ソフトバンク・松坂大輔【写真:編集部】

9年ぶりに日本復帰の松坂、春季キャンプの成果は?

 MLBのメッツから日本球界に復帰し、ソフトバンク入りした松坂大輔投手(34)。9年ぶりとなった日本でのキャンプでは、連日多くの報道陣に囲まれ、そして、多くのファンからの声援を浴びた。

 その注目度は、多くの一流選手を抱えるソフトバンクの中でも群を抜いていた。「平成の怪物」と呼ばれ、横浜高校時代から、日本球界を沸かせ続けてきた男。復活へ向けて、取り組んできた宮崎キャンプは、彼にとって実り多きものになったのだろうか。松坂自身のコメントを交え、26日間を振り返ってみたい。

 キャンプインとなった2月1日、キャッチボールを行う松坂のフォームは、剛腕でならした彼のフォームではなかった。踏み込み足が大きく開き、体も開く。肘は下がり、投げたボールはシュート回転して、相手のグラブへと収まった。

 メジャーの固いマウンドへの対応、そして、メスを入れた右肘をかばうがために、投球フォームは大きく崩れていた。この修正、また、日本のマウンドに再適応させるためのフォームの構築が宮崎キャンプで松坂が取り組む最大のテーマだった。

 日米通算164勝という輝かしい実績を持つ右腕には、自らの経験に基づく確かな順序があった。決して、やみくもに投げ込むのでなく、じっくりと段階を踏んでいった。

課題山積のスタートも日に日にステップアップ、発するコメントも変化

 第1クールはブルペンでの投球練習を行わず、まずは、「まだお見せできるもの(投球)ではないので。きれいな形ではない。そういうのは、あまり見られたくないので」と、非公開にしたブルペンの傾斜を使って、シャドーピッチング。続いて、キャッチャーを立たせたままの立ち投げ、遠投と、ピッチング以外の所でフォーム固めをスタートさせた。

 特筆すべきはキャッチボールに時間をかけたこと。ほかの投手がキャッチボールを終えた後も、真っすぐ、カーブ、スライダーなど変化球なども交えて、じっくりとボールを投げる姿が印象的だった。

 ブルペンでの本格的な投球練習は、第2クール初日の5日からスタートさせた。カーブを中心とした変化球も交えて、約35球。「肘を上げる中で無駄な力の入り方になっている。無理のないように腕が出ていくような形、そのフォーム固め。長年の悪い癖が抜けない」と、チェックポイントを伝えた佐藤義則投手コーチから指導を受ける場面も目に付いた。

 8日に行った2度目の投球練習では34球。「フォームのバラツキはありますけど、前回より良かった」。徐々に、肘の位置が上がり、躍動感あるフォームへの変化が感じられ始めた。

 第3クールに入るとペースも上がった。10日の3度目のブルペンでは143球を投げ、14日には初めての打者との対戦となるフリー打撃の打撃投手を務めた。牧原、高田を相手に48球を投げ、安打性は7本で「まだこの時期なので全部の球種でストライクが取れるか(を確認した)。徐々にいい形になってきている」と語った。

充実の表情で総括、「満点」届かずも、「十分でした」

 20日には2度目の打撃投手として登板。助っ人のカニザレスと、かつて「平成の名勝負」と呼ばれる幾多の対戦で球界を盛り上げてきた松中信彦と対峙した。松中は22球中安打性4本、カニザレスは23球中安打性0本と完封し「前回よりも確実に良かった。ストレートと分かっていて差し込まれたり、振り遅れたりというのは悪くない」。

 打撃投手を終えた後も、ブルペンで捕手を座らせ28球。その後は佐藤投手コーチのマンツーマン指導の下、捕手を立たせて、さらに104球を投げ込み、「考えていることと、やっていることの方向が合ってきた。試合でも投げられると思う。順調です」とした。

 ここから調整ペースには若干の狂いが生じた。右手の親指と薬指に出来たマメの影響だった。マメがつぶれることを危惧して結局、26日までブルペンでの投球練習を回避せざるを得なくなった。実に6日間、投球練習を行わないままキャンプ打ち上げの時を迎えた。

 9年ぶりの日本でのキャンプを終えた松坂は「満点ということはないですけど、自分のやりたいことにプラスαがあればよかったですけど、マメができるまでにやりたいことはできた。十分でした」と充実の表情でキャンプを総括した。現状、松坂自身の中では順調にステップを踏んでいると言える。

 実戦初登板は3月4日の阪神戦(甲子園)になるという。横浜高校時代に沸かせた聖地のマウンドで再スタートを切るというのも、何か因縁めいたものが感じられる。ここから開幕(3月27日)までの1か月間も、フォームの微調整は続く。調整登板の場は4試合。いかなる形に仕上げて開幕の時を迎えるのか。松坂大輔の試行錯誤は、まだ続く。