ動いているのではないだろうか。

そう考えると、主人公が幸せになりそうでならない展開や、すべてをぶっ壊す最終回でのどんでん返しも、何とな〜く理解ができる。

そして、今回の『はじめまして、愛しています』も、尾野真千子と江口洋介が演じる子どものいない夫婦が、親に捨てられた5歳の男の子と出会い、特別養子縁組を決意する……というストーリー。またもや夫婦&家族の物語なのだ!

いかにも泣けそうな設定だし、最終回では「何だかんだあったけど、3人が本当の家族になれたね! めでたしめでたし」的なハッピーエンドを迎えてくれそうな話なんだけど……。

遊川和彦が、そうそう素直な展開を見せてくれるとは思えない。ドキドキしながら今夜の初回放送を待とう!
(文とイラスト/北村ヂン)