“肝煎り人選”の多くがボロボロの結果に終わっている(橋下徹オフィシャルウェブサイトより)

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【朝倉秀雄の永田町炎上】

 橋下徹大阪市長の取り巻きたちによる不祥事が絶えない。3月12日には“浪速のエリカ様”こと維新の党・上西小百合衆議院議員が体調不良を理由に予算案の採決を行なう大事な本会議をすっぽかしておきながら、15日には体調が回復したと称し、男性秘書と宮津に私的旅行をしたとして槍玉に挙げられた。

 上西氏は、業を煮やした橋下氏からの議員辞職勧告を受けるも、政界への未練からか、これを拒否。4月4日の街頭演説で橋下氏から「税金をあんな議員の給料に充てることはできない」と罵倒されても、そんなものはどこ吹く風。結局、維新の党と大阪維新の会から除名処分を喰らっている。

致命的に「人を見る目」がない?

 これだけではない。3月27日には、かつて橋下氏から大阪府知事への出馬を打診されるも固辞し、その後に橋下氏の側近として大阪府市統合本部特別顧問を務めてきた古賀茂明氏が、何を血迷ったか、私的な“裏話”をテレビ朝日の『ニュースステーション』で暴露するという常軌を逸した行動に出ている。

 古賀は経産官僚時代、「キャリア」としてちやほやされて我が世の春を謳歌し、国民の税金で飯を食わせてもらいながら、恩を仇で返すかのように官僚批判を繰り返し、事務次官にまで盾を突いて結局役所にいられなくなった“不良官僚”の典型だが、上西氏にせよ古賀氏にせよ、そんな人間ばかりを取り巻きにしていたところに橋下氏の「人を見る目のなさ」が表れている。

取り巻きの相次ぐ不祥事に国民の呆れ声

 毎日新聞の『みんなの広場』という読者投稿欄には、興味深い主張が掲載されている。投稿者は奈良県在住の地方公務員の方だ。「維新の人材活用、問題では」という題のあとに続く内容を抜粋しよう。

「予算案を採決する衆院本会議を体調不良を理由に欠席しながら前夜に飲食店で会食していたことが報じられた上西小百合議員について、維新の党と大坂維新の会は除籍(除名)としました。報道内容が事実であれば、この対応もやむを得ないと思います。しかし、これは上西議員だけの問題ではないと思います。維新の柱である橋下徹氏が支持した前大阪府教育長の中原徹氏のパワハラ問題や、橋下氏の肝煎りで導入した『民間人校長』についても初年度採用の半数以上がセクハラなどで任期途中で辞めており、人材活用がうまくいっていないことを示しているのではないでしょうか。……」

 投稿はさらに続くが、筆者もこの主張に同感だ。

公募区長・校長も「不祥事まみれ」で大失敗

 公職に就いたことがなく、一介の弁護士出身である橋下氏には「官は悪」で「民間は善」といったステレオタイプの認識が強いのだろう。

 だからか、優秀な大阪府や大阪市の職員を嫌い、自分の息のかかった民間人を区長や校長、教育長などに抜擢したがるが、民間人はどうしても、利益や実績を上げることを至上の命題として掲げがちである。そして、それが私利私欲を求めての狂奔につながることもある。

 民間人というのは、常に国益や公益を考えて行動する公務員に比べ、どうしても遵法精神が低くなりがちなことは否めないだろう(もちろん、すべての民間人がそうだと言っているわけではない)。

 資質に問題のある民間人を「区長」「校長」「教育長」などの公職に登用した結果が、あの不祥事のオンパレードであった。 『週刊新潮』4月16日号は、これまでに何らかの不始末をしでかした“橋下氏肝煎り”の公募区長、校長、教育長、国会議員、府・市議藍議員などの一覧表を掲載しているが、なんとその数は、合計26名。公募区長らが10名、議員関係が16名にも及ぶ。

 まず公募区長では、元東成区長の森伸人氏が女性職員に「今から昼下がりの情事に行く」と大声で喚くなどのセクハラ行為で更迭されたが、これなどは、むしろバカの部類に属する。

 校長では、元三先小学校の吉田敬氏が保護者の臀部を触ったり、「僕と会えなかったら寂しい?」「君の気持ちを聞かせてよ」などの不適切なメールを送ったりするなどして同じく更迭されているが、これは一種の「病気」としか思えない。

 さらに、元枚方高校の校長・京田伸吾氏に至っては、大阪市内のスーパーで和菓子など14点、2547円相当を万引きして懲戒免職になっている。なぜ泥棒を働くような人物を教育者にしたのか……前出の2人もそうだが、採用時にその資質や人間性を見抜けなかったのは明らかに失態である。

 毎日新聞の投書にも登場した元大阪府教育長の中原徹氏は、同僚の府教育委員に対し「誰のおかげで委員でいられるのか」などとパワハラ発言をしたとして今年(2015年)の3月に辞職しているが、これなどはまだ可愛いほうだろう。

“クズ人間”ばかりの維新公認候補!?

 維新の党や大阪維新の会の公認候補で、秘書や運動員が逮捕された議員は実に6名もいる。

 まず、2012(平成24)年の総選挙では足立康史氏、上西小百合氏、桜内文城氏の3名の衆議院議員の運動員が公職選挙法違反で逮捕。

 さらに昨年(2014年)末の総選挙では升田世喜夫衆議院議員の運動員が公職選挙法違反で逮捕されているし、京都1区から立候補した石関貴史氏の元秘書もやはり公職選挙法違反で逮捕されているが、石関氏はめでたく(?)落選している。

 地方議員となると、さらに質が悪い。

 政務活動費や不正使用などは当たり前。元堺市議の西井勝という男は、飲酒運転をした挙句にバイクと接触事故を起こし、そのまま逃走して逮捕されている。

 笑えるのは、大阪議の山本景氏が昨年8月、地元の女子中学生を恫喝していた事実が発覚した騒動だ。この議員は、中学生と同レベルの男だったのかもしれない。

 橋下氏は、自分には寛容で他人には厳しい“身勝手男”の代表だ。閣僚が不祥事を起こすと、まるで鬼の首を取ったように「総理の任命責任が……」云々と騒ぎ立てるが、今回の件でも同様の態度を取らねば筋が通らないであろう。

 上西氏を責めるより、ろくでもない人間ばかりを公職に抜擢し、公認候補として擁立した自分の責任を自覚すべきだ。ポピュリズムの申し子に猛省を促したい。

朝倉秀雄(あさくらひでお)ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中