本物の不良を起用! 新作への意欲を見せた小林勇貴監督

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 関東連合の元幹部で、現在は作家の工藤明男が22日、石川県金沢市で開催された「カナザワ映画祭 2015」内上映作品『孤高の遠吠』のトークショーに出席、本物の不良が出演する同作を「リアル」だと称賛した。この日は、小林勇貴監督、コミック「闇金ウシジマくん」の原作者・真鍋昌平も登壇した。

 本作は、総勢46名の不良たちを役者として起用した問題作。先輩から原付バイクを買ったことをきっかけに、不良の世界に足を踏み入れた4人の少年たちが、拉致、リンチ、監禁、拷問が横行する言葉の通じない世界で、超暴力主義の先輩たちから理不尽な扱いを受けながら変化していく姿を映し出す。劇中で描かれる危険なエピソードは、静岡県富士宮市で起きた実際の事件がベースになっているという。

 こちらも数々の事件で世間を騒がせた関東連合の元幹部が来場するとあって、主催者側からは「写真撮影、録音、録画はご遠慮ください」と会場へ厳重注意。工藤自身、パーカのフードで顔を隠しながらトークに挑み、のっけからピリッとした空気が流れたが、「僕が表舞台に立つことはなかなかなくて。立つのは、弁護士、警察、『孤高の遠吠』の(上映)前くらいですね」とジョークを飛ばすと、会場の緊張は一気に解けた。

 自身も富士宮市出身の小林監督は、製作にあたって不良たちにインタビューを行い、そこから抽出したエピソードを脚本に織り込んだという。その内容に工藤は「僕が10代のときは関東連合が全てだったので、自分の青春を観ているような気持ちですね」とコメント。続けて「ただ、あくまで“元”なんで、そこは誤解のないように」と今は関東連合とは決別していることを強調する。

 さらに工藤は、「ただ1個だけ。コール(バイクのエンジンをリズミカルに空ぶかしすること)のキレがあまり良くない。あれなら僕の方がうまいですね」とかつてそのかいわいに生きた人間ならではの指摘で会場を笑わせながらも、「でもそれ以外は、本当にリアルでした」と称賛。そんな本作の劇場公開について小林監督は「上映するにもお金がかかる。そのお金を使うくらいなら今は新作を作りたい」と付け加えていた。(取材・文:壬生智裕)