『NHK連続テレビ小説 まれ ノベライズ』上/NHK出版

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桶作元治(田中泯)、文(田中裕子)夫妻のひとり息子・哲也(池内博之)が妻しおり(中村優子)と娘ふたりを連れて帰ってきて、これから家族3代仲良く暮らすのかと思いきや、一緒に暮らしたいという優しい言葉は、塩田の土地を手に入れるための演技でした。
昨日の今日であっという間に息子夫婦の陰謀が暴かれるのは、田舎の家の壁は薄いから話し声が筒抜けであるというリアルな理由付けがされています。

朝ドラ「まれ」(NHK月〜土 朝8時〜)、随所に現実的な視点が入っていて、4月22日放送第21話では、本当の家族と本当の家族ではない人たちとの関係性についても、夢を見せてくれません。
桶作家と津村家が、8年もの間、本当の家族じゃないのに食卓囲んでいい感じに過ごしてきて、希(土屋太鳳)たちも家事全般お手伝いしていることから、てっきり、疑似家族の希望を夢見させるのかと思うじゃないですか。
でもそうじゃなかったです。何もしなくても我儘言おうとも、やっぱり本当の家族には切っても切れない絆があるという現実が、文の「友美(恒松祐里)と麻美(浜辺美波)にあんな事言わしてしもたねえ。かわいそげな事してしもた」という台詞に集約されておりました。
心にもないことを母から言わされていた孫たちの気持ちに寄り添う文、なんて慈愛深いのでしょうか。
そして、津村家は桶作家から出て行くことを決意します。

そこで、今日の名言です。

「8年めのチェックアウトか」(バイ徹〈大泉洋〉)

頼りないけど名言だけはいっぱいある徹。彼こそ安易な夢をもつことに関する反面教師の代表で、「まれ」には続々と反面教師が登場してきます。
塩田潰してカフェを作る野望をもつ哲也もそうだし、芸術活動をやるために輪島に移住してきたという京極ミズハ(内田慈)も。彼女がコンサートを他力で実現しようとしているのは、芸術家としての夢を勘違いしているのでしょう。
芸術に生きる、自分のお店をはじめる、血が繋がってなくても家族、というような耳に優しい言葉の虚飾を「まれ」は日々はいでいきます。
(木俣冬)

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