神をも恐れぬマナー違反が年齢関係なく蔓延る

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 京都の「宇治上神社」で配布された参拝マナーに関するメッセージがネット上で話題となり、多くの共感の声が寄せられました。確かに最近、神社に限らず、個と公を理解しない大人が増えたような気がします。

 さて、同神社が配布したA4サイズの用紙に記されたメッセージには、次のようなことが書いてありました。

「ここは神社です。皆様が心を静めてお参りをされる場所です。テーマパークでもファミリーレストランでもありません。サービス業ではないのです。『お客様は神様』の自論は通用しません。本当の神様は目の前においでです。

 当然、不敬な行動は叱ります。親御さんがお子様をしっかり御監督なさって下さい。お子様を叱るのは、親の責任ですし、親が不行き届きで、周りの人に叱っていただいたなら、逆切れではなく、『ありがとうございます』です。

 自分本位な考えの大人になられないように、正しい教育で共にお子様の健やかなる成長を見守りましょう」

 つまり「子どもに対する躾とその親の責任」を書き記した至極当たり前の内容なのですが、それを書かないと守らない人が増えているという世情の表れなのかもしれません。

 さまざまなアンケートをみても、全体の約1〜2割の親が子どもを叱ったことがほとんどないとあります。その中には「子どもに嫌われたくない」という心理も働いているようですが、結果として、社会に出て苦しむのは子どもです。叱らないことが本当に子どものためなのか、または自分のためなのか、その違いをきちんと自分の中で正しておく必要はあります。

神社公式サイトに「境内で寝ないで」と書くほど深刻

 さて、神社の話に戻りますが、近年別の意味で困った行動を取る人がいます。それは極一部ですが、篤い崇敬心を持たれるがあまり、周囲の目も憚らず自分の世界に入り込んでしまう人たち。例えば、一時間近くも神社のご神木に抱きついてみたり、中にはよく分からない奇声を発したりする人もいます。

 篤い崇敬心を持たれるのはいいですが、やはり節度と時と場所は選ばないとかえって神様に迷惑をかけてしまうこともある、と知っておいた方がいいかもしれませんね。

 これは別に極端な例ではなく、私も実際、神社へ参拝したときに同様の光景を見かけたことが複数回あります。石川県の白山比め神社のサイトには、参拝者への注意事項に次のような文言まであります。

「境内での寝そべり、座り込み、歌唱や騒ぐ行為の禁止」

「騒ぐ行為」は何となく分かりますが、「寝そべり」や「歌唱」はさすがに驚きました。やはり実際にそれらの行為をする人がいるから、注意書きが存在するわけでして、何とも残念な気がしてなりません。

 ちなみに、この注意書きは、名古屋の熱田神宮の公式ホームページ内にも掲載されていますので、特定の神社に限った話ではなさそうです。神前は神聖な場所である以上、ある程度、礼節をわきまえた行動をとるべきでしょう。

 故意ではないにせよ、子供がもし神社で不敬な行動をとってしまったならば、親の務めとして、最低限のマナーはしっかり教えていきたいものです。

著者プロフィール

一般社団法人国際教養振興協会代表理事/神社ライター

東條英利

日本人の教養力の向上と国際教養人の創出をビジョンに掲げ、を設立。「教養」に関するメディアの構築や教育事業、国際交流事業を行う。著書に『日本人の証明』『神社ツーリズム』がある。

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