企業倫理などについて説明する麗澤大の梅田教授(撮影:徳永裕介)

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ライブドア事件など企業の不祥事があるたびに、よく耳にする「企業倫理」や「企業の社会的責任」。企業倫理に詳しい麗澤大学の梅田徹教授は、単に法律を守るといった意味にとどまらず、「社会に対して、わが社は何をできるのか」といったことを考えさせるキーワードだと話す。


──コンプライアンス(法令順守)とは、何か。

 もともとは、法律を守るということ。企業社会では、法律に違反しないで事業を運営していくこと。これが一番最低の意味だ。もっと積極的には、倫理的なルールを設けて、それを守っていくという意味もある。また、法令違反を犯さないような仕組みのことを、コンプライアンスという場合もいる。


──企業倫理や企業の社会的責任とは、何を指すのか。

 本来、企業倫理は社会貢献も含めて指す言葉。しかし、企業が不祥事を起こした時に「企業倫理を重視していなかった」といったように使われることが多い。そういう場合は、コンプライアンスとほぼ同じ意味で使われている。「社会に迷惑をかけない」というレベルにとどまっている。企業の社会的責任もこの意味で使われることが多い。

 本来、企業の社会的責任とは、社会貢献とか、企業本来の働きを十分に生かして良質な商品を提供することなど、かなり広い意味を持っている。「社会に対して、わが社は何をできるのか」ということを考えさせるキーワードだ。


──インテグリティー(誠実さ)とは何か。

 誠実さ、正直であることといった意味。外で言っていることと、中でやっていることが合致していることを指す。有価証券報告書の虚偽記載や耐震偽装は、うそをついたり、隠して消費者をだましており、すべて不誠実ということになる。情報化の時代だからこそ、誠実さは非常に大事。中身、実態を正確に伝えることを保証するのが誠実さだ。アカウンタビリティー(説明責任)にも関係してくる。

 
──儲け一辺倒の考え方が、一部で根強いようだが。

 アメリカのエンロンでも、ライブドアでも、事件の温床はそこにある。儲けることが最大の価値になってしまうと、手段を選ばなくなってくる。


──では、実際の経営の中で、企業倫理などはどういった役割を果たすのか。

 利益至上主義をいさめる役割だ。競争の圧力のもと、法令違反を犯してでも儲けなければならないというプレッシャーが経営者にかかっているとすると、いろいろな問題が出てくる。それを抑える考え方ととらえればよいと思う。


──企業にはどのような姿勢が求められるか。

 自己利益の追求だけでなく、社会的要請に応えられるような姿勢だろう。(地域社会、消費者、従業員など)いろいろないろいろなステークホルダーから信頼されるような経営が求められる。


──ライブドア事件は、何を教訓とすればよいか。

 急成長した企業といえども、ある段階では社会的責任も自覚にしなければいけなかった。彼らは時価総額一辺倒で、株主利益の向上のために突っ走っていった。しかし、結果的には株価が10分の1になってしまって、株主に一番打撃を与えたことは皮肉だ。

 それと、ミッション(使命・任務)がなかったのではないか。「ライブドアは、何のために事業展開しているのか」という明確なミッションを持っていれば、滅茶苦茶に買収したり、既存の事業に関係がないつぶれかけたようなところを買収するようなことはなかったかもしれない。

 いろいろなステークホルダーを尊重しなければいけない時代なのに、株主の利益しか見えていなかった。【了】


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