チェキが誕生したのは、今から17年前。実は筆者は初代チェキを持っています。当時はまだフィルムが主流だったので、プリントの味わいを楽しむというより、人と違うカメラを持っていたいという気持ちの方が大きかった気がします。その後、時代はデジタルに変わりましたが、「あの何ともいえないプリントの風合いがいいよね」とチェキはじわじわと人気を集め、いろいろなモデルが登場。近ごろはハローキティやリラックマ型のかわいいチェキも。初代のチェキを知る筆者からすると、チェキはいつの間にか女子が持つカメラになった感があります。

ところが、新型チェキ「instax mini70」は、ちょっと違う。かわいいけれどちょっとカッコイイ、これまでにないタイプで、脱女子カメを意識しているのではないでしょうか。

従来のチェキよりややコンパクトな「instax mini70」。カラーはメタリックで光沢感のあるホワイト・イエロー・ブルーの3色。男女問わず使える“かわいくてコッコイイ”デザインに

では、実際に撮ってみた感じはどうでしょう? 「instax mini70」を持って、ワンデイトリップに出かけてみました!

かわいくて、カッコイイ! 脱女子カメを意識した新型チェキ

手にした瞬間思ったのは、「あれ?小さくない?」。チェキといえば、専用のフィルムを使うため、コンデジと比べて大きくなってしまうのは仕方がないこと。でも、その大きさを最小限に抑える努力をしたに違いないと思うほど、これまでのチェキシリーズと比較してコンパクトになっています。これは、手が小さい筆者にはうれしい! 加えて、ボディカラーも筆者の好きな黄色が(笑)! ほかの2色は白と青。女子をターゲットにしているカメラなら、ここに赤とピンクもあってもよさそう……。

本体サイズは113.7×99.2×53.2mmと従来のチェキシリーズより若干小さめ。レンズ横に自撮りミラーが設置されているのが、「instax mini70」の特徴の1つ

そう、新型チェキ「instax mini70」は、従来のチェキシリーズよりコンパクトでかわいいんだけど、シンプルなデザインがカッコイイ、これまでにないタイプのチェキ。どうやら、今回のターゲットは20代の男女のよう。というのは、見た目だけでなく、機能としても、スマホ世代を意識した自撮りモードがある点などからも感じられます。

操作ボタンは、電源、MODE、セルフタイマー、自撮りの4つだけ。MODEには、マクロ撮影、遠景撮影、フラッシュ、ハイキーの4つの機能が

本体底面には三脚口を装備。夜間撮影、マクロ撮影のときに使用

本体底面には、三脚口が。夜間撮影、マクロ撮影のときに使用

本体横にあるストラップ口。別売りでオリジナルストラップがある

本体横にあるストラップ口。別売りでオリジナルストラップがある

操作は簡単。MODEセレクトも、マクロ、遠景、フラッシュあり/なし、ハイキーの4つのみ。例えば、これまでに登場したチェキシリーズ「instax mini 90ネオクラシック」のようなアナログ向けの操作はなし(以前、この製品のレビューを担当し苦労した経験あり)。ちょっと凝った作品撮り用カメラというよりは、いつでも気軽に撮影できる記録用、またはその場の空気感を楽しむためのカメラという印象です。

では、実際、どんな写真が撮れたか紹介しましょう。

モードに合わせてシャッターを切るだけ。なのに意外とカッコよく撮れる

「instax mini70」を持って、ワンデイトリップに出かけてみました。まずは、三浦海岸の冬の風物詩、“大根カーテン”を見にドライブ! 本体サイズ113.7×99.2×53.2mmのinstax mini70。本体質量も約280gなので、さほどかさばる&重いという感じはしません。ただ、チェキには専用のフィルムが必要なので(しかも1パック10枚しかなく、気づくとあっという間に終わってしまう)、予備を持って行くことをおすすめします。

フィルムはカートリッジ式で、本体裏のカバーを開けてセット。フィルム側にある黄色の印と本体にある黄色の印を合わせて、カバーを閉めカチッという音が聞こえたらセット完了。電源を入れシャッターを空押しすると、まずフィルム保護用の黒いシートが出てきます。すると、本体裏にあるフィルム残数を確認できるカウンターが「10」を表示。ここからは、シャッターを押すごとに数字が減る仕組みに。最後の1枚になっても、特にお知らせはしてくれないので、シャッターチャンスのときに「あ〜、フィルムが終わっていた〜!」なんてことがないように、まめにチェックしておいたほうがいいでしょう。

では、撮影開始!

まずは、MODE設定はせず、ノーマルの状態で海と大根を撮影してみました。シャッターを切ると同時に、びゅい〜んという音。しばらくすると、フィルム排出口からプリントが出てきます。が、まだ真っ白。ポラロイド時代を知る筆者は、つい手ですりすりして写真を温めようとしてしまうが、そんなことをしなくてもすぐに絵が出てきます。

三浦海岸にて「instax mini70」を持って、三浦海岸へドライブ。三浦海岸の冬の風物詩、大根干し!

三浦海岸にて「instax mini70」を持って、三浦海岸へドライブ。三浦海岸の冬の風物詩、大根干し!

プリントアウト。シャッターを切ると、びゅい〜んという音とともに、プリンター口から写真が出てきます

プリントアウト。シャッターを切ると、びゅい〜んという音とともに、プリンター口から写真が出てきます

撮った写真は以下のような感じ(天気は曇り)。大根の数の多さを見せたいと撮ったヨコ写真は、肉眼で見た“大根カーテン”ほどの迫力が出ず、いまひとつ。そこでタテにしてもう少し寄ってみました。うん、この方が雰囲気は伝わる。では、もっと寄ったら? MODEボタンをマクロに設定して撮影してみました。うんうん、この方がいい!

作例1(写真左)=ノーマル撮影、作例2(写真右)=ノーマル撮影

作例1(写真左)=ノーマル撮影、作例2(写真右)=ノーマル撮影

作例3=マクロモード筆者はこれがお気に入り

どうやら実際に見る景色とチェキのフィルムにマッチする景色というのは違うよう。今回は肉眼では全体のようすが伝わる方が引きの風景の方がよかったのです、チェキでは大根に思いっきり寄った方がいい感じに。

では、どういう風景が引きに合うか。あれこれ撮ってみた中で、一番いいなと思ったのがこれ。遠景撮影モードで佐島の海を撮影してみました。前方に岩があるだけで、あとはどこまでも続く広い海。でも、海に焦点を当てるだけだと絵的におもしろくない。そこで、空に焦点を当ててみた。すると、海だけの絵よりもさらに広々とした風景が広がった。欲を言えば、もう少し空が青いか、夕日だったらな。

遠景撮影モードで、佐島の海を撮影。海よりも空を大きく見せて、広々とした景色を意識してみた

遠景撮影モードで佐島の海を撮影。海よりも空を大きく見せて、広々とした景色を意識してみました

高性能「背景きれいフラッシュ」で、暗い室内や夜景でも背景をキレイに撮影

室内の撮影はどうでしょう? 冬の古民家。外は晴れているのに、家の中は昼間なのにやや暗め。でも、窓枠がいい感じに額の役目を果たしていていい感じ。チェキで撮ったらどんな仕上がりになるでしょう?

作例5(写真左)=ノーマル撮影、作例6(写真右)=ノーマル撮影室内から窓の景色を撮影。実際の室内はもう少し明るかったのですが、なかなか味のある1枚に。個人的にはこういう写真がチェキには合っている気がします

次に夜の室内を撮影。部屋の明るさは特に暗いわけではないが、このくらいの明るさだと従来のチェキではいまいちいい写真に仕上がらなかった。

ところが今回は、その欠点を解消すべく「背景きれいフラッシュ」という新機能が搭載。「背景きれいフラッシュ」は、特別なボタン操作をしなくても、まわりの明るさに合わせて最適なシャッタースピードやフラッシュ光量に自動的に設定されるという「instax mini70」のウリ機能の1つ。初めてチェキを使う人には、そのすごさが多分わからないと思いますが、初代チェキを知る筆者からすれば、その進化は感動! 実際、初代チェキで撮ったものと比べたいところだが、残念ながら筆者が持っていた初代チェキは今はもう使えず……。ただ、筆者の記憶として残っているのは、初期のチェキは暗いところの撮影はまったくと言っていいほどダメ。目の前にある被写体は明るく写すことはできても、その背景はほとんどまっくらという状態でした。

でも、「背景きれいフラッシュ」があれば問題なし。暗い室内も、お地蔵さんにライトアップというシュールなイルミネーション(笑)もクリアに撮ることができました。

作例7(写真左)=ノーマル撮影/室内フラッシュ、作例8(写真右)=ノーマル撮影/夜間「instax mini70」のウリのひとつである「背景きれいフラッシュ」の実力を実感。従来のチェキはフラッシュ撮影がいまひとつだったので、この進化は大きい!

次ページでは、自分撮り、マクロ撮影に挑戦!

う〜ん、難しい。視差で手こずるマクロ撮影

日が変わって、今度は紅葉を撮影。12月上旬に鎌倉を訪れたので、ちょうど紅葉が見頃! 12月上旬の鎌倉・円覚寺は紅葉が見事です。ハイキーでやや飛ばして撮影。ハイキーは通常、美白目的で使うようだが、風景撮影にもよいかも。

作例9(写真左)=ハイキーモード、作例10(写真右)=ノーマル撮影夕日の照らされたもみじがキラキラしていてきれいだったので、逆光ですがノーマルで撮影。すると中央に謎の黒い点が。太陽?

美しい光景を前に思わずデジカメ感覚でバチバチ写真を撮りたくなりますが、チェキフィルムの1枚単価を考えると、それができないのが痛いところ。そして特に苦戦したのが、マクロ撮影。マクロ撮影モードなんてものがあるから、そこに設定さえすれば近くに寄ったものがキレイに撮れると思ったら、大間違い。その理由は、パララックス(視差)。光学式ビューファインダーを持つカメラは、ファインダーとレンズの位置関係のズレが生じてしまいます。特に近距離でのファインダー視野と実際に撮影される画面範囲のズレが大きく、ファインダーではピントが合っているのに、実際に出てくるプリントの画面はどこよ?これ?というものばかり。一応、頭の中で考えて、ここにレンズがあるのだから、もう少しこっちにずらせばバッチリ撮れるはずと何度も試みてみるも、ことごとく外れ……。そうこうしているうちに、フィルム10枚があっという間に消えてしまいました。もみじの葉っぱ1枚撮りたいだけなのに……(泣)。

マクロモードにしてもみじの葉っぱ撮影に試みたものの、視差が把握できず、失敗連続!

マクロモードにしてもみじの葉っぱ撮影に試みたものの、視差が把握できず、失敗連続!

説明書によると、「instax mini70」でマクロ撮影モードにした場合、0.3〜0.6mmまで寄れるらしい。結局、筆者は何度やってもうまく撮れず、わざわざマクロモードにしなくてもよいのでは? という微妙な距離のもみじを撮影して、マクロモードのレビューはあきらめることにした(笑)。本当は葉っぱ1枚をバッチリ撮りたかったんだけどな。

ファインダーとレンズの微妙なズレが素人ではうまく撮れない。あ〜、何枚のフィルムがムダになったことか……。

作例11(写真左)=マクロモード失敗その1、作例12(写真中)=マクロモード失敗その2、作例13(写真右)=マクロモード成功

そのリベンジではないけれど、予想外にうまく撮れたのが、次の自撮りモードで撮影したもみじの葉っぱだ。こちらは、自撮り撮影モードにして、自分の顔の前にもみじの葉っぱをかざしただけ。もじみの葉からひょっこり顔が出ているという、なんともおもしろい写真ができた。

撮った写真をその場で共有。自撮りモードで盛り上がっちゃおう!

最後に「instax mini70」のもう1つの特徴である自撮りモードを使ってみました。筆者は年齢的に自撮り世代ではないので、このモードがついたからって大喜びというわけではないけれど、やってみると案外楽しい。

自撮りをするときは、操作ボタンを「自撮り撮影」に切り替える。レンズを自分に向けて、レンズ横にあるセルフショットミラーで自分の顔をチェックし、シャッターを押すだけ。一人でやるとちょっとせつないが、友達と一緒に撮ったら、きっと盛り上がりそう。

レンズ横にあるセルフショットミラーは、自撮りをするときの顔チェックに

レンズ横にあるセルフショットミラーは、自撮りをするときの顔チェックに

スマホやデジカメでいっぱい写真は撮るけれど、撮った写真を見返すというのは案外しないもの。でも、チェキなら撮った写真をその場で見て、その場で渡せる。今やチェキはカメラというハード機能だけでなく、コミュニケーションツールというソフト機能を楽しむ人が多いのではないだろうか。それが長年愛され続ける理由なのかもしれない。

マクロモードで苦労した葉っぱの撮影が、自撮り撮影ではなぜかいい感じに

マクロモードで苦労した葉っぱの撮影が、自撮り撮影ではなぜかいい感じに仕上がりました

作例14(写真左)=自撮りモード その1、作例15(写真右)=自撮りモード その2もう1つのウリは自撮りモード&ミラーがついていること。しかし、手が短い筆者が自撮りをすると、距離がかせげないのでやたらとアップに……

まとめ

個人的に購入した初代チェキに始まり、レビュー記事で体験した「instax mini 90ネオクラシック」、スマホ用チェキプリンター「instax SHARE SP-1」など、何気にチェキとは長い付き合いの筆者。だからこそ「instax mini70」の新機能「背景きれいフラッシュ」はうれしい進化でした。

「自撮りモード」は、筆者には年齢的に(?)特別うれしい機能ではないですが、日頃スマホで自撮りを楽しんでいる世代にはうれしい機能かも。総合的に見ると、使いやすいカメラですが、なぜか筆者は今回マクロ撮影に苦戦。でも、他の人がやれば簡単に撮れるかもしれないので、そこはあまり参考にしないで欲しい。チェキというと、結婚パーティーなどの記念写真でよく使われる“遊びのカメラ”というイメージが強いですが、今回は思いの外、なかなか雰囲気のある写真が撮れた(自画自賛)。コミュニケーションツールとして若い世代が楽しむいっぽうで、アラフォー筆者は作品撮りにチェキを使ってみようかなと思い始めています。

人物・製品撮影/福井隆也


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