テレサ・テンの歌が染みた「まれ」37話
希（土屋太鳳）がいよいよ、パティシエになる夢を追求するために住み慣れた能登を飛び出す決意をします。
ところがその希の旅立ちは“おもしろ”で彩られておりました。
希が今度こそ自発的に辞表を出すと、紺谷課長（板尾創路）が彼女のまわりをぐるぐるまわりだし、それは相当怒っている証拠なのだと事情通のキミ子（根岸季枝）が心配します。
「すみません、まわらずに話を」（←今日の名言、決定！）と頼む希も一緒にまわっていて、
「はやくなってる はやくなってる」と隠れて見ながら心配する徹（大泉洋）。
「博之の怒りもマックスや」とキミ子。
つごう１分ほどまわってました、板尾さんと土屋さん。
このグルグルを見ていて、他局のドラマ、土９「ドＳ刑事」（日本テレビ 土９時〜）を思い出しました。こちらでは多部未華子演じる刑事がグルグル回る遊具に乗って回転することで推理を働かせる印象的な場面が登場します。
今期のドラマはグルグル流行りなのか、ほかにも、木曜劇場「ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜」（TBS 木９時〜）の２話で北村一輝と三浦理恵子が語り合うところをカメラがグルグル回って撮っていました。
ドラマでカメラが人物のまわりをグルグルまわるのは感動シーンやラブシーンなどでよく見る手法ですし、延々会話で見せる場面だと目先を変えるためにカメラ回しちゃえとなるのもわからないではありませんが、朝ドラで、俳優自らがグルグル動くというおもしろ方向で見せていただけるとは思いもよらず、楽しませていただきました（演出は今週から、第１〜３週を担当した渡辺一貴にバトンタッチ）。
それは横浜にあるようで・・・。
一方、希が能登を出て行くことを知った一子（清水富美加）は焦りを隠せません。
そんな一子を見守るマキ（中川翔子）が酒を飲みながら聴いていた曲は、ちょうどこの５月で没後２０年、出身国台湾では記念切手も発売された伝説の歌手テレサ・テンの「時の流れに身をまかせ」（８６年）。
発売当時、大ヒットしたこの歌、あるひとと出逢ったことで人生が変わった女の気持ちを歌ったもの。そのひとに出逢ってなかったら、ふつうの暮らしをしていたかもしれないけれど、いまは好きなひとの色に染められ、そのひとしか見えないという情愛の歌。仕事（東京）か男かどちらかしか選べない派のマキにピッタリの楽曲であります。
この価値観、どうよ？ と思うものの、テレサ・テンの歌唱力に引っ張られ、うっかりこんな人生もいいなあなんて思ってしまいそうで頭がグルグル混乱する朝でした。（木俣冬）
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