「困ったときの神頼み」ならぬ猫頼み。干ばつの続くタイ東北部で、猫を雨乞いの儀式に使うはずが「動物虐待にあたる」という批判から檻に入れられたのはドラえもんのぬいぐるみ。そんなニュースがインターネットで話題となりました。

こんにちは、ドラえもんにはちょっと詳しい自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。最近では2015年10月、その前は2014年9月と、どちらの時でもタイにはドラえもんがいました。数ある猫キャラの中で、なぜドラえもんが「雨降らし」の大役を担ったのでしょう。その理由は、タイ人の日常をのぞけば答えが出てきます。

◆雨乞の儀式

2015年6月30日に次のようなニュースが流れました。

タイ 動物虐待回避のために「ドラえもん」で雨乞いの儀式を行う村 | 新華ニュース 中国ビジネス情報

http://www.xinhuaxia.jp/social/73481

タイ紙バンコク・ポストによると、タイ北部プレー県の村で伝統の雨乞いの儀式が行われた。本来であれば村民が担ぐ木のカゴに黒猫を入れ、雨の神に雨乞いしながら、猫に水をかけ続けるというものだが、これが猫の虐待につながる恐れがあるとして、今年はドラえもんのぬいぐるみを身代りにすることにした。

แพร่-ใช้ตุ๊กตาโดราเอมอนแห่ขอฝนแทนแมว ข่าวสังคม - ครอบครัวข่าว3

http://www.krobkruakao.com/%E0%B8%82%E0%B9%88%E0%B8%B2%E0%B8%A7%E0%B8%AA%E0%B8%B1%E0%B8%87%E0%B8%84%E0%B8%A1/130539/%E0%B9%81%E0%B8%9E%E0%B8%A3%E0%B9%88-%E0%B9%83%E0%B8%8A%E0%B9%89%E0%B8%95%E0%B8%B8%E0%B9%8A%E0%B8%81%E0%B8%95%E0%B8%B2%E0%B9%82%E0%B8%94%E0%B8%A3%E0%B8%B2%E0%B9%80%E0%B8%AD%E0%B8%A1%E0%B8%AD%E0%B8%99%E0%B9%81%E0%B8%AB%E0%B9%88%E0%B8%82%E0%B8%AD%E0%B8%9D%E0%B8%99%E0%B9%81%E0%B8%97%E0%B8%99%E0%B9%81%E0%B8%A1%E0%B8%A7.html



このシュールな光景にインターネットは大騒ぎとなりました。

実は、ドラえもんには「昔はよかった」という話があります。現代生活に疲れ果てたのび太くんが、理想を追い求めてタイムマシンで昔に戻るのですが、昔には昔ならではの苦労があったというエピソード。その話には干ばつに苦しむ村人を助けるために、ドラえもんがひみつ道具で雨を降らすというシーンがあって、もしかしたらタイの人たちも知っていたかもしれません。ちなみにエピソードでは「神様がお稲荷さんを遣わす予定がタヌキになってしまって」と、ドラえもんは猫扱いされていませんでした。

◆タイと猫

猫密度の高い国」という記事で書いた、タイのバンコク。約1年ぶりとなった今回の訪問でも、街なかに猫が溶け込んでいました。あまりに堂々としているので、油断していると見逃しそう。今回も、猫の姿を探してみました。

屋台の商品に混ざっている姿。



屋根の上に寝床があるようです。



「地獄寺」として紹介したワットパイロンウアにも猫がいます。地獄を覗いていました。



仏教国だけあって猫も仏の境地を知っていそうです。



生まれたての仔猫ちゃんたちの天使のような寝顔。



ニュースとなった雨乞いの儀式では、生きたメス猫を使うのが本来の習わしとなっています。ただ檻に入れて、街なかを練り歩くことから猫にとっては相当のストレス。動物虐待という指摘もあることから、代役としてドラえもんの縫いぐるみが使われた次第です。ちなみにドラえもんはオス猫。

これほどまでに人と猫の近い国ですから、批判が起きることにも納得です。

◆タイとドラえもん

そのドラえもんも、猫と同じくタイ人の心をつかんで離さない存在でした。路線バスで運賃を徴収するおばちゃんが持った筒状の小銭入れにもドラえもんの顔。自らデコレートしたようでした。お寺で見かけたドラえもんのTシャツを着た人は、スマホのケースもドラえもんだったり。これまでのタイ滞在で見つけたドラえもんはこのような感じとなっています。

2014年9月の訪問時、カシコン銀行ではドラえもんを使ったキャンペーンをやっていました。



2015年10月の訪問時でも、カシコン銀行ではドラえもんのキャンペーンをやっています。



シャープの液晶テレビの広告にも、ドラえもんのキャラクターが使われていました。タケコプターで空を自由に飛んでいました。



子どもが喜びそうなお布団。



石けんケース。



このぬいぐるみの後ろ姿はもしかして……。



もちろん、単行本も販売されています。



今年のミスタードーナツでもドラえもんのキャンペーンをやっていました。



販売されているドーナツがドラえもんでいっぱい。



ドラえもんの姿形をしたペットボトルのジュース。



乳飲料のボトルにもドラえもんのイラストが描かれていました。



お菓子のパッケージにも。



今、バンコクでは「ドラえもんコミックワールド」という企画展が郊外の大型ショッピングモールで行われています。このイベントの広告でラッピングされた路線バスが市内を走っていて、「8月」と書いてあったのでもう終わったものと思っていたら勘違い。2016年1月10日まで開催されるようです。何とか足を運びたかったのですが、アクセスもややこしく、時間も足りなかったので断念。悔いが残ります。

Comic 45th Anniversary Doraemon Comic World

http://aithailand.co.th/doraemoncomicworld/



この企画展のCMがYouTubeで見られますが、必見の内容です。

Doraemon Comic World ตอน ผ้าคลุมกาลเวลา - YouTube

Doraemon Comic World ตอน คอปเตอร์ไม้ไผ่ - YouTube

Doraemon Comic World ตอน กล้องเปลี่ยนเสื้อผ้า - YouTube

Doraemon Comic World ตอน ขนมปังช่วยจำ - YouTube

Doraemon Comic World ตอน ประตูไปไหนก็ได้ - YouTube

◆タイ人とキャラクター

スーパーマーケットのお弁当のご飯はクマの形をしていてほっこりとさせられました。そもそもタイの人は可愛い物が大好きな気がしてなりません。タイの国営郵便タイランド・ポストの公式ページも緩やかな雰囲気。そうした事情もあって、タイではドラえもんに限らず、日本発のキャラクターが活躍しています。

ミスタードーナツではキティちゃんのキャンペーンをやっていたことも。



今年のセブイレブンではリラックマのキャンペーンをしていて、どの店舗も乙女チックな外観となっていました。



バンコクにもあるロフトには「くまモングッズ」も並べてあります。



◆海外でもドラえもん

ドバイのショッピングモールで休憩中に、「空を自由に飛びたいなら、はいヘリコプター」とポケットの中にあるオイルマネーで便利な道具を出してくれる「ドバイもん」について思索を深めていた中、どこからともなく「ドラえもんのうた 」が聞こえるではありませんか。隣りにいたインド系の顔をしたお父さんが、スマホで小さな息子に聞かせています。ちょっと嬉しかったので話しかけてみると「息子はドラえもんが大好きで、この歌を聞くと寝付いてくれるんだ」と教えてくれました。

ドラえもんの人気はタイだけに留まらず、インドでもドラえもんがお菓子のパッケージに載っていたりします。インドではクリケットが人気なので「クリケットをしているドラえもん」……と思っていたら、ホッケーをしているドラえもんだと指摘をもらいました。



バングラデシュのミニスナック菓子。



マレシアでは消費者金融の広告に使われていました。



フィリピンにもあったドラえもんの単行本。



中国語の習得も兼ねて、中国でもドラえもんの本を集めています。英語版のドラえもんは中国語の訳が付いているので、2つの言語が辞書不要で勉強できる優れもの。



ドラえもんを含む日本発のキャラクターは海外でも人気を博しています。すべてのものに付加価値を与えてくれるキャラクタービジネス。日本以上にヒットするキャラクターが出てくるのは、ミッキーやスパイダーマンが活躍するアメリカくらいでしょう。

海外に出かけたら「ドラえもん」も含む、日本のキャラクターに注目してみて下さい。思わぬところで、思わぬ姿を見つけることができます。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン

自転車世界一周取材中 http://shuutak.com

Twitter @shuutak)