「きょうは会社休みます」1巻 藤村真理/集英社 

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秋の新ドラマも続々開始され、内容や視聴率、出演者の各方面から評価もはじまっております。
その中で、注目したいのは、水曜10時、同時刻に放送されている女子向けドラマーー日本テレビの「きょうは会社休みます。」(綾瀬はるか主演)とフジテレビの「ファーストクラス」(沢尻エリカ主演)です。

「きょうは〜」は、彼氏いない暦30年のこじらせ女子が、年下のイケメン彼氏(福士蒼汰)ができてからの喜びと悩みが入り交じった日々が描かれます。
「ファースト〜」は、下町の衣料材料品店店員→ファッション誌編集者→ファッションブランドのデザイナー(←今ここ)と仕事を変わりながら成り上がっていく姿が描かれます。

第1話の視聴率は、「きょうは会社休みます。」が14.3%、「ファーストクラス」8.8%と大きく差がついてしまいました(いずれも関東地区、ビデオリサーチ調べ)。「ファーストクラス」は今年の4月に深夜枠で放送された第1シーズン(そのときは、・ありの「ファースト・クラス」でした)が好評で、期待されてのゴールデンタイム進出でもあったのですが。

この2作、いったい何が違うか、考えてみましょう。
視聴率に左右されず、どっちを見ようかな、と迷っている方も、ご参考までにどうぞ。

その1 第1話のストーリー比較

「きょうは会社休みます。」は、集英社「Cocohana」で藤村真理が連載中の少女漫画が原作。
主人公は地味なOL・青石花笑(綾瀬はるか)。30歳にして、彼氏いない暦同じ年、つまり処女。それが重荷で、思いあまって、人には彼氏がいるフリをしてみたりもする。
30歳の誕生日もひとりで迎えることになりそうだった時、バイトの大学生・田之倉(福士蒼汰)と飲み会の流れで、朝まで一緒にいて、ついに重荷を下ろす。これで、気楽になったと思いきや・・・なんだか思い悩んでしまい、翌日会社を休んでしまう。こんなことになってはもう会社にいられないと困惑する花笑に田之倉は、自分は本気であると告げる。
さらに、もうひとり、同じビルの会社のCEO朝尾(玉木宏)も、何かと花笑に接近してきて・・・という、地味なこじらせ女子にとって夢のような展開です。

「ファーストクラス」は、フジテレビのオリジナル企画。
主人公・吉成ちなみは、ファッション雑誌「ファーストクラス」の編集長だったが辞めて、デザイナーになる。カリスマブランド会社に入ったが、そこは、華やかな見た目とは裏腹に、資金難で青息吐息だった。
その上、関わっている人々は皆、野心を心のうちに隠して、他人を蹴落として這い上がっていこうとしている。生き馬の眼を抜くような世界で、ちなみも、自分の仕事を全うするためには、どんな手を使っても生き残っていこうとする。

ちなみも元々は貧乏でお人好しな女子。それが、トントン拍子に雑誌の編集長やデザイナーになっていくという、これまた夢のような展開です。
「きょうは会社〜」も「ファースト〜」も、どちらもドリームストーリーという点では同じですが、ファッション業界、ハデ過ぎて、ついていき辛いのでしょうか。

その2 地味VS派手 主人公のキャラの比較

「きょうは会社〜」のヒロイン・花笑は、地味で眼鏡キャラで、30年も彼氏がいなくて、ファッションも質素。

「ファースト」のヒロイン・ちなみは、周囲もうらやむ顔面偏差値80%の美女という設定。第1シーズンで、彼氏はかれこれ3、4年いないという設定でしたが、カメラマンアシスタントの男子といい感じになります。が、第2シーズンでは、また独り身に戻っているようです。デザイナーなので、衣裳はハデめ。

ちなみは、「虐げられるシンデレラ」キャラではありますが、元々は持ってる女。
対して、花笑はとことん地味。ただ、眼鏡をとったらちょっとかわいいというパターン。花笑のほうがハンデの大きい分、親近感が沸くのかも。
花笑役の綾瀬はるか自体は美人さんですが、同じ枠のヒット作、ダメな干物女の恋愛を描いた「ホタルノヒカリ」もハマっていましたし、地味なダメキャラには定評あります。
沢尻さんは、闘病もの「1リットルのナミダ」のように苦しむヒロインだと可愛気を感じますが、強気の美人役をやると、キレイ過ぎて気圧されちゃうんですよね。

その3  スローVS超早 テンポの比較

「きょうは会社〜」はゆったり。花笑ののんびりしたモノローグで、ストーリーが進行します。
花笑は基本自虐的なことを考えていて、会社の同僚や上司についても、若干、皮肉なことを心の中では思っていますが、かわいいもの。全体的にはふんわり。
起こっている出来事も、会社の仕事(それもお茶淹れたり、コピー機直したりとか)、居酒屋飲み会、家で犬と戯れる、とかそんな感じ。
年下バイトくんとのお誕生日デートも、飲み、ゲーセン、バッティングセンター、ラブホという流れが丁寧に描かれていました。

一方、「ファーストクラス」はスリリング。華やかなファッションショー、ファッションショーの裏側、デザイン会社の様子、ライバル会社の様子、新デザインを巡る攻防と話がどんどん進行し、裏切りや逆転がばんばん行われ、その都度、登場人物が心の声を早口でテロップ入りでまくしたてます。第1シーズンでは、この表面とはまったく違う猛々しい裏の声が人気だったのです。

「ファーストクラス」のほうがスタイルとしては新しいですが、情報量が多すぎて、追いかけるのにエネルギーが必要です。水曜日って週の半ばですから、疲れが出がちなんですよね。

その4   善人VS悪人 脇役の比較

「きょうは会社休みます。」では、上司が花笑にほかの女子社員の誕生日プレゼントを買いにいかせたにもかかわらず、花笑の誕生日を忘れていて、あたふたするというほのぼのしたエピソードがありました。
積極的に次々と男に向かっていく同僚女子も、頑張り屋なだけで、それほど害はありません。

「ファーストクラス」は、猛女だらけ(夏木マリ、余貴美子、ともさかりえ、小島聖、シシド・カフカ・・・と迫力!)とにかくみんな嘘つき。心の中では相手のことをバカにしています。
リベンジポルノしたり、デザインをシュレッダーにかけたり、卑怯な手で相手を蹴落としていく人たちばかり。そういう罠をどう回避していくかが面白さなのです。

「ファーストクラス」のほうが、いるいる、こういう人! とリアルだし、そういう人がギャフンと言う瞬間が楽しいです。「きょうは会社〜」のほうが、日本昔話か、というようなファンタジーな感じです。

その5  恋VS仕事 主人公のアイデンティティー比較

「きょうは仕事休みます。」の花笑は、彼氏いない暦30年がコンプレックスだったので、それをクリアしてからは、恋をどうやって続けていくかが課題。
その上、ふたりのイケメンに好かれるという黄金パターンも付加されています。

「ファーストクラス」は、仕事のためならなんだってする、とちなみは宣言しています。彼女を生物学的にも性的に興味をもつ男も登場しますが、ちなみは眼中になく、1話の段階では、彼女にラブ要素が感じられません。それよりも、かなり女優陣に力入ってます。
これはもう、どっちとは言えません。仕事か恋か、永遠の命題であります。

余談ですが、「ファースト〜」には「昼顔〜平日午後3時の恋人たち」の利佳子の元彼役だった淵上泰史が出ていて、またもイケメン枠ではないようですが、応援したいです。

その6  休むVS休まない 1話時点での結論 

以上、違いを並べて思いましたのは、好まれるのは、冴えない女子が、特に自分からは頑張らずに、先方から働きかけてもらっていい目に遭う、という物語。
「きょうは仕事〜」の花笑は、過去、男性に誘われたとき、断ってしまったことを後悔し、田之倉の誘いにがんばって応じたという最低限の積極性は発揮しているとはいえ、きっかけを作ってくれるのは男子です。
「ファーストクラス」の第1シーズン、最初の頃のちなみは貧乏な虐げられるシンデレラキャラで、困ったときには、カメラマンアシスタントくんに励まされ、助けてもらっていました。こういうところがあってこそ、後に覚醒してブラックちなみになっていく快感につながっていったのかなあと。今回、そこがないのが寂しいところかも。

でもですね、小姑トークさせていただきますと、「きょうは会社〜」の田之倉って、彼女と別れたばっかりで、電話で「もう終わった」と冷たくあしらうその舌の根もかわかないうちに、花笑と一回飲んでそのままホテルにいって「本気」なんて言う男です。そんな男、花笑のことも前カノと同じ扱いしますぜ。そんな恋愛描写に甘んじていていいのか、女たちよ! と思いますが、それでも、美人女優が一定ラインを超えた設定の役をやっているよりも、楽しいのかもしれません。自分に関係なさ過ぎるものは受け入れがたいのかな。

もう一点、「ファースト〜」の脚本が、第1シーズン渡辺千穂から、男性の及川博則に変わっていることもテイストの違いに関係するかなと思いましたが、「きょうは会社〜」も金子茂樹という男性なんです。金子のほうはドラマ版「ハチミツとクローバー」や月9のラブストーリーなどもやっている分、女子のキュンのツボを知っていると考えられます。
及川は、オフ台詞やツッコミ台詞が得意なのかなあという印象です。
とはいえ、まだ第1回の時点、今後の展開で、どうなっていくかわかりません。

今のところ、簡単に言ってしまうと、楽したい人は、「きょうは会社休みます。」頑張りたい人は「ファーストクラス」。
要するに、タイトル通り、休みたいひとは日本テレビ、なにがなんでも休まないひとは、フジテレビってことで。きょうはどっちを見ますか?(木俣冬)