企業倫理について語る梅田教授(撮影:徳永裕介)

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ライブドア事件を機に、企業倫理や社会的責任を問う声が高まっている。いま、企業に求められている姿勢とは何か。麗澤大学企業倫理研究センター副センター長で、ライブドアのコンプライアンス強化委員会のアドバイザーを兼ねる梅田徹教授に3日、企業倫理や今回の事件の教訓などについて聞いた。

 まず、企業のコンプライアンス(法令順守)とは、何を意味するのか。梅田教授によると、狭義には法律に違反しないで事業を営んでいくことを指す。「もう少し積極的な意味では、企業が倫理的なルールを設けて、それを守ること。法令違反を犯さないような仕組みのこともいう場合もある」と説明する。一般的には、企業倫理や企業の社会的責任も同じ意味で使われている。だが、企業の社会的責任には本来、社会貢献や良質な製品を提供することなど、かなり広い意味があり、「『社会に対して、わが社は何をできるのか』を考えさせる一つのキーワード」と強調した。

 では、企業に求められている姿勢とは。梅田教授はインティグリティー(誠実さ)を挙げ、「情報化の時代だからこそ、誠実さが非常に大事」と語る。誠実さとは、「社外で言っていることと、社内で行っていることが合致していること」。「欠陥商品を作ってしまった場合、正直に社会に公表せずに隠すのは、消費者保護の観点から、不誠実な行為になる。中身や実態を正確に外に伝えることを保証するのが、誠実さ」とし、アカウンタビリティー(説明責任)とも通じる概念だと述べた。

 ライブドア事件の教訓は何か。梅田教授は「急成長した企業といえども、ある段階で社会的責任を自覚しなければならない」と挙げた。「(地域社会、消費者、従業員など)いろいろなステークホルダーを尊重しなければいけない時代なのに、ライブドアは株主の利益しか見ていなかった」と分析。「結果的には株価が10分の1になってしまって、株主に一番打撃を与えてしまったのは皮肉だ」と振り返った。

 また、ライブドアには企業としてのミッション(使命・任務)がなかったと指摘。「明確なミッションがあれば、滅茶苦茶に買収するようなことはなかったと思う。何のために事業を展開しているのかというミッションがあれば、既存の事業に関係のないつぶれかけた会社を買収することはなかっただろう」と語った。(つづく)

■梅田 徹(うめだ・とおる)
1957年、岐阜県生まれ。2000年4月より麗澤大学外国語学部教授。専門は国際法、企業倫理。06年2月から、ライブドアのコンプライアンス強化委員会のアドバイザーを務めている。

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