ビジネスマンにとって、ランチタイムは仕事の合間のひと時のオアシス。
美味しいランチで英気を養って、午後からまた頑張るぞ!と気合を入れたいところだ。
とはいえ、毎日のこととなるとお店選びも意外と面倒...。そこで、東京の主要電車山手線の5つの駅にフォーカスし、ランチに悩みがちな諸氏にお届けする、美味しいランチが食べれるお店をまとめてご紹介!


■■最初は世界一の乗降者数を誇る「新宿」からシュッパーツ進行!■■■>

ゲンキョワンガイ(グリーンカレー)。ココナッツの風味が活きた一番人気メニュー
抜群の完成度を誇る新宿屈指の人気店『バンタイ』

新宿


30軒以上のタイ料理店が点在する新宿界隈で、屈指の人気と知名度を誇る店。創業した1985年は、日本ではまだタイ料理の認知度は低かった。調味料を手に入れるにも大変な苦労をしながら、その後のタイブームの先駆けとなる味を築き上げた。

ランチメニューは20種以上。和食と比べより多種の調味料を使用するタイ料理にあって、絶妙に保たれた味の均衡がこの店の魅力だ。「レモンが一滴多いだけでバランスが変わってしまう」と、オーナー松井さん。辛味、甘味、酸味といった料理の持ち味を活かしつつ、口中で一体となる味を目指しているのだとか。




ソーセージランチ。日替わり3種のソーセージが乗るランチ。スープ、コーヒー付き
料理の巨匠が作る奥深きドイツの味『カイテル』

新宿


開業時のオーナーシェフ、ハルトムート・カイテル氏は、世界料理オリンピックでの2度に及ぶ金メダルをはじめ、40以上の世界的タイトルを獲得した料理界の巨匠。東京ヒルトンホテルや副料理長を務めた京王プラザホテルの厨房ではフレンチを手がけたが、自身の名を冠したこの店の主役に選んだのは、故郷であるドイツの料理だった。

ソーセージとポテトで知られるドイツ料理だが、実際は素材も調理法も多種多様。欧州料理の繊細さの中に芯のある力強い味わいを秘めたメニューは、意外にもライスとも相性が抜群。日替りランチにも、チキンやポークから魚料理、煮込み、グリルなど多彩な料理が登場し、足繁く通う常連も。伝統的なドイツ料理の奥深さを、改めて感じられる一軒である。




舟型をしたトルコ風ピザのクイマルピデ。日替わりランチの一例
本場の味を伝えるトルコ料理店の先駆け『ボスボラス・ハサン』

新宿


フランス料理、中華料理と並び世界三大料理のひとつに数えられるトルコ料理は、バラエティ豊かな食文化で知られる。現在世界中で愛されるピザやピラフ、ヨーグルトなどのルーツともいわれ、各国の料理に及ぼした影響は計り知れない。

そんな逸品を日本に広めた立役者がこちらの店。オーナーのハサン・ウナル氏はトルコから来日した最初のシェフで、本場そのままのトルコ料理にこだわり続けている。塩味中心のさっぱりとした料理はクセもなく、日本人の味覚に合う。

ランチメニューは日替わりが2種。ヨーグルトケバブといった人気メニューのほか、たっぷりの野菜を使いグラタン風に仕上げるムサカなども。セットにパン、サラダ、スープ、デザートにチャイまで付き満足度が高い。


次は〜、品川〜しながわ〜&田町〜たまち〜(※車掌風にお読みください)


■■■次は、西への新幹線出発駅「品川」&隣駅「田町」!■■■>

たらこ定食。「しらすの山椒煮を作りたくて考えたメニューです」と青田氏。惣菜3品付きのお得な定食
※メニューは一例
しみじみ旨いこれぞニッポンの定食『青田』

品川


喧騒の品川駅港南口も、高浜運河を越えるとめっきり様相を変える。ここ『青田』はそんな静かな運河沿いに佇む割烹料理屋だ。清廉な白地暖簾をくぐると、無駄な装飾のない凛とした設え。ここで食せるのは、魚を中心とした定食が5〜6種。鯖や鮭といった焼き魚や鯛のおかしらの煮魚、旬に合わせて替わる刺身定食、穴子の天丼などがある。

変わり種はたらこ定食。大ぶりの生たらこの切り身に、味の染みた茄子の煮びたし、しらすの山椒煮と白米党垂涎のおかずをメインに、茶碗蒸し、ひじきの煮物、漬物と小鉢群ももれなく旨い。味噌汁にいたっては旬を伝えるふきのとう入り。その苦みがまた、しみじみと嬉しいのだ。

生まれも育ちも品川という店主の青田晃氏が、運河沿いに店を構えて以来、毎日のように橋を渡り、ここに通うビジネスマンがいるというのも納得の一軒である。




桜エビとルッコラのトマトクリームスパゲティ。トマトの酸味と芳ばしい桜エビの風味、ルッコラの苦味がマッチ。季節などによりメニューは異なる。写真は一例
ピエモンテの味を大切に受け継ぐ店『RISTORANTE La Ciau』

田町


イタリア北西部に位置するピエモンテ料理の人気店。ハナミズキの街路樹を眺めながら食事が楽しめるテラスはこの時季の特等席。

人気は、前菜、パスタ、デザート、カフェのAランチ。5種盛りの前菜やデザートの盛り合わせも充実の内容だが、シェフの味をじっくり楽しむならばパスタ。なかでも1日15食限定の「グリーンアスパラと卵のラザニア 牛肉のラグーソース」は、シェフが修業時代に感銘を受けたピエモンテの味を表現。幾重にもなったラザニアの層の中にアスパラのエキスを含んだベシャメルソースをたっぷり忍ばせ、まさに初夏を感じる香りが、口福を運ぶひと皿に。

「アスパラの風味をより深く味わって頂きたくて」というシェフの愛情炸裂の一品である。




もりそば(田舎)。キリッと引き締まった田舎そばは風味豊か。辛めのつゆによく合う
ほのかな甘みと清廉な香りの蕎麦『しながわ 翁』

北品川


旧東海道の第一番目の宿場町・品川宿。その面影を今に残す北品川に『しながわ翁』はある。

現在は蕎麦指導を中心に活動を行う高橋邦弘氏を師と仰ぎ、山梨『翁』に先輩を持つは店主の郄野幸久氏。ブレンドした丸抜きを石臼で自家製粉し、二八と田舎を打つ。前者は蕎麦の香りが気持ちよく鼻に抜けるストレートな味わい。田舎は香り豊かで歯ごたえがよく、濃厚なかつおの風味がいきた出汁によく絡む。

人気は鴨ざる。焼き色も美しい葱と鴨脂、出汁と麺が一体となって、手繰る手が止まらなくなるほど。


次は〜、新橋〜しんばし〜(※車掌風にお読みください)


■■■次は、日本の鉄道開業の地「新橋」!■■■>

焼魚定食のなかでも人気の高い銀だらの西京焼き。ご飯や味噌汁はおかわり可。小鉢の内容は3日に1度のペースで変わる
魚好きを魅了するお値打ち定食を堪能『活魚料理 ととや』

新橋


店名の『ととや』が示すとおり、店主の宮崎進氏はもともと新橋で鮮魚店を営んでいたのだという。自分で魚料理を供する店を始めて40数年たつが、いまでも毎朝築地に赴き、自らの目利きによって魚を買い付ける。

そうして仕入れた旬魚を煮魚や刺身、焼魚定食としてランチで供するのだが、その内容の充実ぶりときたら界隈で類を見ないほど。昼定食には魚料理のほかにご飯と味噌汁、小鉢2品と茶碗蒸しがつき、味もボリューム感もまさに勤勉なビジネスマン向け。

塩焼きは鰤に鮭、かますやえぼ鯛、西京焼きは銀だらやさわらなどから選べるが、どれも身が厚く食べ応え十分。毎日と言わないまでも、週に数回訪れる人が多いというのもうなずける。




かま定食。 お椀、漬け物、小鉢付き
挽き肉を使った鶏割烹の親子丼『末げん』の「かま定食」

新橋


親子丼ではなく、こちらの正式な名称は「かま定食」。ご覧の通り、標準的な親子丼とは若干様相が異なっている。が、これこそが、新橋の老舗鶏割烹『末げん』の、お昼の名物丼である。

軍鶏、地養鶏、合鴨の3種類を丁寧に2度挽きし、それを割り下でさっと煮た後、卵でとじる。……と書くと、なんだか事も無げに見えるかもしれないが、ちょっとした火加減で仕上がりが大きく変わるという、さりげなく見えてその実、繊細な品。上品な味付けと半熟の卵とを纏った挽き肉は、とろとろ仕上げ。咀嚼せずとも、滑るように喉を通る優しい食感がなんとも心地よい。


ラストは〜、東京〜とうきょう〜!(※車掌風にお読みください)


■■■最終駅は、東京の玄関口「東京」で〆!■■■>

唐揚ライス。長時間煮出して作る鳥スープも滋味に富む
創業当時から続く、これぞ唐揚の完成形『京橋 都鳥』

京橋


創業は昭和26年。戦前より料亭で腕を磨いた初代は調理師法制定に尽力し叙勲を受けた人物。昭和43年の宮内省新宮殿落成式で調理番を務めた2代目を経て今は4代目の鳥料理専門店だ。

鮮度抜群の国産若鶏にこだわり続けて半世紀以上。創業当時より継ぎ足すタレが格別の焼鳥や注文を受けてから作る玉子焼も美味で、夜はこれらをアテに一杯というビジネスマンも多数。ランチは5種の焼鳥が食べられる「五本ライス」のほか、各種お重も人気だが、店一番の名物が「唐揚げライス」。若鶏本来の良さを活かすべくシンプルに調味、秘伝の衣と揚げ油でパリッと香ばしく仕上げる。

絶妙の塩加減と適度な噛み応え、溢れる肉汁。完成された旨さに、一朝一夕ではなし得ない伝統を痛感する。




カニクリームコロッケ。ライスかパン、サラダ、スープ、コーヒーが付いてランチ限定20食。スープはニンジンのポタージュなど、日によって替わる
毎日きちんと手間をかけるから20食限定『グリル・シャトー』

東京


路地裏と呼ぶにふさわしい、ビルの谷間で50年以上。多くの勤め人に愛される欧風料理店だ。創業時から手を加えていない店内はレトロだが当時としてはかなりモダン。1ドル360円時代に買い付けたヨーロッパ製シャンデリアが今も現役で灯り、城内さながらの落ち着いた風情を醸している。

夜はブイヤベースなど、ワインと楽しむ南仏料理が主体。ランチはハンバーグに代表される洋食が人気だが、なかでも鍋につきっきりで作るベシャメルソースの手間から1日に約20皿が限界というメニューが「カニクリームコロッケ」だ。サクッと軽い衣の中から甘く濃厚なクリームがとろけ出し、まろやかな酸味の自家製タルタルとこの上ないハーモニーを奏でる。




タイカレー チキン。ランチはサラダとヨーグルト付き。チキンのほか、シーフードも人気で、からさを控えめにして一から作るマイルドも用意している
ピーク時には行列もできる、奥深い辛さ『レストラン サングリア』

二重橋前


辛いが、後を引く。丸の内にランチカレーは少なからずあるが、ここのカレー、ほかでは決して出逢えない味と断言してしまおう。

30年ほど前に、南欧料理の店としてオープンしたが、経営母体はマンゴーやパパイヤなど、トロピカルフルーツの輸入を主に手掛ける企業。取引のあるタイの料理も提供すべく、ならばカレーをと試行錯誤。その結果、20種以上のスパイスを独自にブレンドし、日本人の嗜好に合わせてココナッツミルクの割合を調整。タイ産唐辛子の「ピキヌ」を利かせて、深みある辛さを追求したこの店オリジナルのタイカレーが誕生した。ご飯は香り高く、軽い食感がさらさらカレーによく合う最高級タイ米、ジャスミンライスだ。

以来、20年以上もランチで人気のタイカレーだが、夜は変わらず南欧料理を提供。自社輸入の生ハムを始めとする様々な洋食メニューに、常連は価格帯の中心が3,000円というワインを合わせて楽しんでいる。そして、締めに頼むのがやはりカレー。「ここはカレーも旨いんだ」。そう言って新入社員に微笑む先輩。確かに、この辛さには「昼も夜も」と思わせるだけの魔力が潜んでいる。